政府は、昨年国際労働機関が採択した181号条約、188号勧告の正式の条文を仮訳として公表しました。
これらの条約や勧告によれば、日本の現状では、業者に対する厳しい法規制が必要となります。また、労働者保護についてもより厳しい規制が求められます。
ところが、これを逆にして、民営職業紹介の自由化や労働者派遣の自由化を強行しようとしています。条約、勧告の全体を踏まえた法制度の整備が必要であることを理解するために、条約の全文を是非、読んでください。とくに、労働者の権利保護の点は参考になります。
なお、これらの条約についての私の論文も参考にしていただければ幸いです。 1998年6月14日 脇田滋



平成10年6月5日
閣議終了後解禁

第85回ILO総会(平成9年6月)において採択された条約及び勧告の国会への提出について

 平成9年6月の第85回ILO総会において採択された下記の条約及び勧告を、別紙の報告書により国会ヘ提出することについて、閣議決定がなされた。
 (ILO総会で採択された条約及び勧告は、ILO憲章の規定により、総会終了後原則として1年以内に国会に提出すべきこととされている。)

1 条約
民間職業事業所に関する条約(第181号)
(民間職業事薪の運営を認めること及びそのサービスを利用する労働者を保護すること等について規定)

2  勧告
民間職業事業所に関する勧告(第188号)
 (1の条約を補足するための勧告)

千九百九十七年の国際労働機関第八十五回総会において採択された条約及び勧告に関する報告書

 千九百九十七年六月三日から同年六月十九日までジュネーヴにおいて我が国の代表の参加の下に開催された国際労働機関第八十五回総会は、次に掲げる条約及び勧告(別冊仮訳文添付)を採択した。よって、国際労働機関憲章第十九条の規定に基づき、この報告書を提出する。

一  条約
  民間職業事業所に関する条約(第百八十一号)
  この条約は、民間職業事業所の運営を認めること及びそのサービスを利用する労働者を保護すること等について規定したものである。
 この条約の趣旨とするところはおおむね妥当であるが、その具体的内容については、なお問題点もあり、更に検討を加えることといたしたい。

二  勧告
 民間職業事業所に関する勧告(第百八十八号)
 この勧告は、千九百九十七年の民間職業事業所条約(第百八十一号)を補足するために採択されたものであって、同条約に規定する事項に関連する細目的な事項等について規定したものである。
  この勧告の趣旨とするところはおおむね妥当であるが、その具休的内容については、なお問題点もあり、更に検討を加えることといたしたい。

平成十年六月

千九百九十七年の国際労働機関第八十五回総会において採択された条約及び勧告(仮訳文)
 
 

民間職業事業所に関する条約(第百八十一号)
民間職業事業所に関する勧告(第百八十八号)



民間職業事業所に関する条約(第百八十一号)

国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーブに招集されて、千九百九十七年六月三日にその第八十五回会期として会合し、千九百四十九年の有料職業紹介所条約(改正)の規定に留意し、
労働市場の機能における柔軟性が重要であることを認識し、
千九百九十四年のその第八十一回会期において、国際労働機関が千九百四十九年の有料職業紹介所条約(改正)を改正すべきであるとの見解を有したことを想起し、
同条約が採択された時に一般的であった状況と比較して、民間職業事業所が運営される環境が大きく異なっていることを考慮し、
適切に機能する労働市場において民間職業事業所が果たし得る役割を認識し、
労働者を不当な取扱いから保護することの必要性を想起し、
適切に機能する労使関係制度の必要な構成要素として結社の自由の権利を保障すること並びに団体交渉及
び社会的対話を促進することの必要性を認識し、
千九百四十八年の職業安定組織条約の規定に留意し、
千九百三十年ノ強制労働条約、千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約、千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約、千九百五十八年の差別(雇用及び職業)条約、千九百六十四年の雇用政策条約、千九百七十三年の最低年齢条約及び千九百八十八年の雇用の促進及び失業に対する保護条約の規定並びに千九百四十九年の移民労働者条約(改正)及び千九百七十五年の移民労働者(補足規定)条約における募集及び職業紹介に関係する規定を想起し、
その第八十五回会期の議事日程の第四議題である千九百四十九年の有料職業紹介所条約(改正)の改正に関する提案の採択を決定し、
その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
次の条約(引用に際しては、千九百九十七年の民間職業事業所条約と称することができる。)を千九百九十七年六月十九日に採択する。

 第一条

 1 この条約の適用上、「民間職業事業所」とは、公の機関から独立した自然人又は法人であって、次の一又は二以上の労働市場におけるサービスを提供するものをいう。

(a)求人と求職を結び付けるサービスであって、民間職業事業所がそのサービスから生ずる雇用関係の当事者とならないもの

(b)労働者に対して業務を与え及びこれらの業務の遂行を監督する自然人又は法人である第三者(以下「使用者企業」という。)の使用に供することを目的として労働者を雇用することから成るサービス

