渡辺和恵弁護士「派遣の正社員への代替を認める派遣法改悪を許さない」  
民主法律協会派遣労働研究会 弁護士 渡辺和恵

派遣の正社員への代替を認める派遣法改悪を許さない

1998年11月30日 民主法律時報 No.318

 「私の職場では薬品のセールスを退職した高齢者に別会社を作って仕事をさせています。渡辺さんのお話を聞いて、これからは高齢者だけでなく、どんどんやらされるのではないかと心配しています。」武田薬品の女性参加者。

 去る11月20日、大阪春闘共闘委員会と大阪労連主催の緊急派遣法学習会(国労会館)での正社員の発言です。

 政府は去る10月6日、派遣対象業務の制限を取っ払い、建設、港湾、警備業務以外は原則自由(いわゆるネガティブリスト方式)とする法案を国会に提出しました。労働者派遣法新設から10年余り、派遣対象業務の制限のチェックが無いままに、違法派遣が蔓延し、いよいよ違法を合法化する法律が上程されたのです。新設の際の国会の付帯決議には「正社員の代替としてはならない」とあります。しかし、首切り自由の使い勝手のよい労働者とされてしまった派遣労働者の対象業務制限は、使用者にとって邪魔だったのです。

 日経連の「新時代の日本的経営」にある通り、正社員の代替としての派遣労働の導入を使用者側は狙っています。

 先の質問に対し、私はこうお答えしました。「60才以上の高齢者については既に制限解除の法律が出来ていますから、セールスの派遣は違法ではないんですよね。おっしゃる通り、改悪案が通れば、総派遣化になります。」

 私たち派遣労働研究会は、派遣法新設に反対して発足し、施行後は、派遣労働者に労働基準法など労働者保護法を適用させるための活動をしてきました。しかし、使用と雇用を分離し、使う側に責任をとらせない三面構造に阻まれてきました。そこで、派遣労働の少なくとも登録型(仕事先のある時だけ雇用契約有り)を直ちに廃止すること、正社員の代替を許さないため業務制限撤廃を阻止することとの結論に達しました。ですから改悪案の上程に非常な危機感を持っています。

 派遣契約期間1年の法定も沢山の例外があり、1年以上派遣された派遣労働者の直用も法律上の義務にはなっておらず、派遣労働者の保護とはなりません。

 会場からは大学新卒の娘さんに派遣しか就職の道がなく、人間の誇りさえ奪う労働者の使われ方に怒りの心中を話された年輩の女性労働者、生徒を新卒で送り出した派遣会社が、今裁判で責任を問われている会社だと知ってびっくりしたとの高校の先生の発言など、身近なところで派遣法改悪のこわさを感じるとの発言が相次ぎ、緊迫した学習会になりました。早急に反対行動を広げることの必要性を痛感しています。


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