パートタイム労働に関する条約(175号)政府仮訳
この政府仮訳は、これを元に翻訳を改善する目的のものです。ILO条約をできるだけ多くインターネット上に掲載して広めていきたいという目的で、より良い翻訳作業用です。逐次、翻訳を改善していき、問題となる点には訳注を付けていきたいと思います。
【資料】パートタイム労働に関する条約(一七五号) 日本政府仮訳

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局理事会によりジュネーブに招集され、一九九四年六月七日に第八一会期において会合し、
 一九五一年の同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約、一九五八年の雇用及び職業についての差別待遇に関する条約、及び一九八一年の男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約及び勧告の諸規定のパートタイム労働者への関連性に留意し、
 一九八八年の雇用の促進及び失業に対する保護に関する条約、及び一九八四年の雇用政策に関する勧告(補足規定)のこれらの労働者への関連性に留意し、
 全ての労働者にとって生産的で自由に選択された雇用の重要性、パートタイム労働の経済的重要性、追加的な雇用機会を促進するパートタイム労働の役割を考慮に入れた雇用政策の必要性、及び雇用機会、労働条件・社会保障の分野においてパートタイム労働者の保護を保障する必要性を認識し、
 総会の第四議題であるパートタイム労働に関する提案の採択を決定し、
 これらの提案が国際条約の形式をとるべきことを決定し、一九九四年六月ニ四日に以下の条約を採択する。引用に当たっては、一九九四年のパートタイム労働条約と称することができる。

 第一条

 本条約の適用上、
 (a)「パートタイム労働者」という用語は、通常の労働時間が比較可能なフルタイム労働者のそれよりも少ない就業者を意味する。
 (b)(a)で言及された通常の労働時間は週当たりとするか、一定の雇用期間中の平均として計算することができる。
 (c)「比較可能なフルタイム労働者」という用語は、以下のフルタイム労働者を指す。
  1 当該パートタイム労働者と同一の型の雇用関係にあり、
  2 同一の又は類似の型の労働又は職業に従事し、かつ
  3 同一の事業所、又は当該事業所に比較可能なフルタイム労働者がいない場合は同一企業、又は同一企業にそれがいない場合は同一産業部門に雇用されている。
 (d)部分的失業、すなわち経済的、技術的又は構造的理由による通常の労働時間の集団的かつ一時的削減の影響を受けたフルタイム労働者はパートタイム労働者と見なされない。

 第二条

 本条約は、他の国際労働条約のもとでパートタイム労働者に適用されるより有利な規定に影響を及ぼすものではない。

 第三条

 1 特定の労働者又は事業所への本条約の適用が本質的に特別な問題を生じさせる場合には、加盟国は関係する代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の上、それらを全部又は部分的に条約の適用範囲から除外できるということを了承した上で、本条約は全てのパートタイム労働者に適用される。
 2 本条約を批准し、前項において与えられた可能性を利用する各加盟国は、国際労働機関憲章第二二条に基づいて提出される条約の適用に関する報告において、除外された労働者又は事業所の種類を挙げ、その除外が必要であった理由又はその除外が依然として必要であると判断される理由を明示するものとする。

 第四条

 以下のことに関してパートタイム労働者が比較可能なフルタイム労働者に与えられる保護ど同一の保護を受けるよう保障する措置をとるものとする。
 (a)団結権、団体交渉権及び労働者代表として行動する権利
 (b)職業安全衛生
 〔c)雇用及び職業の差別

 第五条

 パートタイム労働者が同一の方法で計算された比較可能なフルタイム労働者の基本賃金よりも低い、時間、業績、又は出来高ベースで比例的に計算された基本賃金を、単にパートタイムで働いているという理由から、受け取ることのないように保障するための国内法令及び慣行に適合的な措置を取るものとする。

 第六条

 パートタイム労働者が比較可能なフルタイム労働者と同等の条件を享受するよう、職業活動に基づく法定社会保障制度を修正するものとする。これらの条件は労働時間、納付した保険料又は賃金に応じて、あるいは国内法令及び慣行に沿ったその他の方法を通じて決定することができる。

 第七条

 パートタイム労働者が以下の分野において、比較可能なフルタイム労働者と同等の条件を受けるよう保障するための措置を取るものとする。
 (a)母性保護
 (b)雇用の終了
 (c)年次有給休暇及び有給公休日
 (d)疾病休暇
 金銭的権利は労働時間又は賃金に比例して決定することができるものと理解される。

 第八条

 1 加盟国は、労働時間又は貸金が所定の水準を下回るパートタイム労働者を
 (a)労働者災害給付に関する規定を除き、第六条で言及したあらゆる法定社会保障制度の適用範囲から
 (b)法定社会保障制度に基づく以外の妊産婦の保護措置を除いた、第七条に定めるあらゆる措置の適用範囲から除外することができる。
 2 第1項で言及した所定の水準は、不当に多くの割合のパートタイム労働者が除外されることのないように十分に低いものとする。
 3 第1項で規定した可能性を利用する加盟国は、以下のことを行うものとする。
 (a)現行基準を定期的に見直し、
 (b)国際労働機関憲章第二二条に基づいて提出される条約の適用に関する報告において、現行基準、その理由、及び除外される労働者への保護を徐々に拡大することが考慮されているかどうかを明示する。
 4 最も代表的な使用者団体及び労働者団体は、本条で言及された限度の設
定、見直し及び改定について協議を受けるものとする。

