ボウリングとルーティン

スポーツにおけるルーティン(routine)というのをご存知の方も多いと思います。
そもそもは「
決められた一連の動作」という意味で、常に一定の行動を前もって行う
ことで、自身の心や体の状態をいつも通りに整えることを目的としています。

医療現場ではルーチンと発音していましたが、入院時に必ず行う項目をルーチン検査
とか、処置などの決まりきった手順をルーチンワークとか言って、よく使っていた
言葉です。


ラグビーの五郎丸選手がルーティンとして、プレースキック前に両手を
合わせて祈るようなポーズをすることで、いつも通りの正確なキックを導き出して
いたのは有名です。
イチロー選手もバッターボックスに立った時、
バットをぐるぐる
回したり、ユニフォームの袖をつまんだり、バットを目の前に立てたりなど、

一連の動作をいろいろと行います。

体操の内村選手は跳馬の前に両手を前に伸ばして、軸と中心を確認して
いるような動きをします。
フィギアスケートの羽生選手も演技を始める前に、まるで十字を切る
ようなポーズをとります。
これらはすべてルーティンなのです。

ルーティンを行うことで、体を普段練習しているときのようなリラックスした状態
に導き、最高のパフォーマンスを引き出そうとしているわけです。

さて、ボウリングは同じ投球動作を繰り返す再現性が必要なスポーツです。
さらに精神的な影響を最も受けやすいスポーツのひとつでもあります。

練習の時にはリズムよく一定の投球ができていたのに、いざ本番の大会になると
自分でも信じられないような低スコアになってしまうことがあります。
構えてから投球までプレー時間はわずかなのに対して、順番を待っている時間の方は
何倍も長いので、その間によけいなことを考えて調子を崩してしまうのです。
また
試合中にひとつミスをするとあわててしまい、その後はミスを連発ということも
あります。

このように失敗が失敗を呼ぶとパニック状態になり、その結果筋肉が緊張して
ゲーム中の動きがぎくしゃくとして、普段通りの投球ができなくなるのです。
全くもって困った問題です。


さあ、そこでルーティンの登場です。
ボウリングでは
リターンラックにボールを取りにいくときから、ルーティン化する
とよいとされていますので、自分なりのルーティンを考えてみました。


@ボールをラックから取り上げてタオルでオイルを拭き取る
Aエアーで手を乾かす
Bボールに中指と薬指を入れ、手のひら全体で重みを受けるように支える
C右足からアプローチに上がる
D左足→右足の順に立ち位置に足を合わせる
Eスパットとボールの着床点を結んだ線と、自分の前腕の向きを合わせる
F息を吐いて無駄な力を入れないように念じてから投げる

アプローチに上がってからはあまり時間をかけると、他の人のプレー進行に支障が
出るので、なるべく短時間で済むようにしています。
そして投球動作がスタートしたら、後はもうあれこれ考えずにボールを転がすこと
だけです。

やってはいけない事を考えるのではなく、今やらなければならない事に集中する
のが大事です。

どうしたら無心になって力みのない投球を毎回同じように繰り返せるか───
なんだか目指すところは禅の無我の境地に近いのかもしれません。

でもまあ、ルーティンを前もって行っていても、投球に失敗してしまうことも
たくさんあります。
なかなか意のままにならない、それがまたボウリングの面白さでもあるのです。


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