この2楽章のクラヴィーア+ヴァイオリン・ソナタはケッヒェル目録のどの版にも載っておらず、したがって従来のいかなるモーツァルト文献においてもまったく知られていない。それは唯一の原典である、ロンドンの音楽商J. Blandのスコア版で、"A favorite SONATA for the Piano Forte or Harpsichord, with an accompaniment for a Violin. Composed by W. A. Mozart."により伝承されている。この出版物には日付がないが、1780年より早くに設定することはほとんどできない。
その様式上このソナタは、大ヨーロッパ旅行の終わりの1765/66年頃、従ってクラヴィーア・ヴァイオリン・ソナタ作品4(K.26-31)のほぼ近くに成立したに違いないということから、一時は真正さを勝ち得ていた。しかしそれなら、印刷による出版がなぜそんなに後になってなされたのかを説明することが難しい。ソナタ作品1から4までのレーオポルト・モーツァルトによる出版指示以外に、この種の単独作品が存在することは確かに不可能ではない。しかし、あり得る、といえるだけで存在そのものは実証されていない。この年代の家族書簡も合致する裏付けの結論を認めてはくれないし、レーオポルト・モーツァルトが作成した息子の1768年までの初期作品カタログも印刷版についてしか言及していないので参考にならない。
(新モーツァルト全集 第10篇「補遺」・第29作品群「真正が疑わしい作品」・第2巻からヴォルフガング・プラート、ヴォルフガング・レームによる序文から)
第1楽章 Allegro
第2楽章 RONDO Graziosoパート設定 CH1: Violono、CH2: Pianoforte
使用楽譜 NMA: X/29/2 p.177
制作時の音源:Roland SC-88VL