ゼルダノデンセツトハイッタイナンダッタノカ


 任天堂の看板ソフトとして「スーパーマリオ」と双璧をなす「ゼルダの伝説」はファミリーコンピュータディスクシステム用ソフトの第1弾として、1986年2月21日に発売された。「スーパーマリオ」のプロデューサーでもある宮本茂氏をはじめとする任天堂の開発陣が満を持してディスクシステムのスペックを知らしめるためにリリースしたものであったから、「ゼルダの伝説」開発に注ぐエネルギーは相当なものであったのだろう。
 「ゼルダの伝説」発売当時、まず注目を集めたのは初めてのディスクシステム対応ソフトということだった。ディスクの容量を活かしたマップの広さやキャラクターの豊富さはそれまでのどのゲームと比較しても群を抜いていたし、「ふっかつのじゅもん」に依らないセーブ機能や、PSG音源ではとても表現できなかったタイトル画面の神秘的な鐘の音など、それまでのファミコンゲームとは明らかに違う新たな時代の幕開けを我々は確かに「ゼルダの伝説」から感じ取ったのである。だが、後発のディスク媒体のゲームの多くが内容的に貧弱なものばかりであったことを考えれば、その成功はやはりよく練り上げられたゲームシステムや世界観の構築に因る部分が大きかったのだろう。
 「ゼルダの伝説」の魅力は、ハード的な優位性に寄りかかることなく、地道にゲームとしての面白さを追求してソフト作りが行われた結果のゲームバランスの秀逸さにある。定められたルートをなぞるシステムから解放され圧倒的な自由度を持ちながらも、各所にちりばめられたイベントやヒントによって、決してプレイヤーを無責任に飽きさせることなく大きな流れへと引き込んでゆく。アクションRPGの最高峰とも言える「ゼルダの伝説」はリリースから十数年を経た今なお、その魅力を失っていない。
 あれから十数年間、僕は初代「ゼルダの伝説」以上のゲームにめぐりあったことはないし、この先もおそらくめぐりあうことはないだろう。まだ初代「ゼルダの伝説」をプレイしたことがない人は幸いだ。これから「ゼルダの伝説」を遊ぶ楽しみが、そして裏「ゼルダの伝説」を解く楽しみが残されているのだから。