モーツァルトの名前の下に2種類,そして匿名の下に1種類の「サルティ」変奏曲がある。主題はすべてジュゼッペ・サルティの"Come un'agnello"「子羊のごとく」に基づいている。
モーツァルトの自筆譜があり(もっともすべてはそろってはいないフラグメント)、クルト・フォン・フィッシャーにより新全集のクラヴィーアのための変奏曲の巻(IX/26)の付録にて提示された(1961年)(ヘンレ版変奏曲集の付録にも掲載されている)。
一連の変奏が全部そろったものであるが、モーツァルトの死後に発表された1803年ヴィーンのアルタリアによる筆写譜で伝承されている。変奏が全部そろったこの作品の方が事実上有名となっているが、曲は旧全集(シリーズXXI)に含まれているのみである(ヘンレ版変奏曲集の本文にも掲載されている)。
ケッヒェル目録第3版(1937)を校訂したアルフレート・アインシュタインによれば:全部そろった作品は主部に記入され、一方、モーツァルトのフラグメントはただ自筆譜の欄に記載あるのみである。ケッヒェル第6版(1964)では結局その逆となり、混乱を来した。つまり主部記載にフラグメントが現れ、一方全部そろった作品は注釈を参照するように指示された(1958年にクルト・フォン・フィッシャーが発表した真正に議論の余地あるという根拠による)。パウル・バドゥラ=スコダとの論争の末クルト・フォン・フィッシャーは以下の結論をひきだした:
「議論された作品[8つの変奏曲]の作者問題は今なお徹底的には解明されないままにとどまっている。しかし今日までのよく知られた情報のすべては、最後にマリウス・フロトホイスのザルツブルク・コロキウムの新たに報告された論拠とともに、少なくも原則として定着した提案であると確認されたように見える。すなわちイ長調の[8つの]変奏曲についてはモーツァルト/サルティによる共同作品の方法に関わる問題であると見なしてよい。このことはしかし、私は強調するが、両作曲家の協同を意味するのではなく、むしろサルティ風のパスティッチョであり、モーツァルトの即興による追記、改訂そして補足として価値がある。このような企てによってサルティはモーツァルトの創造力に敬意を抱いたのだろうか? あるいは、それは単純明快に、別人のペンでもって着飾られたものにすぎなかったのだろうか?」
結局サルティ[の主題による8つの]変奏曲 KV 460 (454a) の真正は相変わらず、疑わしい印を付けておかねばならない。
クルト・フォン・フィッシャーは彼の上記寄与において、サルティの同一の主題による匿名のト長調変奏曲があることを示し、イ長調変奏曲との関連で注目に値する部分が二、三あることを指摘した。このト長調変奏曲はKV460 (454a)への付録として新全集X/29/2に収録された。この版の手本はアルターリア印刷版番号286(ヴィーン1787)である。
(新モーツァルト全集 第10篇「補遺」・第29作品群「真正が疑わしい作品」・第2巻からヴォルフガング・プラート、ヴォルフガング・レームによる序文から)
CH1: Pianoforte
制作時の音源:Roland SC-88VL
使用楽譜 NMA: IX/26 Anh.3
市販のCD等でご鑑賞下さい。
CH1: Pianoforte
制作時の音源:Roland SC-88VL
使用楽譜 NMA: X/29/2 p.220