関西空港　２４時間空港の舞台裏・パートⅡ

　１０月１６日の関西空港　２４時間空港の舞台裏・パートⅡのシンポジウムが開催されました。
　私はコメンティターとして参加し、関西空港で働く労働者の実態が、労働法の規制緩和を先取りしたものであることを改めて痛感しました。パネリストの報告やフロアーからの発言に、労働者派遣法、労働基準法の改悪が２１世紀の日本にもたらす職場の状況がここに凝縮して現れていると思いました。とくに、１万８０００人もの労働者が働いているのに、労働組合がほとんど組織されていないこと、非正規雇用の劇的な広がりに改めて驚きました。
　世界に開かれた民間経営の空港の苛酷な一面です。労働者を無権利に追い込むような経営のあり方は、経営者としての道徳的な堕落だと思います。公正な雇用保障、労働組合の活動の尊重など、働くルールの確立が必要であることを強く訴えます。（脇田滋）

　関西空港　２４時間空港の舞台裏・パートⅡシンポジウムを報道する連合通信の記事
(1999/11/05 連合通信)

関西空港／「不公正雇用のショーウインドー」
関港５年目の舞台裏／民法協がシンポジウム

　民間企業として９４年秋に開港し、５年目に入った関西国際空港の問題点を検証するシンポジウム「24時間空港の舞台裏・パートⅡ」が１０月１６日、大阪府泉佐野市内で開かれ、１００人が参加した。９６年開催の「24時間空港の舞台裏」に次ぐもの。民主法律協会が主催し、大阪国公、全運輸近畿航空支部、航空労組連絡会大阪地連、大阪労連阪南地区協議会が共催した。
　開会あいさつした大阪国公の滝口敬介委員長は、非正規労働者が異常に多いなどの関空の特徴にふれて、「日経連が２１世紀にめざす体制づくりが、彼らの意のままに進められている」と問題意識を語った。

　低賃金で長時間労働

　シンポでは労働実態、地域経済などの視点からパネリストが問題を指摘した。
　〈航空連大阪地連・久保博文事務局長〉　１万８千人が働いているが、ほとんどが未組織で無権利状態だ。建設費に羽田空港の５倍も注ぎ込んだ背景から、コスト削減をめざし組合の参入を規制したためだ。労働時間は長いが、賃金は伊丹空港の７割程度といわれる。
　伊丹では正規と非正規が５対５の割合だが、関空では３対７程度だ。正規との格差が大きいにもかかわらず、非正規雇用の募集・採用条件は「英検２級以上、大学・短大卒」など高い。
　労災が多発しており、５年間で２１２件に及び、５人が死亡した。
　〈豊島達哉弁護士〉　短期契約が多い航空業界だが、関空はとりわけ多く、契約社員、パート、アルバイトがたくさんいる。
　地上職のうちグランドホステス（チェックインカウンター業務、旅客誘導など）は、航空会社の社員として採用・配属されることは少なく、会社の下請・孫請などとして配属されることが多い。正規と下請などが、同じ職場で指揮・指導を受けて働いているケースもあり、違法状態になっている。
　地上職のグランドハンドリング（機体の整備など）、ケータリング（機内食作り）は大概が非正規だ。会社側は「働きたいならアルバイトで」と求人している。
　ある航空会社の子会社のアルバイト（32歳、扶養家族１人）の今年８月の給与は、手取りが２８万円強だった。しかし、そのうち残業手当（６４時間分）と夜勤務手当（６３時間分）、通勤手当を除けば１４万円にしかならない。伊丹の場合、残業や通勤手当なしでもこの水準だ。
　この人は夜１１時半～朝８時までなどの勤務がしょっちゅうあり、公休日も１暦日ちゃんとは休めない。
　若い人が入り、労働実態に失望して３～４年でやめ、また別の人が入ってくる。若者の憧れを食い物にしているのではないか。
　〈大阪労連阪南地区協・木村元広副議長〉　泉南市などの調査（９５年）では「予想どおりのプラス面が見られる」が１６％だけで、逆に「予想ほどのプラス面がない」３８％、「予想よりマイナス面が大きい」１０％との結果だ。各種調査でもほとんど経済効果はないことが示されている。
　８月の大阪府の有効求人倍率は０・３８だったが、空港近隣の和泉大津管内で０・２３、岸和田管内は０・３２、和泉佐野管内でも０・２９だった。雇用効果もほとんどなかった。

　　実態監視と告発を

　コメンテーターの脇田滋・龍谷大学教授は、「関空はまさに不公正雇用のショーウインドーだ」と強調。「航空問題は命に直接関わっている。安全が大切な職場で不公正な雇用をしているのは問題だ」と述べた。
　改正派遣法にかかわって労働省は現在、その範囲を政令で決めている。脇田教授は、生命に直結する航空分野への派遣を禁止させるため「実態の監視と告発を」と訴え、労働者を組織する必要も改めて指摘した。〈写真〉シンポジウム
　　　　　　　　　　　　　　「連合通信・地方版」（関西版）