長岡京市保育料さいばんにゅうす 第4号 19941103 文責 脇田


   保育料裁判の現段階についてのご報告 

 長岡京市は、連続6年、保護者への説明会・保護者会との話合いぬきに一方的な値上げを続けています。他方、例えば、正規保母とパート保母が1日5回以上も入れ替わる細切れ保育になっており、保育体制、保育内容は、ここ数年、目に見えて劣悪化しています。

 これに対して、今年3月24日、脇田滋・脇田暢子(新田保育所保護者)が原告となって、今井民雄長岡京市長を被告に、1993年度保育料決定処分の取消を求める行政訴訟を、京都地裁に提起しました。

 保育料裁判が、すでに第3回の弁論を終え、双方の主張がかなり出そろいました。

 裁判の提起から現段階までの双方の主張を要約し、裁判の主な争点について、ご報告をしたいと思います。

 これまでも、色々ご支援・ご協力をいただき、ありがとうございます。

 市の主張に対しては、60を超える具体的な証拠を裁判所に提出しました。これによって、下記の一見もっともな市の主張も、事実に照してみれば如何に矛盾したものかが、明らかになると思います。

 幸い、竹下義樹弁護士をはじめ、有能な若手弁護士(合計4名)の方にに代理人になっていただきました。

 これから、いよいよ、本格的な立証段階に移ります。

 皆様の、物心両面でのご支援を心からお願いします。とくに、カンパと関連した資料、証拠をお寄せ下さい。

争点
原告(脇田)の主張
被告(長岡京市長)の主張
保育料は、市議会の条例で決めるべきか、市長単独で決められるか ○保育料は、条例の改正として市議会で決定すべきである。ところが、長岡京市は、市長だけで決められる「保育所規則」で決めており、地方自治法に違反している。

○とくに、1987年に法律が変わったが、この点からも保育料決定は自治体が条例で決める必要があるのに、長岡京市は、条例によらず、規則だけで決めている。

○保育料は、児童福祉法56条を直接の根拠として定められた特別な「負担金」であって、条例で決める必要はない。

○負担金(徴収金)は、必要な費用を保護者負担(応能負担)とし、条例の根拠を要せず市町村長限りで規則において定め徴収できる。

○他の京都府下の自治体はどこも条例で決めていない。

保育料は、保護者の要望を反映して決めるべきか、保護者の声を聞かずに決めてよいか。 ○保育料は、納付者でもある保護者の声を聞いて聞くべきである。

○従来は、保護者会との話し合い、保護者への説明会をして保育料を決めていたのに、それをしないのは手続的な不備である。

○児童対策審議会へ諮問もなく答申もない。

○他の自治体では、保護者会との話し合い、児童対策審議会答申を経て民主的に決めている。

○保育料は保護者の要望や意見を聞いて改定し決定すべきことではない。

○保育料改定は、現在もなお「児対審」答申を十分に尊重した上関連諸法令や同答申を基に基本的な考え方や改定のルールを明確にし、継続性を持って行うことが保護者等への適正な受益者負担を確保し、且つ多額の一般財源を保育所経費に投入していることについて市民の理解につながっている。

法律や指針等に違反する保育をしながら、保育料を引き上げているか否か。 ○長岡京市立保育所での保育内容は、ここ数年大きく後退しており、児童福祉法、児童福祉施設最低基準、保育所保育指針等に違反したものとなっている。

○こうした状況の下で、保育料を引き上げることは違法である。

○長岡京市立保育所の保育内容は、厚生省が通知した「保育所保育指針」に沿って行っており、保母職員の研修も積極的に行い、保育内容の向上に日々努めている。

○保育環境についても、厚生省令で定められている最低基準を越える保母職員を配置するとともに、その補助的な臨時職員も配置している。

保育体制(引き継ぎ体制)○市立保育所では、パート保母(早朝)→正規保母→パート保母(昼休憩)→正規保母→パート保母(夕方)と、1日に5ー6回も子どもの担当者が入れ替わる細切れ保育になっている。これは他の自治体には見られない。

○以前は、保母の引き継ぎ時間が30分あったのに、現在はゼロに削られている。

○昼休み時間は、明らかに児童福祉施設最低基準に反する職員数である。

○市においては、0歳児3対1、1歳児5対1、2歳児7対1、3歳児17対1、4歳児27対1、5歳児30対1としており、児童の年齢に応じてきめ細かな職員配置を行うとともに、保育内容の向上と保母職員の勤務条件の改善を配慮している。

○障害児加配保母、同和加配保母、保母長、主任、フリー保母を配置するとともに臨時職員(パート)保母も配置しており、「最低基準」に反するような職員配置はない。却ってその基準を上回っており手厚い保育をしその内容を充実している。

子どもの ケガ(安全体制)○細切れ保育の下で、子どものケガや知らぬまに園外に出てしまうケースが増えている。

○ケガについて、保育所側の把握が不明確で保護者への説明・対応も不十分である。

○保育時間中の子どもの傷病についての統計数字が、向日市とは違って、長岡京市では発表されていない。

○児童の怪我については、保護者に対し誠意をもって対応しており、新田保育所の怪我についても保護者に対し十分経過説明し御理解も頂いている。
パート保母の大量導入○長岡京市立保育所では、どこの自治体にも見られないほど大量のパート保母(無資格)が導入されている。

