一般労働者派遣事業許可基準

第1  法第七条第一項第一号の要件(当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと。)
 当該要件を満たすためには、法第四十八条第二項の勧告の対象とならないものであること、すなわち、当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるもの(雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合として労働省令で定める場合において行われるものを除く。)でないことが必要であるものとすること。
 「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的とする」とは、特定の者に対してのみ当該労働者派遣を行うことを目的として事業運営を行っているものであって、それ以外の者に対して労働者派遣を行うことを目的としていない場合であるものとすること。
 「労働省令で定める場合」とは、当該労働者派遣事業を行う派遣元事業主が雇用する派遣労働者のうち、10分の3以上の者が60歳以上の者(他の事業主の事業所を60歳以上の定年により退職した後雇い入れられた者に限る。)である場合であるものとすること。

第2  法第七条第一項第二号の要件(申請者が当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものであること。)
 派遣元責任者に関する判断
(1)  派遣元責任者として雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件及び手続に従って適切に選任、配置されていること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
(イ)  法第三十六条の規定により、未成年者でなく、法第六条第一号から第四号までに掲げる欠格事由のいずれにも該当しないこと。
(ロ)  則第二十九条で定める要件、手続に従って派遣元責任者の選任がなされていること。
(ハ)  住所及び居所が一定しない等生活根拠が不安定なものでないこと。
(ニ)  適正な雇用管理を行う上で支障がない健康状態であること。
(ホ)  不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること。
(へ)  公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること。
(ト)  派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと。
(チ)  次のいずれかに該当する者であること。
 成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者
 この場合において、「雇用管理の経験」とは、人事又は労務の担当者(事業主(法人の場合はその役員)、支店長、工場長その他事業所の長等労働基準法第四十一条第二号の「監督若しくは管理の地位にある者」を含む。)であったと評価できること、又は労働者派遣事業における派遣労働者若しくは登録者等の労務の担当者(法施行前のいわゆる業務処理請負業における派遣的労働者の労務の担当者を含む。)であったことをいう。
 成年に達した後の雇用管理の経験と派遣労働者としての業務の経験とを合わせた期間が3年以上の者(ただし、雇用管理の経験が1年以上ある者に限る。)
 成年に達した後の雇用管理の経験と職業経験とを合わせた期間が5年以上の者(ただし、雇用管理の経験が1年以上ある者に限る。)
 成年に達した後、職業安定行政又は労働基準行政に3年以上の経験を有する者
 成年に達した後、民営職業紹介事業の従事者として3年以上の経験を有する者
 成年に達した後、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験を有する者
(リ)  職業安定機関が行い又は職業安定局長が指定する者がその認定を受けて行う「派遣元責任者研修会」を受講(許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限る。)した者であること。
(ヌ)  外国人にあっては、原則として、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)別表第一の一及び二の表並びに別表第二のいずれかの在留資格を有する者であること。
(2)  派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること。
 派遣元事業主に関する判断
 派遣元事業主(法人の場合はその役員を含む。)が派遣労働者の福祉の増進を図ることが見込まれる等適正な雇用管理を期待し得るものであるものとすること。
(1)  当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
 労働保険、社会保険の適用等派遣労働者の福祉の増進を図ることが見込まれるものであること。
 住所及び居所が一定しない等生活根拠が不安定なものでないこと。
 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること。
 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること。
 派遣元事業主となり得る者の名義を借用して許可を得るものではないこと。
 外国人にあっては、原則として、入管法別表第一の二の表の「投資・経営」若しくは別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者、又は資格外活動の許可を受けて派遣元事業主としての活動を行う者であること。
 なお、海外に在留する派遣元事業主については、この限りではないものとすること。
教育訓練に関する判断
(1)  派遣労働者(登録者を含む。)に対する能力開発体制(適切な教育訓練計画の策定、教育訓練の施設、設備等の整備、教育訓練の実施についての責任者の配置等)が整備されているものとすること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
 派遣労働者に係る教育訓練に関する計画が適切に策定されていること。
 教育訓練を行うに適した施設、設備等が整備され、教育訓練の実施について責任者が配置される等能力開発体制の整備がなされていること。
(2)  派遣労働者に受講を義務付けた教育訓練について費用を徴収するものでないこと。

第3  法第七条第一項第三号の要件(個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。)
 個人情報管理の事業運営に関する判断
 派遣労働者(登録者を含む。)の個人情報を適正に管理するための事業運営体制が整備されていること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当し、これを内容に含む個人情報の管理規程を定めていることが必要であるものとすること。
(1)  派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員の範囲が明確にされていること。
(2)  業務上知り得た派遣労働者等に関する個人情報を業務以外の目的で使用したり、他に漏らしたりしないことについて、職員への教育が実施されていること。
(3)  派遣労働者から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含む。)の取扱いに関する事項についての規定があり、かつ当該規定について派遣労働者等への周知がなされていること。
(4)  個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する派遣元責任者等による事業所内の体制が明確にされ、苦情を迅速かつ適切に処理することとされていること。
 個人情報管理の措置に関する判断
 派遣労働者(登録者を含む。)の個人情報を適正に管理するための措置が講じられていること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
(1)  個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置が講じられていること。
(2)  個人情報の紛失、破壊、改ざんを防止するための措置が講じられていること。
(3)  派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員以外の者が派遣労働者等の個人情報にアクセスすることを防止するための措置が講じられていること。
(4)  目的に照らして必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置が講じられていること。

