updated Sept. 2 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)
7040. 労働組合の労働者供給事業とは

 職業安定法は、供給契約に基づいて労働者を他人に使用させることを目的とする事業を労働者供給事業と定めています(同法第5条)。いわゆる人貸し業で、多くの弊害があることから、この労働者供給事業は原則として禁止されています。
 1985年に労働者派遣法が制定され、労働者供給事業のうちから、労働者派遣に該当するものは除外されました(同第5条)。
 しかし、職業安定法は、労働組合が労働大臣の許可を受けて無料で労働者供給事業を行うことは禁止していません(職業安定法第44条・第45条)。
 労働組合が行う労働者供給事業は、営利目的ではなく、労働者の雇用と労働条件を守ることを目的にしています。

 労働者供給事業(労供事業)は、労働者派遣事業とは異なり民間企業による大幅な中間マージンなどがありません。そのため、労働者の利益を守る労働組合にだけ認められています。自動車運転手、看護婦、バスガイド、プログラマーなど様々の職種で行われており、労働者供給事業を行う労働組合が集って、「労供事業関連労組協議会」を結成しており、約30の労働組合(約100万人)が加入しています。
 労働者供給事業を行っている労働組合としては、情報処理産業の電算労がよく知られています。

 バスガイドの供給をしている私鉄総連や添乗労働者を供給している観光労連があります。私鉄総連は、退職したバスガイドを集めて、無料で観光バス会社に派遣する労働者供給事業を1990年からスタートさせています。労組版人材派遣業ともいうべきもので、労働省から事業認可がおりています。ガイド経験者を面接などで選び登録をして希望する会社に派遣する仕組みで、紹介料・派遣料は取らず無料ですが、賃金の10%を組合費や共済費として納めてもらうものです。
 また、民間放送分野では民放労連が、1992年に「放送スタッフユニオン」を設立、フリーで働く人たちに呼びかけて登録をしてもらい、その名簿に基づき、テレビ局や制作会社から寄せられた求人にこたえてユニオンの加盟者を現場に送り出すことを計画し、実際に、労働者供給事業の許可を得ています。

 また、中小企業の労働者でつくる全国一般が人手不足に悩む中小企業向けに定年退職した技術者を供給する事業(労働者供給事業)を開始したことが報道されました(朝日新聞1991年8月27日)。それによれば、55歳以上の定年退職者で、業種は、製図工、運転手、金属工作機械工などで、労組本部に事務局を設け、希望者を登録し、中小企業に派遣する仕組みで、紹介料は取らず、給料の2%を組合費として納めてもらうもので、組合としても組織拡大につながるメリットがあるとされています。
 また、首都圏の日本語学校の教師などでつくっている日本語学校教職員ユニオンも1995年に、方針として日本語学校の経営危機が深まり、解雇や賃金切り下げなどが続くなかで、自ら新しい仕事の場を開拓していくために日本語教師の労働者供給(労供)事業を推進することを検討しているという報道がありました(朝日新聞1995年3月19日)。

 この労働者供給事業は、労働組合が派遣労働者の権利を守り、また組織する有力な方法です。派遣労働者の労働条件を守っていくためには、営利的な労働者派遣事業に代わって、できるだけ多くの労働組合が、この労働者供給事業に取り組んでいき、社会的に広くその意義を知らせていくことが必要だと思います。


労働者供給事業を行う労働組合
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