(updated - July 31 1996)

労働法制改悪反対学習会講演要旨

(以下は、京都民報1996年7月29日号掲載記事より:一部修正)

       労働法制改悪反対へ学習会 脇田教授が講演

政府・財界による労働法制改悪の狙いを学び、反対運動を大きくしようと「労働法制改悪反対学習会」が十八日、中京区のラボール京都で開かれ六十人が参加しました。京都総評労働法制対策委員会の主催。

龍谷大学の脇田滋教授が講演し、政府、財界が狙う労働法制改悪により、派遣事業の業種拡大、有料職業紹介事業の自由化、裁量労働制の拡大など労働者の権利の多くが奪われ、労働法は名ばかりのものに変質させられる」と指摘しました。

 参加者からは「看護婦の二交替制が導入されようとしている。労働者全体の問題」「女性のトラツクドライバーが増えているが、生理休暇も満足に取れない状況。そこに女子の深夜業、休日・時間労働の規制緩和がやられようとしている。母性保護からも許せない」など職場の実態が報告されました。

学習会では「労働法制の全面改悪に反対し、働く権利ルールの確立をめざす」運動を提唱。九月二六日に同運動の京都連絡会結成にむけて学習、宣伝行動にとりくむことを確認しました。


規制緩和の名で奪われる労働者の諸権利

                         脇田 滋

労基法、職安法を形骸化

 政府・財界は、ここ数年、「二一世紀の日本的経営」の柱として、従来の日本的雇用に代わる、新たな雇用のあり万を提案している。そして、規制緩和の名目で、戦後の民主的労働法制を根本的に改変し、経営者に都合のよい法制度に変化させようとしている。  現在、政府・財界が進めている労働法改悪の主な内容は、「労働者派遣事業と有料職業紹介事業の自由化」、「三年ないし五年の有期(短期)契約の合法化」、「裁量労働制の拡大」、「女性保護規定の撤廃」である。これらが実現すれば、労働基準法や職業安定法の骨格が崩れ、公正な雇用、労働時間規制、女性の働く権利などが後退し、労働者の権利の多くが奪われることになる。

 五月の段階で、完全失業率は三・五%、失業者は二四〇万人、学卒者で就職できない者が二〇万人以上と、雇用状況は深刻である。公務部門も含めて、パートタイマーや派遣労働者など不安定な「非正規雇用」労働者が急速に拡大しており、約一千万人と雇用労働者の三分の一に達している。

 なかでも中高年や女性が企業内余剰人員とされ、リストラの一環として人員整理の対象となっている。出向や転籍、解雇など、企業から放り出される労働者が増えている。

 その反面、正社員には、解雇の脅威を背景に、遠隔地への異動など会社の一方的な人事権行使に抵抗できない状況が強まっている。時短のかけ声がむなしいほどに、サービス残業を含む長時間労働が解消できず、生命までを奪う過労死の増大は深刻な状況になっている。国際的に問題になったKAROSHIに気色ばんで反発してみせた労働省も、四月には大臣が過労死をなくすために日経連に協力を求めざるを得なくなっている。

非正規雇用に適した法制に

 日本は世界でも、きわだって経営者権限が強大な国であるのに、さらに労働法の規制緩和が推進されようとしている。昨年五月、日経連は、「新・日本的経営システム等研究プロジェクト報告」で、1 幹部候補となる「長期蓄積能力活用型」、2 専門分野を胆当させる「高度専門能力活用型」、3 「雇用柔軟型」に分類して、 従業員を三つの雇用グループにしていくことを提言した。
 そして、2、3には、短期の契約社員、パートタイマー、派遣労働者の「活用」が示唆されている。この構想は、単なる提案でない。すでに、に労働者派遣法が施行され、男女用機会均等法施行と同時に「コース別人事管理」が容認された。右の提案は、これらより一般的な形に拡大するのである。労働省は、審議会や諮問機関で立法構想を次々に検討し、着々と準備を進めている。

 要するに、非正規雇用を「二一世紀の日本的経営」の中心的雇用モデルとし、それに適合した、権利行使を困難にする「名ばかりの労働法」が構想されているのである。

これに対して、私たちは何をしなければならないか。

公正な雇用と権利守る闘い

 はっきりしていることは、非正規雇用の導入→正社員の存在自体の不要化→組合員数の減少・組合の弱体化→過密・長時間労働・単身赴任・過労死の増大→高齢者・女性の非正規雇用化という「悪魔のサイクル」を断ち切ることである。

 次に、ヨーロッパ諸国のように、常用雇用の保障など公正な雇用を守ること、とくに企業主の人事権を規制する立法を対置することである。根本的には、企業内での基本的人権を保障する「労働者憲章」法(イタリア、スペインなど)が必要であろう。その第一歩として全労連や日本共産党が提案している「解雇規制法」は、きわめて大きな意義を有している。

 労働者の連帯を強め、広げることが急がれる。非正規雇用労働者のほとんどが未組織である。ほぼ同等の労働をしながら、待遇が二分の一以下という格差の下で働く労働者が周囲に増えている。その格差に合理的理由はない。差別を黙視することはもはや許されない。

労働組合は、未組織労働者を「代表」するという法的・道徳的義務を負っている。団結権は、恵まれた正規雇用労働者だけに認められたものではない。日本国憲法は、社会のなかでもっとも弱い立場にある人々を代表し、その権利を擁護して闘うことを労働組合に期待して、労働基本権を保障しているのである。


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