第4  法第七条第一項第四号の要件(第2及び第3の他、申請者が当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること。)
 財産的基礎に関する判断(事業主(法人又は個人)単位で判断)
(1)  資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が1,000万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(ことを予定している。)事業所の数を乗じた額とするものとすること。
 労働省令により提出することとなる貸借対照表又は一般労働者派遣事業計画書(様式第三号) の「6 資産等の状況」欄により確認すること。
 「繰延資産」とは、商法第二百八十六条から第二百八十七条までに規定する創立費等をいい、「営業権」とは、無形固定資産の一つである商法第二百八十五条の七の暖簾をいうこと。
 上記により算定される基準資産額が増加する旨の申し立てがあったときは、1)市場性のある資産の再販売価格の評価額が、基礎価額を上回る旨の証明があった場合(例えば、固定資産税の評価額証明書等による。)、2)公認会計士又は監査法人による監査証明を受けた中間決算による場合、3)増資、贈与、債務免除等があったことが証明された場合に限り、当該増加後の額を基準資産額とすること。
(2)  (1)の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
(3)  事業資金として自己名義の現金・預金の額が800万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。
 労働省令で定めることとなる貸借対照表又は一般労働者派遣事業計画書(様式第三号)の「6 資産等」欄により確認すること。
 自己名義の現金・預金の額が増加する旨の申し立てのあったときは、提出された預金残高証明書により普通預金、定期預金等の残高を確認できた場合(複数の預金残高証明書を用いる場合は、 同一日付のものに限る。)に限り、当該増加後の額を自己名義の現金・預金の額とすること。
 なお、職業安定法第四十五条に規定する労働大臣の許可を受け、労働者供給事業を行う労働組合等から供給される労働者を対象として、一般労働者派遣事業を行うことを予定する場合については、(1)において「1,000万円」を「500万円」と、(3)において「800万円」を「400万円」と読み替えて適用するものとすること。
 組織的基礎に関する判断
 一般労働者派遣事業に係る指揮命令の系統が明確であり、登録者数に応じた適当な数の職員が配置される等組織体制が整備されていること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
(1)  一般労働者派遣事業に係る組織における指揮命令の系統が明確であり、指揮命令に混乱の生ずるようなものではないこと。
(2)  登録制を採用している場合にあっては、登録者数(1年を超える期間にわたり雇用されたことのない者を除く。)300人当たり1人以上の登録者に係る業務に従事する職員が配置されていること。当該職員は、派遣元責任者と兼任であっても差し支えないものとすること。
 事業所に関する判断
 事業所について、事業に使用し得る面積が20m2以上あるほか、その位置、設備等からみて、一般労働者派遣事業を行うのに適切であること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
(1)  風俗営業等の規正及び業務の適正化等に関する法律で規制する風俗営業や性風俗特殊営業が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと。
(2)  事業に使用し得る面積がおおむね20m2以上あること。
 適正な事業運営に関する判断
 一般労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用しないこと、登録に際しいかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収しないこと等法の趣旨に沿った適切な事業運営を行うものであること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
(1)  労働者派遣事業において事業停止命令を受けた者が、当該停止期間中に、許可を受けようとするものではないこと。
(2)  法人にあっては、その役員が、個人事業主として労働者派遣事業について事業停止命令を受け、当該停止期間を経過しない者ではないこと。
(3)  一般労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用するものではないこと。
 許可申請関係書類として提出された定款又は寄付行為及び登記簿の謄本については、その目的の中に「一般労働者派遣事業を行う」旨の記載があることが望ましいが、当該事業主の行う事業の目的中の他の項目において一般労働者派遣事業を行うと解釈される場合においては、一般労働者派遣事業を行う旨の明示的な記載は要しないものであること。
 なお、定款又は寄附行為及び登記簿の謄本の目的の中に法第四条第一項各号に該当する業務について労働者派遣事業を行う旨の記載がある場合については、そのままでは許可ができないものであるので留意すること。
(4)  登録制度を採用している場合において、登録に際し、いかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収するものではないこと。
(5)  自己の名義をもって、他人に一般労働者派遣事業を行わせるために、許可を得ようとするものではないこと。
(6)  法第二十五条の規定の趣旨にかんがみ、人事労務管理業務のうち、派遣先における団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務について労働者派遣を行おうとする事業に対しては、労働者派遣事業の許可をしないこととするものとすること。