(c)最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で権限のある機関によって決定されるその他の求職に関連するサービス(例えば、情報の提供)であって、特定の求人と求職を結び付けることを目的としないもの

 2 この条約の適用上、「労働者」とは、求職者を含む。

 3  この条約の適用上、「労働者の個人の情報の処理」とは、特定の又は特定し得る労働者に関する情報の収集、保管、組合せ、伝達その他の取扱いをいう。

 第二条

 1 この条約は、すべての民間職業事業所について適用する。

 2 この条約は、すべての種類の労働者及び経済活動のすべての部門について適用する。ただし、船員の募集及び職業紹介については適用しない。

 3 この条約の一つの目的は、その規定の枠組みの中において、民間職業事業所の運営を認め及びそのサービスを利用する労働者を保護することにある。

 4 加盟国は、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、次のことを行うことができる。

(a) 特定の状況の下で、特定の種類の労働者又は特定の部門の経済活動について民間職業事業所が前条1に規定するトン又は二以上のサービスを提供することを禁止すること。

(b) 特定の状況の下で、この条約又はその一部の規定の適用範囲から特定の部門の経済活動又はその一部に従事する労働者を除外すること。ただし、関係のある労働者に対して十分な保護が確保されている場合に限る.

 5 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づく報告において、4の規定に
基づき自国が行っている禁止又は除外について明記し及びその理由を示す。

 第三条

 1 民間職業事業所の法的地位については、国内法及び国内慣行に従い並びに最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で決定する。

 2  加盟国は、許可又は認可に係る制度に従い民間職業事業所の運営を規律する条件を決定する。ただし、それらの条件が適当な国内法及び国内慣行によって別途規制され又は決定されている場合は、この限りでない。

 第四条

 第一条に規定するサービスを提供する民間職業事業所によって募集された労働者が結社の自由の権利及び団体交渉権を否定されないことを確保するための措置をとる。

 第五条

 1 加盟国は、雇用及び特定の職業を得るための機会及び待遇の均等を促進するため、民間職業事業所が人柱、皮膚の色、性、宗教、政治的意見、国民的系統、社会的出身又は国内法及び国内慣行の対象とされて
いる他の形態(例えば、年齢又は障害)による差別なしに労働者を取り扱うことを確保する。

 2 1の規定は、民間職業事業所が求職活動において最も不利益な立場にある労働者を支援するための特別のサービス又は対象が特定された計画を提供することを妨げるような方法で実施してはならない。

 第六条

 民間職業事業所による労働者の個人の情報の処理においては、次のことを行う。

(a)国内法及び国内慣行に従い、当該情報を保護し及び労働者のプライバシーの尊重を確保する方法で実施すること。

(b)関係のある労働者の資格及び職業経験に関述する事項その他の直接に関連する情報に限定すること。

 第七条

 1 民間職業事業所は、直接又は間接に、全部又は一部について、労働者に対しいかなる手数料又は経費も徴収してはならない。

 2 権限のある機関は、関係のある労働者の利益のために、最も代表的な使用者団休及び労働者団体と協議した上で、特定の種類の労働者及び民間職業事業所が提供する特定の種類のサービスについて1の規定の
例外を認めることができる。

 3 2の規定に基づいて例外を認めた加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づく報告において、その例外についての情報を提供し及びその理由を示す。

 第八条

 1 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、その管轄内で及び、適当な場合には、他の加盟国と協力して、民間職業事業所が自国の領域内で募集又は紹介した移民労働者に対し十分な保護を与えるため及び当該移民労働者の不当な取扱いを防止するため必要かつ適当なすべての措置をとる。これらの措置は、制裁を規定する法令(詐欺行為又は不当な取扱いを行う民間職業事業所の禁止を含む。)を含む.

 2 関係のある加盟国は、一国の労働者が他の国で労働するために募集される場合には、募集、職業紹介及び雇用における不当な取扱い及び詐欺行為を防止するために二国間協定を締結することを考慮する。

 第九条

 加盟国は、民間職業事業所が児童労働の使用及び供給を行わないことを確保するための措置をとる。
 第十条

 権限のある機関は、民間職業事業所の活動に関する苦情、申し立てられた不当な取扱い及び詐欺行為を調査するため、適当な場合には最も代表的な使用者団体及び労働者団体の関係する適当な制度及び手続が存在することを確保する。

