updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

2380. もう不要(解雇)だといわれたのですが  
   派遣労働者は、派遣元(派遣会社)との間で労働契約を結んでいます。ご相談では、誰が「もう不要だ」といったか判りませんが、もし、派遣先が「もう不要だ」と労働者に言うことは筋違いです。派遣元だけが派遣労働者を解雇することができます。

 「もう不要だ」というのが、派遣元の意思であれば、この「解雇」ということになります。ただし、派遣元が言ったとしても、それが人事担当者など、会社の意思を代表する責任のある立場の人でなければ、正式な「解雇」とは言えません。労働者の身分を奪うことになる「解雇」については、できれば文書で、解雇理由を含めた通告書が必要だと考えます。労働基準法などでこうした解雇の通告書の交付は義務づけていませんが、最初の労働契約や会社の就業規則などで規定していれば、派遣元には通告書を交付する義務が生じます。
 とにかく、「もう不要だ」というのが法的にどのような意味をもつのか、解雇であれば、その理由は何かなどを、派遣会社にしっかりと確認することが、まず第一に必要となります。

 退職、解雇、短期契約の更新拒否
 労働契約を終了させるときに、労働者から辞める「退職」と使用者から辞めさせる「解雇」では、法的な結果は大きく違ってきます。簡単に言えば、使用者から労働契約を一方的に終了させるという「解雇」には、手続や合理的な理由が必要なのです。突然の解雇や合理的な理由のない解雇は解雇権の濫用として法的には無効となります。
 また、一年を超える有期契約は一年を超えて雇用継続しておれば期間の定めのない契約になると解することができます(労働基準法第14条参照)。短期契約は、反覆更新によって期間を定めない契約に転化したか、少なくとも「解雇」類似のものとして解雇法理が適用されます(連鎖契約の法理)。したがって、2カ月契約の短期契約を、数回反覆更新して、ある段階で期間満了によって契約を終了させて新たな契約更新を拒絶することは、解雇と同様に後述の合理的な理由がない限り無効と考えられます。
 なお、解雇には、その理由によって普通解雇と懲戒解雇が区別され、前者には個別労働者の事情による個別解雇と経営危機を理由とする整理解雇(集団的解雇)があります。
 解雇予告・解雇予告手当

 労働基準法第20条は、次のように、解雇予告またはそれに代わる解雇予告手当の支払が使用者に義務づけられています。

労働基準法第20条(解雇予告)

 (1) 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
 (2) 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
 (3) 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。


 解雇とその正当性

 使用者の一方的な解約による解雇は自由ではなく、(1)法令や公序良俗に反している場合、(2)労働協約や就業規則に違反する場合、(3)解雇権の濫用によるものである場合、解雇は無効となります。

 (1)解雇が法令や公序良俗に反していないこと

 労働基準法は解雇について、業務上の傷病による休業期間中または産前産後の休業期間中とその後30日間の解雇を制限している(19条)。また、労働基準法は、30日前の解雇予告をするか、または30日分の平均賃金の支払い(解雇予告手当)を義務づけています。例外的に即時解雇が認められるのは、懲戒解雇や天災などのための経営難などの事由があって、労働基準監督署長が認定した場合に限られる(20条1項但書)。
 また、差別的な解雇は無効です。労働基準法が定める国籍、信条、社会的身分による差別的な解雇(3条)だけでなく、女性だけを解雇する差別定年制(若年定年制、結婚退職制、出産退職制等)の性別による解雇も労働基準法3条・4条の公序に反するものとして無効とする判例が確定し、男女雇用機会均等法で禁止されることになりました(11条)。また、労働組合の結成や活動を敵視して組合弱体化をねらって、組合の役員や活動家を解雇することは不当労働行為であり(労組法7条)、無効です。

 (2)労働協約や就業規則に違反しないこと

 労働協約の解雇に関する条項に反する解雇は無効です。
 (3)解雇権の濫用にならないこと

 整理解雇と解雇権の濫用

 整理解雇は、判例上、とくに(1)解雇を必要とする強い業務上の必要性、(2)会社が解雇を回避するためにどのような努力をしたか、(3)解雇の基準が合理的か、その基準は公平に適用されているか、(4)会社は労働組合や労働者と@からBの要件について誠実に協議したか、の四つの要件がすべてみたされることが必要だとする厳重なしばりがかけられています。
 とくに整理解雇については、派遣会社は「経営上の必要性」や「派遣先からの打ち切り」を口実にしがちですが、派遣先による労働者派遣契約の途中解除については、1996年法改正でも規制措置が定められており、行政指導のガイドラインも締めされています。また、労働組合壊滅を目的としておこなわれる解雇も少なくありません。その意図が明白であれば不当労働行為にあたります。

 懲戒解雇

 懲戒は、服務規律違反に対する制裁であす(就業規則などが法的根拠)。懲戒解雇は、この懲戒のなかで最も重い処分ということになり、通常は、即時解雇と退職金の不払いや減額を伴うことが多くなっています。また、再就職も困難となるため、対象となる労働者にとっては「死刑」にも当たる重大な不利益です。例外的に懲戒解雇を認めるとしても、きわめて重大な労働者の非違行為に限定し、濫用的に運用されないように手続きをとくに厳格にすることが必要です。


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