減額医療費支払え 大阪高裁 人命軽視に厳しい判決
民医連 中央病院が勝訴 不当減点復活訴訟

京都民報1997年05月18日



 病院が請求した保険診療費の支払いを、厚生省通達を盾にカットしたのは不当だと、京都民医連中央病院(大野研而院長、中京区西ノ京春日町)が、社会保険診療報酬支払基金と京都市長を相手取り、不当に減額された医療費の支払いを求めていた医療費の支払いを求めていた裁判の控訴審判決が9日大阪高裁であり、減額分の107万3710円のうち、100万810円の復活を認める病院側全面勝利となりました。95年2月の京都地裁判決を両者が不服として控訴していたもの。
 減額の対象になった患者は、88年7月に中央病院に急性リンパ性白血病で入院していた左京区の生活保護世帯の男性(当時42歳)。急性腎不全と肝不全を併発して危篤状態になったため、同病院は血液透析や血しょう交換などの治療をおこない、救命に成功しました。同病院は保険診療費として641万円を請求しましたが、同基金は13回の人工透析のうち5回、3回の血しょう交換のうち2回について、「過剰診療で認められない」と107万3710円の支払いを拒否。このため、90年3月、京都地裁に提訴したものです。
 中心的争点は、▽診療が過剰だったのか▽厚生省通達で劇症肝炎にのみ認められている血しょう交換を、この患者にたいしておこなったことが妥当だったかどうか、などです。
 判決では、厳密に言えば劇症肝炎と言えないケースであっても、今回のように敗血症ショックにより肝不全に陥った場合には、保険点数の対象になると判断。京都地裁が認めていた人工透析への減額分の復活に加え、血しょう交換についても復活させる、という全面的な勝利となりました。
 民医連中央病院の大野院長は「診療に理解を示し、不当性を確認した意味は大きい。高額医療費の審査では一律的にカットしているのが常識と言われていたが、減点する側に減点の理由や必要な情報の請求を義務付けたことは画期的だ」と話しています。
 13日には、大野病院長と渡辺馨弁護士ら8人が京都市長にたいし、高裁判決を真剣に受け止め、最高裁に上告しないよう求める要請書を提出。申し入れには松井珍男子民生局長が対応し「市長にも報告し、国などの関係機関とも協議したい」と答えました。

 医療行政改善へ大きな力に

 弁護団の川中宏弁護士の話 厚生省は通達で「劇症肝炎」以外の肝臓疾患にたいし、血しょう交換療法を認めてこなかった。高裁判決はこの療法が多臓器不全の肝障害にも有用であると認め、減点を違法とした。厚生省、支払基金、京都市長が一片の通達で「救命」を軽視してきたことをきびしく批判したこの判決は画期的であり、医療行政の改善に及ぼす影響ははかりしれない。

       保険診療費不当減額訴訟 中央病院の勝利確定
        京都市が上告断念

赤旗1997年05月27日



 京都市の京都民医連中央病院が桝本頼兼京都市長を相手取り、不当に減額された保険診療費の支払いを求めて提訴していた裁判で26日、桝本市長は、支払い拒否処分を取り消すよう命じた大阪高裁控訴審判決(9日)にたいし、最高裁への上告を断念しました。これによって病院側の全面勝利が確定しました。
 中央病院は89年7月、急性リンパ白血病で入院していた男性にたいし、血しょう交換治療法などで救命しました。そのさい、市側が治療を「過剰」として保険診療費のうち約114万円を認めず、病院側がこれを不当として提訴していたもの。
 1審判決は、病院側の主張のうち人工透析など一部だけを認定。控訴審判決では「(市側が)保険の対象と認めないのは、規則の運用としてあまりに機械的とし、支払い減額分の復活を命じ、病院側が全面勝訴しました。
 京都民医連の「同訴訟対策委員会」は、市長が上告断念した26日に声明を発表。全面勝利が「『医療費抑制』をかかげて推進されてきた、いわゆる経済審査にたいして痛撃を与える、まさに画期的なもの」として、二度と「経済審査」を横行させないために医療関係者、患者、市民との共同を強めることを訴えました。



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