 第九条

 第四条から第七条で言及された保護が保障されることを条件として、使用者と労働者の両者のニーズを満たす生産的で自由に選択されるパートタイム労働の利用を促進するための措置を取るものとする。
 これらの措置には以下のものを含むものとする。
 (a)パートタイム労働の利用又は受け入れを妨害又は抑制する法令及び規則の見直し
 (b)雇用サービス機関が存在する場合には、情報及び職業紹介の活動の中でパートタイム労働の可能性を確認し公表するための雇用サービス機関の活用
 (c)失業者、家族的責任を有する労働者、高齢労働者、障害労働者、教育又は訓練を受けている労働者のような特定の集団のニーズと希望に対する雇用政策における特別の配慮
 3 これらの措置にはまた、パートタイム労働が使用者と労働者の経済的社会的目標にどの程度合致しているかに関する調査と情報の普及を含むことができる。

 第一〇条
 適切な場合には、国内法令及び慣行に従い、フルタイム労働からパートタイム労働へ、又はその逆の転換が自発的になされたものであることを保障するための措置をとるものとする。

 第一一条
 本条約の規定は、労働協約その他国内慣行と合致した他の方法で実施される場合を除き、法令又は規則によって実施されるものとする。そのような法令又は規則を採択される前に最も代表的な使用者団体及び労働者団体は協議を受けるものとする。


 第一二条〜第一九条(事務局規定につき省略)


 パートタイム労働に関する勧告(一八二号)仮訳

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局理事会によりジュネーブに招集され、一九九四年六月七日にその第八一会期において会合し、
 総会の第四議題であるパートタイム労働に関する提案の採択を決定し、
 これらの提案が一九九四年のパートタイム労働条約を補足する勧告の形をとるべきことを決定し、
 一九九四年六月ニ四日に以下の勧告を採択する。引用に当たっては、一九九四年のパートタイム労働勧告と称することができる。
 1 本勧告の規定は、一九九四年のパートタイム労働条約(以後、「条約」と称する)の規定と合わせて考慮されるべきである。
 2 本勧告の適用上、
 (a)「パートタイム労働者」という用語は、通常の労働時間が比較可能なフルタイム労働者のそれよりも少ない就業者を意味する。
 (b)(a)で言及された通常の労働時間は、週当たりとするか、一定の雇用期間中の平均として計算することができる。
 (c)「比較可能なフルタイム労働者」という用語は、以下のフルタイム労働者を指す。
  ■ 当該パートタイム労働者と同一の型の雇用関係にあり、
  ■ 同一の又は類似の型の労働又は職業に従事し、かつ、
  ■ 同一の事業所、又は当該事業所に比較可能なフルタイム労働者がいない場合は同一企業、又は同一企業にそれがいない場合は同一産業部門に雇用されている。
 (d)部分的失業、すなわち経済的、技術的又は構造的理由による通常の労働時間の集団的及び一時的削減の影響を受けたフルタイム労働者はパートタイム労働者とみなされない。
 3 本勧告は全てのパートタイム労働者に適用される。
 4 国内法令及び慣行に従って、パートタイム労働の大規模な導入又は拡大、パートタイム労働に適用される規則及び手続き、適切であると思われる保護及び促進的措置に関して、使用者は関係する労働者代表と協議すべきである。
 5 パートタイム労働者は書面又は国内法令及び慣行に合致した他の方法で、特定の雇用条件を通知されるべきである。
 6 条約の第六条に従って職業活動に基づく法定社会保障制度に対して行われる修正は、以下のことを目的とすべきである。
 (a)適切な場合には、これらの制度の適用条件としての賃金又は労働時間に基づく基準要件を徐々に引き下げること。
 (b)適切な場合には、最低又は一定額の給付、特に老齢、疾病、障害及び産前産後給付、並びに家族手当をパートタイム労働者に支給すること。
 (c)雇用が終了又は停止したり、またパート雇用のみを求職するパートタイム労働者が失業給付支給のために必要な労働可能性の条件を満たしていることを原則として受け入れること。
 (d)パートタイム労働者が以下のような制度によって不利になる危険性を削減すること。

 1 一定の基準期間内での保険料納付期間、被保険者期間又は雇用期間として表された資格期間が受給権の条件となる制度。
 2 以前の平均賃金及び保険料納付期間、被保険者期間又は雇用期間の長さを参考に給付額を決定する制度。

