6月に改正された労働者派遣法は、育児休業・介護休業の代替に派遣労働の導入を認めることをはじめ、対象業務の拡大、派遣先事業主の責任の強化などを内容として、6ヵ月以内に施行されることが予定されています。
私は、1985年の法制定前から、労働者派遣の問題が日本の労働関係に大きな影響を及ぼすことを予感し、勉強を重ねてきました。無権利・低劣な労働条件が前提となっていた派遣労働者の公認・拡大は、派遣労働者だけの問題ではなく、いずれ「正規社員」にも及び、労働者全体の雇用を不安定なものにするであろうと警告してきました。法施行後、10年を経過して、残念ながら、私の予想は的中してしまいました。
パートタイマー、契約社員、派遣労働者など「非正規雇用」労働者の拡大は、性別差別の面を強くもって、女性を中心に拡大してきました。しかし、同じ職場で、ほぼ同じ労働に従事しているのに、賃金をはじめとする待遇が、数分の1にしかならない「非正規雇用」は、差別雇用以外の何物でもありません。
ヨーロッパの労働者派遣法と比較すると、派遣労働者が派遣先従業員と同等の待遇が保障されています。フランスで等では、法律で同等待遇が明記されています。日本のように派遣労働者の労働条件が派遣先従業員よりも低いことを派遣会社が宣伝し、派遣先がそれを利用している国はありません。
リストラによる男性中高年正社員を中心とした常用雇用の破壊は、同じ労働を低劣な労働条件で行う非正規雇用労働者が拡大していることを背景にしています。
非正規雇用労働者に比べて、正規労働者の待遇は恵まれています。しかし、経済的効率からは、非正規雇用のほうが安上がりに済むことは明らかです。差別雇用を黙認し、その無権利の克服に取り組まない労働組合は、その団結活動について利己的・特権的な面のみが目立つことになり、社会的な支持も道徳的な権威も失われてしまうでしょう。
正規労働者を組織する労働組合の幹部のかたには、原点に立ち戻り、雇用全体を守っていくという労働組合の本来の役割を果すこと、派遣労働者を含む非正規雇用労働者の無権利なままでの拡大に歯止めをかけることの重要性に、是非とも早く気がついて、その権利の実現、差別の克服に取り組んで欲しいと思います。