第136回国会(1996.6)で労働者派遣法の改正が成立しました。
 私の参考人としての発言は、具体的には取り入れられませんでしたが、附帯決議には、一部反映しています。
 以下は、国会・労働省の公式発表による今回の改正の要点と衆参両院での附帯決議です。

 労働者派遣法の改正の要点


 1 派遣労働者の就業条件の確保等


(1)派遣契約の当事者は、派遣契約の締結に際し、その中途解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項を定めなければならないものとする。
(2)派遣労働者の苦情処理に関する事項を、派遣契約等の記載事項とする。
(3)労働大臣は、派遣元事業主および派遣先が講ずべき措置に関し、必要な指針を公表する。

 2 派遣先における派遣就業の適正化のための措置の充実

(1)派遣先は、適用対象業務以外の業務について派遣就業を行わせてはならないことおよび派遣元事業主(許可・届出事業主)以外の者から労働者派遣を受け入れてはならないことを明確化する。
(2)(1)の違反を是正・改善するための措置として、勧告・公表等の措置を講ずる。

 3 手続の簡素化等

(1) 更新を受ける場合における一般労働者派遣事業の許可の有効期間を、三年から五年に延長する。
(2) 派遣元事業主が事業対象業務の種類を減ずる変更を行う場合等の手続を簡素化する。

 育児・介護休業法案等の改正

 育児・介護休業取得者の代替要員に係る労働者派遣事業の特例

(1)育児・介護休業をする労働者の業務を処理するために行う労働者派遣事業は、港湾運送業務、建設業務および政令で定める業務(警備業務)以外の業務について、行うことができるものとする。
(2)(1)の場合の派遣期間は最長一年間とする。

 施行期日等

 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 なお、適用対象業務の範囲の拡大として、平成七年一二月一八日の中央職業安定審議会の建議において新たに適用対象業務とすることが適当とされた一二の業務を、政令改正により、適用対象業務に追加することが予定されている。


 労働者派遣法(6月19日公布)の改正内容

  官報第1916号(1996年6月19日付)2頁より。条文は、9頁以下。

〇労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の警備等に関する法律等の一部を改正する法律(法律第九〇号)(労働省)

一 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正関係

 1 労働者派遣契約の当事者は、当該労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項を定めなければならないこととした。(第二六条第一項関係)

 2 労働者派遣契約の当事者は、当該労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者から苦情の申出を受けた場合における当該申出を受けた苦情の処理に関する事項を定めなければならないものとすること。(第二六条第一項関係)

 3 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項を、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の記載事項とすることとした。(第三七条第一項及び第四二条第一項関係)

 4 労働大臣は、派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとすることとした。(第四七条の二関係)

 5 労働者派遣事業を行う事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その指揮命令の下に当該労働者派遣に係る派遣労働者を適用対象業務以外の業務に従事させてはならないこととした。(第四条第四項関係)

 6 適用対象業務について労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣元事業主以外の労働者派遣事業を行う事業主から、労働者派遣の役務の提供を受けてはならないこととした。(第二四条の二関係)

 7 労働大臣は、派遣先が5に違反している場合において、5に違反している派遣就業を継続させることが著しく不適当であると認めるときは、当該派遣先に労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該派遣就業に係る労働者派遣の停止を命ずることができることとした。(第四九条第二項関係)

 8 労働大臣は、5又は6に違反している者に対し、指導又は助言をした場合において、その者がなお5又は6に違反しており、又は違反するおそれがあると認めるときは、その者に対し、不適正な派遣就業を是正するために必要な措置又は当該派遣就業が行われることを防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができることとし、これに従わなかったときは、その旨を公表することができることとした。(第四九条の二関係)

 9 許可の有効期間の更新を受けた場合における 一般労働者派遣事業の許可の有効期間を、三年から五年に延長することとした。(第一〇条第四項関係)

 10 一般派遣元事業主が事業対象業務の種類の変更をしようとするときであってその種類を減ずるものについては、労働大臣の許可を受けることを要しないこととし、特定派遣元事業主が事業対象業務の種類の変更をしようとするときであってその種類を減ずるものについては、あらかじめ労働大臣に届出をすることを要しないこととした。(第一一条第一項及び第三項並びに第一九条第一項及び第二項関係)

 11 氏名等に変更があった一般派遣元事業主又は特定派遣元事業主が三以上の事業所を設けて労働者派遣事業を行っている場合において、一の事業所に関して当該事項の変更を届け出たときは、当該事業所以外の事業所に関しては、労働大臣に届出をすることを要しないこととした。(第一二条第一項及び第一九条第二項関係)



二 育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正関係



 1 育児休業等を取得する労働者の業務について行われる労働者派遣事業は、港湾運送業務、建設業務その他その業務の実施の適正を確するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務(警備業務)以外の業務につき、行うことができることとした。(第四〇条の二関係)

 2 1の場合において、派遣元事業主は、派遣先に対し、育児休業等取得者が育児休業等をする期間(その期間が一年を超えるときは、一年)を超える期間継続して労働者派遣を行ってはならないこととした。(第四〇条の三第二項関係)