○公的保育に無資格者を当てる法的根拠はない。有資格の正規保母が保育にあたることを求める児童福祉法に違反する。

○民間園でさえ、このことが監査対象となっているのに、市立保育所で無資格者を採用する根拠は何か、明確に示されたい。

○パート保母を、恒常的な職務にあてておき ながら、臨時的任用として、雇用期間付きの劣悪な待遇(時給830円や変則時間帯)で雇用することは、地方公務員法や市の規則にも違反する。

○昭和55年4月から朝・夕にパート保母の導入をし時間外保育事業を実施した。

○昭和61年7月から、保母職員の昼休憩制度の実施に伴い児童の午睡時である1時から3時の間にパート保母を導入した。平成5年10月実施の保母職員の週40時間勤務体制により、パート保母の勤務時間帯の一部変更を行った。

○現在のパート保母の配置は朝午前7時30分から9時、午睡時午後1時から3時、夕午後4時から6時、土曜日の午後に限定している。

○パート保母は、地方公務員法に基づき臨時的に任用している職員である。その具体的な雇用の取り扱いは、長岡京市臨時職員取扱規則によって行なっている。

お散歩

(園外保育)

○お散歩の回数が減少し、保育内容が後退している。

○お散歩が減った理由は、正規保母が減り、ギリギリの保育体制(クラス担任が1人の単数クラスが増え、フリー保母減など)になったためである。

○月曜日のお散歩は禁止されている。

○遠くへ出かけることも少なくなった。

○10年以上前に一部保母が歩くことにより足腰を鍛えるというねらいで実施していた。

○1週間の内3回、多い時は4回という過剰なお散歩の実態では、保育の目的である健全な心身の調和的発達を望むことが難しいことや、児童の曜日ごとの健康状態、散歩時の安全確保等を再検討し、散歩のあり方を見直してきた。

保育の中身を保護者に知らせない保育所運営○市立保育所では、保護者に保育の内容を知らせない方針が強められている。

○細切れ保育の下で、担任が4時か4時半には保育から離れるので、保護者は担任保母と話す機会がきわめて少ない。

○こどもの様子を知らせる連絡ノートが記録性のないホワイトボードに変えられた。

○懇談、参観等の機会が減少させられた。

○日常の保育や子どもの様子を伝えるスナッップ写真も禁止されるようになった。

○子どもの昼間の様子を知りたいと思っても担任保母の電話番号が知らされず、急な病気のときにも連絡できない。

○市立の小学校、中学校では担任の連絡先が育友会を通じて知らされているのに、保育所で知らせないのは何故か。

○保護者全員に毎月保育所だよりを発行し、月の行事や保育内容、家庭で配慮して頂きたい事柄等を知らせている。

○乳児については連絡ノートで、幼児については、クラス前に掲示しているホワイトボードにより日々の保育や児童の様子を知らせている。

○児童の病気等特に重要な事項については、電話や手紙、児童の送迎時に口頭で保護者に連絡している。

○年度始めの面談や定期的な懇談会、保育参観や必要な場合は家庭訪問を行い、保護者に対する理解と協力が得られるよう努めている。

○保母職員の住所、電話番号は公表していない。公務員であっても、本人の同意なしに保護者に住所や電話番号を知らせることはできないと判断している。

合宿保育○市立保育所も加入してる京都府保育協会は、合宿保育を推進している。その神崎児童センターは、5歳児などの合宿保育のための施設であり、長岡京市は、これに補助金を支出している。

○長岡京市が措置した民間園の5歳児は、合宿保育に出かけている。それにもかかわらず、合宿保育が5歳児の発達にそぐわないと強弁する被告の立場は、自己矛盾をしており、また、保育界の常識から見て異常なものである。

○保護者会が主催する合宿保育は、その実態の中に種々問題点があり、保育所運営上また保育内容上においても放置できない問題としてとらえてきた。

○問題点の主なものは、5歳児が親から離れて宿泊することが発達段階からしてそぐわないこと、保母職員の参加を前提とすることや日々の保育の中での事前準備が必要不可欠なこと、また、事故等の責任問題が不明確なことなどがあり、保護者会に中止の申入れを行ったものである。

保護者会活動の抑圧○長岡京市は、とくに1989年以降、保護者会に対して、様々な不当な介入を行政担当者や公立保育所長自身が進めてきた

○保護者会行事について保育所施設の利用は拒否されており、保育所内での保護者の文書活動は禁止され、信書も市立保育所長らによって引き抜かれるという違法な行為が繰り返されている。

○保護者会との話合いや保護者への値上げ説明会の開催は、納付義務者である保護者の生活実感と意見を決定に反映させるために重要かつ必要不可欠な手続である。多くの自治体では、保育料が実収入に比較してきわめて高額になった近年、保育料決定について保護者の意見を反映させることを不可欠と考えている。

○問題なのは保護者会はその独自の活動(運動)を通し、その活動(運動)は保育行政への住民参加の一形態であることを強調し明確な運動団体としていることである。

○市が保育料決定に際し保護者や保護者会を否定抑圧して行ったとの点は否認する。

○市当局、所長としては公的立場として一部の保母とこれに呼応した形の保護者会の独自の主義主張からくる不当な運動や誤った行動に対し、児童の安全を保護し、或いは保育所としての本来のあるべき公的立場から適切に対応したにすぎない。


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