 第十一条

 加盟国は、第一条1(b)に規定する民間職業事業所に雇用される労働者に対し、次の事項について十分な保護が与えられることを確保するために、国内法及び国内慣行に従い必要な措置をとる。
(a)結社の自由
(b)団体交渉
(c)最低賃金
(b)労働時間その他の労働条件
(e)法令上の社会給付休業
(f)訓練を受ける機会
(g)職業上の安全及び健康
(h)職業上の災害又は疾病の場合における補償
(i)支払不能の場合における補償及び労働者債権の保護
(j)母性保護及び母性給付並びに親としての保護及び親に対する給付

 第十二条

 加盟国は、国内法及び国内慣行に従い、次の事項について、第一条1(b)に規定するサービスを提供する民間職業事業所及び使用者企業のそれぞれの責任を決定し及び割り当てる。
(a)団体交渉
(b)最低賃金
(c)労働時間その他の労働条件
(d)法令上の社会保障給付
(e)訓練を受ける機会
(f)職業上の安全及び健康の分野における保護
(g)職業上の災害又は疾病の場合における補償
(b)支払不能の場合における補償及び労働者債権の保護
(i)母性保護及び母性給付並びに親としての保護及び親に対する給付

 第十三条

 1 加盟国は、国内法及び国内慣行に従い並びに最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、公共職業安定組織と民間職業事業所との間の協力を促進するための条件を策定し、設定し及び定期的に検討する。
 2 1に規定する条件は、公の機関が次の事項について最終的な権限を有するとの原則に基づく。
(a)労働市場に関する政策の策定
(b)(a)の政策を実施するために確保される公の資金の利用又は管理
 3 民間職業事業所は、権限のある機関が決定する問隔で、次のことを目的として、権限のある機関が求める情報をその秘密保持に十分な考慮を払って提供する。

(a)権限のある機関が国内事情及び国内慣行に従い民間職業事業所の組織及び活動について把握することができるようにすること。
(b)統計上の目的のために使用すること。
 4 権限のある機関は、3の情報を取りまとめ及び定期的に公に利用可能なものとする。

 第十四条

 1 この条約は、法令又は国内慣行に適合する他の手段(例えば、判決、仲裁裁定又は労働協約)により適用する。
 2 この条約の規定の実施の監督は、労働監督機関その他の権限のある公の機関によって確保する。
 3 この条約の違反については、適正な是正措置(適当な場合には制裁を含む。)を規定し及び効果的に適用する。

 第十五条

 この条約は、民間職業事業所が募集し、紹介し又は雇用する労働者について適用のある他の国際労働条約の一層有利な規定に影響を及ぼすものではない。

 第十六条

 この条約は、千九百四十九年の有料職業紹介所条約(改正)及び千九百三十三年の有料職業紹介所条約を改正する。

 第十七条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

 第十八条

 1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
 2 この条約は、この加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
 3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二筒月で効力を生ずる。

 第十九条

 1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
 2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

 第二十条

 1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通報する。
 2 事務局長は、二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

 第二十一条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

 第二十一条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

 第二十三条

 1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a)加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十九条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
(b)加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
 2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

 第二十四条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 以上は、国際労働機関の総会が、ジュネーブで開催されて千九百九十七年六月月十九日に閉会を宣言されたその第八十五回会期において、正当に採択した条約の真正な本文である。

 以上の証拠として、我々は、千九百九十七年六月二十日に署名した。

総会議長
    オルガ・ケルトショヴァー
国際労働事務局長
 ミッシェル・アンセンヌ
 


民間職業事業所に関する勧告(第百八十八号)

 国際労働機関の総会は、理事会によりジュネーブに招集されて、千九百九十七年六月三日にその第八十五回会期として会合し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である千九百四十九年の有料職業紹介所条約(改正)の改正に関する提案の採択を決定し、
 その提案が千九百九十七年の民間職業事業所条約を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百九十七年の民問職業事業所勧告と称することができる。)を千九百九十七年六月十九日に採択する。

 Ι 一般規定

 1 この勧告の規定は、千九百九十L年の民間職業事業所条約(以下「条約」という。)の規定を補足するものであり、条約の規定と併せて適用されるべきである。

 2(1)条約を実施するための規定の策定及び実施に当たっては、できる限り、三者構成の機関又は使用者団体及び労働者団体が関与すべきである。

  (2)民間職業事業所に適用される国内法令は、適当な場合には、技術的基準、指針、倫理的規範、自主規制の仕組みその他の国内慣行に適合する手段により補足されるべきである。

 3 加盟国は、適当かつ実行可能な場合には、労働市場の機能に対する民間職業事業所の貢献に関する情報及び経験を分かち合い、これについて国際労働事務局に通報すべきである。

 U 労働者の保護

 4 加盟国は、民間職業事業所による非倫理的な行為を防止し及び排除するための必要かつ適当なすべての措置をとるべきである。これらの措置には、制裁(非倫理的な行為を行う民間職業事業所の禁止を含む。)を定める法令を含めることができる。

