Contingent Workers' rights in Korea 韓国の非正規雇用・派遣労働者の権利をめぐる取り組み

レポート:韓国 派遣労働者正規職化の取り組み 2000年5月29日集会に参加して

5/29シンポジウム

 5月28日から5月30日まで、韓国の民主労総(KCTU)と韓国非正規労働センター(KCWC)に招かれ、ソウルの中小企業会館で「派遣労働の正規職化(正社員化)」に関する討論会に報告者として参加してきました。韓国では、2年前にIMFの介入による労働関連法の規制緩和にともない、1998年に制定・施行された「派遣勤労者保護法」が、この7月に、3年目を迎えようとしています。同法は、日本の派遣法とは違い、期間が1年+1年と最長2年に限定され、その後は派遣先への直用が明確に義務づけられています。
 7月を目前にして、経済団体は、3年目を迎える派遣労働者を「正規職化」するのではなく、解雇したり、他の労働者と交替させるなどの便法で同法の規制を回避しています。さらに、派遣期間を延長して長期に派遣労働者を受入れようとする見解が現れています。
 民主労総は派遣労働者の正社員化、解雇反対、生存権確保を当面する三大懸案項目の一つとして位置づけ、10万人規模のゼネストも準備していました。、5月29日の集会は、こうした闘いのなかの一環でした。冒頭、ダン委員長から、労働者全体の53%を超えた非正規雇用労働者の権利と生存を守り、差別をなくす必要性が強調され、ストも含めた運動強化の決意が示されました。
 私の報告に期待されたのは、韓国では経営者団体が、弱い規制の日本法を輸入しようとしているなか、非正規雇用問題に取り組む必要性と課題を日本の経験から明らかにしてほしいと言うものでした(報告趣旨は、「民主法律」第240号の85ページ「職場の人権」第4号参照)。
 私以外には韓国の労働法研究者、民主労総副委員長、ハンナラ党議員、市民団体の弁護士、労働弁護団(民弁)弁護士、女性団体代表など、民主労総に近いメンバーだけでなく、韓国労総、経営者団体、政府労働部(労働省)の中堅官僚も参加し、発言しました。
 主報告者の一人であるチェ教授は、日本法と比較して直用化を義務づけている韓国派遣法が優れている点を指摘し、経済団体の派遣期間延長要求を強く批判しました。私は、日本の派遣制度が、同一労働同一待遇規制のないまま導入され、過酷な結果(労組組織率下落、無権利、低賃金労働者大量増、違法派遣横行など)を生み出している実態と問題点を指摘しました。(インターネットにも私の報告(日本語)が掲載されています。)
 この集会の前後にも、民主労総のストを含めて各地で解雇反対や正規職化をめぐる取り組みが進んでいます。そのなかで、KBSは、派遣で受け入れ3年目を迎える自動車運転手を解雇したため、正規社員としての地位を争う初めての裁判が提起され、注目を集めています。
 韓国を訪れて強い印象を受けたのは、労働組合(とくに民主労総)が、非正規雇用労働者の組織化を最大の課題の一つに取り上げていることです。この5月に、民主労総の外郭団体として「韓国非正規労働センター(Korea Contingent Workers Center―KCWC)」が創設されました。(ホームページ workingvoice.net)。インターネットの活動をとくに重視しており、非正規雇用労働者の権利確保と組織化を目的に、ネットワーク作りや研究活動を考えているとのことです。
 KCWCのメンバー(専従者8人、うち女性2人)は30歳代の民主活動家が中心で、所長のパクさんは、元学校教師でしたが非合法の教員組合組織化に参加し、免職の後、失職中に予備校教師をし、KCWCの責任者として民主活動に復帰したという経歴を持っています。創意にあふれた活動は魅力的でした。私のことは、派遣110番のページを見て、以前からよく知っていたとのことで、KCWCのページにも私のページに類似した労働相談のコーナーを作ったとのことです。
 政府や経営側の動きに対抗するためにも、また、産別組織や地域組織、同一価値労働同一賃金などの新たな課題に取り組んでいます。是非、多くの経験をもつ日本の労働団体、民主団体や人々とできるだけ幅広く連帯・相互協力したいとの強い希望を持っています。短い滞在でしたが、韓国で元気をもらって帰って来ました。いまハングルを覚えています。イタリアやドイツも魅力的ですが、お隣の韓国から元気をもらって、21世紀には、労働運動や労働法のルネッサンスを実現できればと思っています。(2000年6月 脇田 滋)
. (東亜日報2000年5月29日に当日の集会の概要が報道されています。)
〔以上は、民主法律時報の次号に掲載される予定の記事の原稿を元にしています。〕

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