傷の痛くない治療法 今までの傷の治し方は「傷は消毒して乾かして治す」というのが常識でしたが、 消毒薬はしみる、ガーゼをはがすときは痛みがある、といった具合に治療自体は つらいものでした。しかし最近になって、痛みが少なくて傷跡もきれいに治るという 新しい治療法が開発されてきました。 最近の皮膚再生メカニズムの研究により、傷口から出て来るぐじゅぐじゅした 液体の中には、実は傷が治るのを助けてくれる物質(細胞成長因子など)が 含まれていることがわかってきました。今までの治療はわざわざそれをガーゼで 吸い取ってしまっていたために、かえって新しい皮膚の細胞の成長を遅らせていた ことになります。 また、傷口をふさぐために生まれてくる細胞は、培養液の中にいるときと同じく 湿った環境において増殖します。したがって乾かすことは、生きた細胞をミイラ のような状態にして死滅させてしまうので、傷の治療という観点からは逆効果に なってしまいます。 そこで傷口に消毒薬をぬらずに、生理食塩水や水道水などできれいに洗浄し、 ガーゼを貼り付ける替わりに、水分を保つ作用のある高分子の素材でできた 医療用の被覆材をかぶせることで、湿潤した状態を維持する治療法が行われて きています。これは相澤病院外傷治療センター長の夏井睦医師が提唱されている方法で、 現在この治療法を取り入れている医師が増えています。 この新しい治療法では、被覆材が傷に接着してしまうことがないため、今までの ガーゼ交換のときのくっついた傷からはがす痛みが少なくなっています。 また、湿潤環境に傷が保たれることにより、傷自体のズキズキする痛みも減少します。 そのうえ、傷の治りが早いために、従来の治療法よりも傷跡が目立たずに治ります。 傷口から出てくる液があまり多いときは、漏れることもあるため、ときに不愉快に 思うことがあるかもしれませんが、治るためには必要不可欠なものなので、そのときは 心配しないで軽く拭きとってくだされば結構です。診察室へ