 5 条約第一条1(b)に定義する民間職業事業所に雇用される労働者は、適当な場合には、雇用条件を明記した書面による契約を有すべきである。これらの労働者は、少なくとも、職務を実際に開始する前に、雇用条件を知らされるべきである。

 6 民間職業事業所は、使用者企業に対し、当該使用者企業のストライキ中の労働者を代替するために労働者を使用可能にすべきではない。

 7 権限のある機関は、不公正な宣伝活動及び誤解のおそれのある広告(存在しない仕事に関する広告を含む。)の防止に努めるべきである。

 8 民間職業事業所は、次のことを行うべきである。

 (a)ある職務において容認し難い危険が伴う場合又は何らかの種類の不当な取扱い若しくは差別的な待遇がなされる可能性がある場合において、そのような事情を知りながら当該職務について労働者を募集、紹介又は雇用すべきではない。

 (b)移民労働者に対し、可能な限りこれらの者の母国語で又はこれらの者が精通している言語で、紹介する職の性質及び適用される雇用条件を知らせるべきである。

 9 民間職業事業所が人種、皮膚の色、性、年齢、宗教、政治的意見、国民的系統、社会的出身、種族的出身、障害、婚姻若しくは家族に関する状況、性的志向、労働者団体への参加等を理由として直接的若しくは間接的に差別をもたらすような方法で欠員若しくは求人の通知を作成し及び公表することを禁止し又は何らかの方法によって防止すべきである。

 10 民間職業事業所は、アファーマティブ・アクション計画を通じて雇用における均等を促進することを奨励されるべきである。

 11 民間職業事業所は、選考の対象となっている又はなり得る求職者の職務への適性を判断するために必要でない個人の情報を書類又は登録簿に記録することを禁止されるべきである。

 12(1)民間職業事業所は、労働者の個人の情報がその収集における目的によって正当化される限りにおいて又は労働者が職を与えられる潜在的な候補者として引き続き登録されることを希望する限りにおいて、労働者の個人の情報を保管すべきである。
 (2)労働者が自動化された若しくは電子化されたシステムにより処理された自己に関するすべての個人の情報又は書面に保存されている自己に関するすべての個人の情報を見ることができるようにすることを確保するための措置をとるべきである。これらの措置には、当該情報の写しを入手し及び調べることについての労働者の権利並びに不正確な又は不完全な情報を削除し又は訂正するよう要求する権利を含むべきである。
 (3) 民間職業事業所は、特定の職業に必要とされる事項に直接関連を有しかつ関係のある労働者による明示的な許可を有する場合を除くほか、労働者の健康状態に関する情報を要求し、維持し又は使用すべきではなく、また、職務に対する労働者の適格性を決定するためにそのような情報を使用すべきではない。

 13 民間職業事業所及び権限のある機関は、適切、公正かつ効率的な選考方法の利用を促進するための措置をとるべきである。

 14 民間職業事業所は、適当な資格を有し及び適切な訓練を受けた職員を有すべきである。

 15 雇用契約の終了に関して国内法に定める権利及び義務に十分に留意して、条約第一条1(b)に規定するサービスを提供する民間職業事業所は、次のことを行うべきではない。

(a)使用者企業に派遣されている民間職業事業所の被用者を当該使用者企業が雇川することを妨げること。
(b)被用者の職業上の移動を制限すること。
(c)他の企業において雇用を受け入れた被用者に対し制裁を課すること。

 V 公共職業安定組織と民間職業事業所との関係

 16 労働市場を組織することに関する国内政策の実施に関連して公共職業安定組織と民間職業事業所とが協力することは、奨励されるべきである。このため、公共職業安定組織及び民間職業事業所の代表並びに最も代表的な使用者団体及び労働者団体の代表を含む機関を設立することができる。

 17 公共職業安定組織と民間職業事業所との間の協力を促進するための措置には、次のものを含めることができる。
(a)労働市場の機能の透明性を高めるための情報の共有及び共通の専門用語の使用
(b)欠員の通知の交換
(c)訓練ページの分野における共同事業計画の実施
(d)特定の活動(例えば、長期的な失業者の統合のための計画)の実施に関する公共職業安定組織と民間職業事業所との間の取決めの締結
(e)職員の訓練
(f)職業上の慣行を改善するための定期的な協議

 以上は、国際労働機関の総会が、ジュネーブで開催されて千九百九十七年六月十九日に閉会を宣言されたその第八十五回会期において、正当に採択した勧告の真正な本文である。
 以上の証拠として、我々は、千九百九十七年六月二十日に署名した。

総会議長
    オルガ・ケルトショヴァー
国際労働事務局長
 ミッシェル・アンセンヌ


季刊労働法「労働者派遣事業と有料職業紹介事業の自由化論批判 −一九九七年ILO「民間職業紹介所条約」をてがかりに−」
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