第5  民営職業紹介事業との兼業する場合の許可の要件
 組織の区分に関する判断
 派遣元責任者と紹介責任者が同一の者ではないこと、両事業に直接たずさわる職員が両事業の業務を兼任するものではないこと等組織が明確に区分されていること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
(1)  派遣元責任者と紹介責任者が同一の者ではないこと。
(2)  両事業に係る指揮命令系統が明確に区分され、両事業に係る直接担当職員が両事業の業務を兼任するものではないこと。
 事業運営の区分に関する判断
 派遣労働者に係る個人情報と求職者に係る個人情報が別個に作成され別個に管理されること等事業運営につき明確な区分がなされていること。
 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要であるものとすること。
(1)  労働者の希望に基づき個別の申込みがある場合を除き、同一の者について労働者派遣に係る登録と求職の申込みの受付を重複して行わず、かつ、相互に入れ換えないこと。
(2)  派遣の依頼者又は求人者の希望に基づき個別の申込みがある場合を除き、派遣の依頼と求人の申込みを重複して行わず、かつ、相互に入れ換えないこと。
(3)  派遣労働者に係る個人情報と求職者に係る個人情報が別個に作成され別個に管理されること。
(4)  派遣先に係る情報と求人者に係る情報が別個に管理されること。
(5)  労働者派遣の登録のみをしている派遣労働者に対して職業紹介を行わないこと、かつ、求職申込みのみをしている求職者について労働者派遣を行わないこと。
(6)  派遣の依頼のみを行っている者に対して職業紹介を行わないこと、かつ、求人申込みのみをしている求人者に対して労働者派遣を行わないこと。
(7)  求職者を職業紹介する手段として労働者派遣をするものではないこと(4の場合は除く。)。
 労働者派遣事業を行う事業所が民営職業紹介事業を行う場合の経過措置
 過去3年間労働者派遣法に違反する行為を行うことなく労働者派遣事業を行ってきた事業所が、平成11年12月1日以降民営職業紹介事業を兼業する場合については、平成16年12月1日までの間は1の要件を満たしていなくとも差し支えないこと。
 職業紹介を予定している労働者派遣を行う場合の取扱い
 派遣就業終了後に派遣先に職業紹介することを予定してする労働者派遣(以下「紹介予定派遣」という。)を行う場合には、1及び2に加え、次のいずれにも該当していること。ただし、1については、派遣元責任者及び紹介責任者並びに両事業に係る直接担当職員については、紹介予定派遣に係る範囲において兼任しても差し支えないこと。
(1)  紹介予定派遣の対象者としての登録及び雇入れはあくまでも労働者の申出・同意によることとし、派遣元事業主は紹介予定派遣の対象として登録し、及び雇い入れようとするときは、あらかじめその旨を当該労働者に明示すること(既に労働者派遣の登録を行い、若しくは派遣労働者として雇用され、又は求職の申込みをしている者を紹介予定派遣の対象とする場合も同様の取扱いとする)。
 また、紹介予定派遣においては、派遣就業終了時に改めて派遣先及び派遣労働者の求人・求職の意思等を確認して職業紹介が行われるものであり、当該意思等のいかんによっては職業紹介が行われないこともあることを派遣労働者及び派遣先に明示すること。
(2)  派遣就業終了時に、派遣先及び派遣労働者に求人・求職の意思及び求人・求職条件を確認し、その上で職業紹介を行うこと。
(3)  紹介予定派遣の各段階に応じ、派遣元事業所及び職業紹介事業所としてそれぞれ必要な個人情報保護措置を講じること。
(4)  派遣就業終了後に派遣先が職業紹介を受けることを希望しないときは、派遣先からは派遣元事業主に対しその理由を通知するものとすること。
(5)  派遣期間の制限を免れる目的で紹介予定派遣を行うものでないものとすること。

第6  海外派遣を予定する場合の許可の要件
 第一から第三までに掲げる要件のほか、更に次の事項につき併せて判断すること。
 派遣元責任者が派遣先国の言語及び労働事情に精通するものであること。
 派遣先国の言語とは、派遣先国で一般的に通用する言語(例、英語、仏語等)を含み、必ずしも派遣先の現地語に限られないこと。
 海外派遣に際し派遣労働者に対してガイダンスを実施すること、海外の事業所との連絡体制が整備されていること等派遣労働者の海外における適正な就業のための体制が整備されていること。
 海外の事業所とは派遣先の事業所をいうこと。

注(1)  第5の4(1)から(5)までと併せて、次の事項について指導を行うものとすること。
 派遣先は、紹介予定派遣により雇い入れた労働者について試用期間を設けないよう必要な指導を行うものとすること。
 派遣就業終了後に派遣先が職業紹介を受けることを希望せず、又は職業紹介の結果派遣労働者を採用することとならなかった場合であって、当該派遣先が当該派遣労働者を特定して労働者派遣を受けることを希望した場合には、当該派遣先に対し当該派遣労働者の雇入れについて必要な指導を行うものとすること。
(2)  紹介予定派遣については、平成12年12月1日実施予定とすること。


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