注 「規制緩和と社会保障・社会福祉の法政策」

【注1】 「法における人間像」に注目することは、ある法分野を統御する原理を理解するために不可欠である(沼田稲次郎『社会法理論の総括』(勁草書房、一九七五年)三七三頁参照)。老人保健法以降の受動的な社会保障の権利主体としての「老人」概念については、井上英夫・上村政彦・脇田滋編著『高齢者医療保障 日本と先進諸国』(労働旬報社、一九九五年)五〇頁以下参照。

【注2】 勧告についての批判的な検討としては、相澤與一『社会保障の保険主義化と「公的介護保険」』(あけび書房、一九九六年五月)、大沢真理「社会保障制度審議会の勧告をジェンダーで読む」賃金と社会保障一一六四号一一頁以下参照。さらに、関連して、介護保険をめぐる論議については、里見賢治・二木立・伊東敬史『公的介護保険に異議あり』(ミネルヴァ書房、一九九六年)ほか、多くの文献がある。

【注3】 小川政亮『社会保障権 歩みと現代的意義』(自治体研究社、一九八九)年参照。

【注4】 第一審の京都地方裁判所(一九九一年二月五日)は、制度について通常の注意義務で知りうる程度には周知徹底する知事の責任を認めた。

【注5】 成瀬龍夫「公共サービスへの民間の参入−医療・福祉の規制緩和をめぐって−」賃金と社会保障一一七二号四三頁以下参照。

【注6】 朝日健二「『介護保険制度』七つの問題点」老後保障最新情報資料集13、あけび書房、二頁以下等参照。

【注7】 総務庁は一九九四年九月、有料老人ホームについて実態調査を行い、(1)募集広告内容の適正化、(2)重要事項説明書の作成、交付、説明の法的義務化、(3)入居一時金の返還金保全措置の法制化の検討を求めて、厚生省と自治省に改善勧告を出した。また、東京都も都消費生活条例(品質等の表示)に基づき、「実態とかけ離れた介護サービスをうたい文句にする」有料老人ホームの弊害から、サービス内容の表示義務付けなどを一九九五年から実施することになった。ジュリスト九四九号の「有料老人ホームの法律問題」の特集参照。

【注8】 一九九四年五月、入院給食委託業者が厚生官僚らを豪華海外視察旅行に接待していたことが、当時、問題なっていた「癒着」と批判された。

【注9】 措置制度をめぐる論議については、田村和之「措置制度改革論と行政責任」都市問題研究八五巻六号参照。

【注10】 橋本宏子『福祉行政と法 高齢者福祉サービスの実態』(尚学社、一九九五年)参照。

【注11】 脇田滋「長岡京市の保育行政について」婦人通信四三八号一八頁参照。

【注12】 井上英夫・上村政彦・脇田滋編著・前掲『高齢者医療保障』一八頁以下参照。

【注13】 脇田滋『労働法 の規制緩和と公正雇用保障』法律文化社、一九九五年三月参照。

【注14】 井上英夫「健康権保障と看護婦人材確保法」労働法律旬報一三一三号八頁以下等参照。

【注15】 武田宏『高齢者福祉の財政課題 分権型福祉の財源を展望する』(あけび書房、一九九五年)五三頁以下参照。

【注16】 自治労山梨県本部によるホームヘルパー雇用実態調査毎日新聞一九九五年一月三〇日、「低賃金に泣くホームヘルパー 社会福祉協会委託料の水準が背景に」。山本隆編著『都市で高齢者を支える』(啓文社、一九九五年)参照。政令市のヘルパーの九割がボランティアであり、雇用契約も労災加入も少数であることが明らかにされている。

【注17】 数字は、一九九三年八月七日、全国老後保障地域団体連絡協議会講演会での唐鎌直義氏(長野大学)の指摘。

【注18】 秋田地裁判決(一九九三年四月二三日)は減額処分取り消しを命じた。

【注19】 厚生省は一九九五年四月一日から実施する「一九九五年度生活保護基準・生活保護実施要領案」(別項)で、普及率七割以下の地域でも病弱者、身体障害者などがいる生活保護世帯のルームエアコン(クーラー)保有を認める項目が入ることになった。

【注20】 福岡地裁が一九九五年三月一四日、高校進学準備のために生活保護費の一部を学資保険 に加入して蓄えることを認めた。

【注21】 九五年の出生率一・五〇、二〇二一年には一・八に回復という見込みが、九五年の出生率一・四三と大きく狂い、回復についての厚生省の楽観論を吹き飛ばしてしまった。

【注22】 一九九六年五月二五日付毎日新聞「〈社説〉厚生白書=国民負担率より出生率を」

【注23】 小川政亮・垣内国光・河合克義『社会福祉の利用者負担を考える』(ミネルヴァ書房、一九九三年)参照。

【注24】 一九九五年一〇月、京都市で「生活保護裁判全国交流集会」が開催され、訴訟分科会では、各地の生活保護裁判の情報交換が行われ、初めて社会保障争訟についての全国的なネットワークが生まれようとしている。

【注25】 「生活保護受給、震災前の八倍 仮設住宅の生活実態調査を出版」朝日新聞一九九六年六月二六日朝刊 阪神大震災の仮設住宅で暮らす人の生活実態を調べた結果がまとまり、「被災者が問いかける日本の社会保障」という本として出版された。生活保護を受けている世帯が、震災前の神戸市平均では約一・五%なのに、調査対象では一二%に達するなど、仮設住宅に住む被災者の実態が報告されている。


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