 3 1の場合において、派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の締結に際し、労働者派遣に係る育児休業等取得者の氏名等に関する事項を定めなければならないこととした。(第四〇条の三第一項関係)

 4 1の場合において、労働者派遣に係る育児休業等取得者の氏名等に関する事項を、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の記載事項とするとした。(第四〇条の二関係)



三 育児休業等に関する法律の一部を改正する法律の一部改正関係



 育児・介護休業(これらに準ずる休業を含む。)を取得する労働者の業務について行われる労働者派遣事業は、港湾運送業務、建設業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務(警備業務)以外の業務につき、行うことができることとした。(第四六条の二関係)


四 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとした。


 衆議院労働委員会附帯決議


 経済社会情勢の変化の中で、労働者派遣事業が適正に運営され、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進が十分に図られるよう、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

一 適用対象業務の見直しに当たっては、わが国の雇用慣行との調和に十分留意し、常用雇用労働者の代替を促すこととならないよう、また、専門性の確保等に十分に配慮し、中央職業安定審議会の意見を尊重して、個々の対象業務の内容及びその範囲を具体的に定めること。

二 病院における介護労働への派遣制度の適用に当たっては、医療福祉事業の専門性やチームワークの要請を踏まえ、適切な配置が行われるよう指導すること。

三 育児、介護休業に関する特例の対象が、育児、介護休業取得者の代替要員の派遣に限られることを確保するため、特例派遣の対象となる休業取得者の氏名、業務及び休業を取得する期間を正確に特定し、派遣労働者の従事する業務内容がそれに対応することとなるよう指導すること。

四 育児休業等に関する特例の運用に当たっては、育児休業取得者が原職又は原職相当職に復帰することについて配慮されるよう指導すること。

五 派遣先における実際の就業条件が、派遣元事業主が示した就業条件と相違することのないよう、派遣先に対する指導を効果的に行う等適切な措置を講ずること。

六 派遣元事業主及び派遣先に対し、労働者派遣契約に、労働者派遣契約の中途解除に当たって講ずる損害賠償に関する措置等派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置が適切に記載されるよう指導すること。

七 派遣労働者の苦情処理について専門的な相談援助を行う団体の取組を促進するとともに、行政機関による苦情相談機能の充実を図るため、関係行政機関の適切な連携を図ること。

八 派遣先が無許可・無届出の労働者派遣事業主から労働者派遣を受け入れ、又は派遣労働者を適用対象業務以外の業務に就かせることのないよう適切な措置を講ずること。

九 請負等を偽装した違法な労働者派遣事業の解消のため、派遣と請負の区分について具体的な基準を作成し、より一層効果的な指導・監督に努めること。

十 労働者派遣事業の適正な運営を確保するため、派遣元事業主及び派遣先の自主的な努力の促進、労働者派遣事業適正運営協力員制度の活用を図るとともに、行政体制の整備・充実を図ること。

十一 社会保険・労働保険の適用促進等派遣労働者の福祉の一層の増進を図るため、派遣元事業主等に対する関係制度の周知徹底等適切な措置を講ずること。


 参議院労働委員会附帯決議


 経済社会情勢の変化の中で、労働者派遣事業が適正に運営され、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進が十分に図られるよう、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

一 対象業務の見直しに当たっては、我が国の雇用慣行との調和に十分留意し、常用雇用労働者の代替を促すこととならないよう、また、専門性等を確保した業務内容となるよう十分に配慮し、中央職業安定審議会の意見を尊重して、個々の対象業務の内容及びその範囲を具体的に定めること。

二 病院における介護労働への派遣制度の適用に当たっては、医療福祉事業の専門性やチームワークの要請を踏まえ、看護管理の下に置くなど適切な配置が行われるよう指導すること。

三 育児休業等に関する特例の運用に当たっては、休業取得者の代替要員の派遣に限られることを確保するとともに、休業取得者が原則として原職又は原職相当職に復帰することについて配慮されるよう指導すること。

四 派遣先における実際の就業条件が、派遣元事業主が示した就業条件と相違することのないよう、適切な措置を講ずること。

五 派遣元事業主及び派遣先に対し、労働者派遣契約に、労働者派遣契約の中途解除に当たって講ずる損害賠償に関する措置等派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置が適切に記載されるよう指導すること。

六 派遣労働者の苦情処理について専門的な相談援助を行う団体の取組を促進するとともに、行政機関による苦情相談機能の充実を図るため、関係行政機関の適切な連携を図ること。

七 改正後の労働者派遣法を踏まえ、派遣先に対する指導を徹底するとともに、派遣と請負の区分について具体的な基準を作成し、請負等を偽装した違法な労働者派遣事業の解消に向けてより一層の指導・監督を行うこと。

八 労働者派遣事業の適正な運営を確保するため、派遣元事業主及び派遣先の自主的な努力の促進、労働者派遣事業適正運営協力員制度の活用を図るとともに、行政体制の整備・充実を図ること。

九 派遣労働者に係る社会保険・労働保険の適用促進に向けて、派遣元事業主等関係者への制度の周知徹底等適切な措置を講ずること。

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