updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3190. 賃金を払ってくれないのですが
 賃金は、労働者の生活を支える重要な意味をもっています。労働基準法をはじめとして、賃金未払いや不払いについては、労働者保護の規定が定められています。

 労働者派遣事業の規制緩和が進められ、零細の労働者派遣事業も参入し、労働者には何ら責任のない理由で賃金が支払われないことも増えてきました。
 最近では、引っ越しサービスで派遣業務をしていた株式会社エプロンレディ(本社・東京都新宿区)が、1997年に経営破綻した。荷造りや荷ほどき、清掃業務で登録して働いていた主婦や学生ら千数百人が、総額約1億円の賃金を支払われていない。東京労働基準局は、主婦ら45名について1997年4月の賃金約560万円を支払わなかった疑いで、1998年3月、同社と同社社長を労働基準法違反(賃金不払い)の疑いで東京地検に書類送検した、ということです〔朝日新聞 夕刊1998年03月30日〕。
 労働基準法第24条では、とくに毎月1回以上一定期日払いの原則を定めています。毎月決まった日に払うことが義務づけられていますので、この原則に反した事例です。
 折角の貴重な時間を使っての労働です。労働者として、その対価である賃金を受け取るのは、当然の権利です。賃金不払いは、罰則適用を受ける犯罪ということをしっかりと確認して下さい。
 この賃金不払いに対しては次のように対応できます。

 (1)証拠をしっかりと揃えて、請求の額を確定すること
 賃金が払われていないということを明らかにする書類やメモなどの証拠となるものをできるだけ集めることが必要です。
 賃金算定の裏付けとなるのは、労働時間管理記録(タイムレコードなど)、業務記録、就業規則(社内規程)等です。もしなければ、会社に請求して入手するか、同僚であった人に相談してください。
 これまでの給与明細書やメモなども、争いとなった場合には重要な証拠になります。手帳に書いた就労の記録などでもよいからできるだけ集めて整理することが必要です。
 とにかく、労働契約や就業規則の賃金規程をしっかり調べて、未払い額を確定することが最も重要なことになります。

 (2)交渉や直接の請求をおこなう
 賃金の支払いをしてくれと交渉したり、文書(内容証明など)で請求を正式におこなってください。(1)に基づいて、具体的な額を請求してください。

 (3)労働基準監督署の利用
 賃金未払いは労働基準法違反です。罰則も適用される(労働基準法120条1項)ほどですので、賃金未払いについて労働基準監督署に申告(しんこく)すると、労働基準監督署が使用者に対して調査し、賃金支払いを勧告してくれます。その場合も、(1)の書類などができるだけあればスムーズに受け付けてくれます。
 この監督署の勧告があれば、それだけで支払われる場合も少なくありません。
 なお、労働基準監督署は忙しいこともあって、はっきりと賃金未払いと主張しないと、「民事問題」として扱ってくれない傾向があります。できれば、1人ではなく、誰かといっしょにいけばより確実に受け付けてくれます。  申告する労働基準監督署は、派遣元(派遣会社)の地域を管轄する監督署になります。
 派遣110番のホームページにリンクしてありますので、探してください。

(3)裁判所の利用

 1.直接の交渉や労働基準監督署で解決しない場合、裁判所の利用になります。
 少額の事件ですと、本人訴訟も簡単です。簡易裁判所にはアンケート形式で賃金請求に関する訴状や調停申立書がありますので、あなたでも十分に書けます。

 裁判には、費用がかかると思われているようですが、この本人訴訟であれば、裁判官も助けてくれますし、使用者が法廷に出てこないことも予想できますので、書類が揃っていれば、勝訴は間違いありません。

 2.このとき「遅延損害金」も合わせて請求できます。
 本来の支払期日以降の遅延について、利息分を支払わせることができるわけです。 その利率は、次のとおりです。
  ア 商事法定利率
    使用者が営利企業などの場合、商事法定利率として年6%(商法514 条)。日割りして計算してください。

  イ 退職労働者の賃金に係る遅延損害金
    事業主が、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く)の全部または一部を退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあっては当該支払期日)までに支払わなかった場合には、労働者は、その翌日から支払われる日までの期間について、年14.6%の遅延損害金を請求できます(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、同法律施行令1条)。
   あなたは退職されていますので、この14.6%が請求できると思います。

 3 付加金もとれます。
  裁判所に未払い賃金請求の提訴をするときここ、時間外労働(法外残業)に関する割増賃金の未払があるときは、その未払額と同額の付加金も請求できます(労基法114条、37条)。
  付加金について判決確定の日の翌日から民事法定利率である年5%の遅延損害金を請求できます(最高裁判決昭50.7.17)。
  休業手当(労基法26条)、休日・深夜の割増賃金(37条)、年次有給休暇中の賃金(39条6項)、解雇予告手当(20条、これは厳密には賃金とは異なるが)の場合も同様です。

 4 裁判所で和解する場合もあります。
  裁判を起こしただけで、相手方が和解をしたいと言って支払いをしてくることも考えられます。全額+遅延損害金+附加金について権利があることを確信して、強気で話し合いに応じてください。

 5 交渉や提訴前に、賃金債権の保全のために仮差押や仮払仮処分等の保全処分をしておくことも有効です。これだけで裁判を起こさずに解決することもあります。
 また、簡易な支払命令の方法もあります。これについては、次のURLにアクセスして、その概要や書類の書き方を調べてください。
 いずれにしても、未払いの報酬については、一般の未回収の金銭債権として裁判などの民事上の手続きがあります。
 支払督促などの簡易な手続きも考えられます。
 【参照】支払督促関連HP
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