 7 (1) 適切な場合には、パートタイム労働者をできるかぎり広範に適用対象とすることができるように、法定社会保障制度を補足又はそれに代わる民間職業制度の適用のための基準要件を徐々に引き下げる。
 (2) パートタイム労働者は比較可能なフルタイム労働者と同等の条件のもとでそのような制度により保護されるべきである。適切な場合には、これらの条件は労働時間、保険料又は賃金に比例して決定することができる。

 8 (1) 適切な場合には、条約の第七条で言及された分野において同第八条のもとで規定された労働時間又は賃金に基づく基準要件は、徐々に引き下げられるべきである。 (2) 条約の第七条で言及された分野における保護の条件として必要とされる勤続期間は、比較可能なフルタイム労働者よりも長い期間をパートタイム労働者に適用すべきではない。
 9 パートタイム労働者が一つ以上の仕事を持っている場合、労働時間、納付した保険料、又は賃金のそれぞれの合計を、職業活動に基づく法定社会保障制度の基準要件をパートタイム労働者が満たすか否かを決定する際に考慮するものとする。
 10 パートタイム労働者は、比較可能なフルタイム労働者が受け取る基本賃金に加算される金銭的報酬を公平に受けるべきである。
 11 実行可能な限り、パートタイム労働者が公平に、当該事業所の福祉施設及び社会的サービスを利用できるよう保障するためのあらゆる適切な措置を取るべきである。これらの施設とサービスは、可能な範囲で、パートタイム労働者のニーズを考慮して適合的に修正されるものとする。
 12 (1)パートタイム労働者の労働時間の長さと編成は、労働者の利益と事業所のニーズを考慮して決定すべきである。
 (2) 可能な限り、所定労働時間の変更及び所定労働時間外の労働は制限と事前通知を条件とすべきである。
 (3) 所定労働時間外の労働に対する補償制度は、国内法令及び慣行に従って交渉を条件とすべきである。
 13 国内法令及び慣行に従って、パートタイム労働者は、比較可能なフルタイム労働者が利用できるあらゆる形態の休暇、とりわけ有給教育休暇、育児休暇、子供又は労働者の直系の親族の病気の場合の休暇を、公平に、かつ、可能なかぎり同等の条件の下で、平等に利用できるべきである。
 14 適切な場合には、年次休暇の編成及び慣習的な休日及び公休日の勤務の編成に関して、比較可能なフルタイム労働者と同一の規則をパートタイム労働者にも適用すべきである。
 15 適切な場合には、パートタイム労働者の訓練、昇進のチャンス及び職業上の移動の機会に対する特別な制約を克服するための措置を取るべきである。

 16 パートタイム労働の利用又は受入れを抑制する、職業活動に基づく法定社会保障の規定、とりわけ以下のものは適合的に修正すべきである。
 (a)パートタイム労働者の保険料が比例的にみて高額になっている規定。但し、これに対応した高額の手当が給付される場合を除く。
 (b)一時的にパートタイム労働を受け入れる失業労働者の失業保険給付を合理的な根拠がないにもかかわらず、明らかに削減する規定。
 (c)老齢給付の算定において、退職に先立つ期間中にのみ行ったパートタイム労働による所得の減額を過度に強調する規定。
 17 適切な場合には、熟練職及び管理職を含め、企業のあらゆるレベルでパートタイム労働への就業を容易にするための措置を使用者は検討すべきである。

 18 (1) 適切な場合には、使用者は以下のことを検討すべきである。
 (a)当該企業において可能となったフルタイム労働からパートタイム労働への転換を求める労働者の申請。
 (b)当該企業において可能となったパートタイム労働からフルタイム労働への転換を求める労働者の申辛絹。
 (2) フルタイム労働からパートタイム労働へ、及びその逆の転換を容易にするために、当該事業所におけるパートタイム及びフルタイムのポストに就ける可能性について使用者は時宜にかなった情報を労働者に提供すべきである。
 19 フルタイム労働からパートタイム労働へ、又はその逆の転換に対する労働者の拒否は、当該事業所の操業上の要請から生じたその他の理由等の国内法令又は慣行に基づく解雇の正当な理由がない場合、それ自体では雇用の終了の正当事由を構成しないものとする。
 20 国内又は事業所レベルの条件が許容するのであれば、労働者は、妊娠又は幼少・障害・病気の家族の介護の必要性のような正当な事由のある場合には、パートタイム労働へと転換し、その後にフルタイム労働に復帰することができるようにするべきである。
 21 使用者の義務が雇用する労働者の員数に左右される場合には、パートタイム労働者はフルタイム労働者と同様に数えなければならない。しかし、適切な場合には、パートタイム労働者は、その労働時間に比例的に数えられうる。
 但し、使用者の義務が条約第四条に定められた保護に関連するときには、フルタイム労働者と同様に数えられるものと理解される。
 22 パートタイム労働に適用される保護的措置、及びさまざまなパートタイム労働の制度のための実際的な取決めに関する情報を普及すべきである。

派遣労働関連資料集(目次)に戻る
ホームページに戻る
派遣労働者の悩み110番関連ホームページ(目次)