ピロリ菌って、なあに?

Q:ピロリなんてちょっとかわいい感じですが、ピロリ菌とはどんな菌ですか?

A:ピロリ菌は胃の中に住みついている、4μm(4/1000mm)ほどの細菌です。
    ピロリという名前は、胃の出口にあたる幽門という部位の、
    ラテン語の意味から来ています。
  名前はかわいくても、結構悪いことをしているのですよ。
    ピロリ菌は今から20年ほど前(1980年代)に発見されたばかりです。


Q:ずいぶん最近、見つかったのですね。

A:胃の中というのは、胃酸があるために、強い酸性の環境におかれています。
    そんな過酷な状況では、細菌はとても生きていけないと考えられていたので、
    発見が遅れたわけです。
    ところがピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を出して、
    胃の中にある尿素という物質を分解して、アンモニアを作り出すことができます。
    アンモニアはアルカリ性なので、胃酸を中和して生きていけるのです。


Q:胃の中にピロリ菌がいると、どのような病気になるのですか?

A:胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因として注目されています。
    再発を繰り返す潰瘍の患者の多くに、ピロリ菌の感染がみられます。
    そしてピロリ菌を除菌すると、潰瘍の治りが良くなることや、
    再発が抑えられることがわかっています。


Q:どのようにして感染するのですか?

A:くわしく解明されているわけではありませんが、
    口から入って感染するのは間違いないと考えられています。
    上下水道の完備していない、発展途上国に感染者が多いことや、
    日本人でも中高年には感染者が多い(50歳以上だと70〜80%)けれど、
    最近の若い人には感染が少ないので、飲料水の衛生状態が
    大いに関係していると思われます。


Q:なぜ年代によって差があるのですか?

A:ピロリ菌は、我々の免疫がまだ不完全な、乳幼児のときに感染しやすいらしく、
    戦前や戦後まもなくは、日本でも衛生状態が悪かったので、
    今の中高年に感染者が多いのでしょう。
    また、便を介して感染(ハエが媒介になるという考え)したり、
  口から口へ感染したりもするという説もあります。
 

Q:すると予防としては?

A:手洗いを心がけるのが大事です。
    特にピロリ菌感染者の吐いた物や便を触ってしまったらよく手を洗ってください。
    衛生状態の整っていない国に旅行するときは、
    生水・氷などに気をつけたほうがいいでしょう。
    また、口の中の歯垢(プラーク)にも、ピロリ菌がいるという報告もあるので、
    乳幼児に、口移しで噛み砕いたものを与えるのは、止めたほうが無難でしょう。


Q:ディープキスで、うつりますか?

A:大人同士でしたら免疫も完成しているから、
    感染することは少ないと考えられているので、
    たぶん大丈夫じゃないかと思うのですが…。
    ピロリ菌が陽性でも、潰瘍にならない人もたくさんいる
   (再発性潰瘍になるのは感染者の2〜3%)わけで、
  まだまだわかっていないことが多いのです。
  まあ断言はできませんが、あまり気にするのものもどうかと。


Q:自分がピロリ菌にかかっているかどうか調べる方法は?

A:胃の内視鏡を利用する方法と、利用しない方法とあります。

  利用する方法としては、内視鏡の際に胃の粘膜を少し採取して
   @ ピロリ菌を培養する
   A 顕微鏡でピロリ菌の存在を調べる
   B 薬で調べる(迅速ウレアーゼ試験)

  内視鏡を利用しない場合は
   C 息を集めて調べる(尿素呼気試験)
   D 血液を調べる(抗体測定法)


Q:治療は?

A:3剤併用療法といって、胃酸を押さえる薬を1種類と、
  抗生物質を2種類、同時に1週間飲みます。
  除菌の成功率は90%くらいです。
  ただし現在日本で、健康保険の適応になるのは、ピロリ菌が陽性の人で、
  再発を繰り返す潰瘍を治療するときのみです。


Q:副作用は?

A:下痢になったり、味覚がおかしくなったりすることがありますが、
  治療を中止すれば元に戻ります。
  除菌治療薬にアレルギーがある人は服用できません。
  また、除菌後に逆流性食道炎が起こりやすくなる場合もあります。


Q:ヨーグルトでピロリ菌を退治するというのは?

A:発売されているヨーグルトの中には、
  ピロリ菌に効果があることをうたっているものがありますが、
  菌の数を減少することはできても、完全除菌は難しいようです。
  ヨーグルトだけで治療するのではなくなく、
  薬を飲む時の補助療法として使うのがよいでしょう。


Q:その他のピロリ菌のトピックスは?

A:胃潰瘍以外にも、以下のようないろいろな病気と
  関連性が指摘されていて、現在研究中です。

  @ 萎縮性胃炎から胃癌の発生、 
  A 胃粘膜のリンパ腫(モルトタイプ)
  B 特発性血小板減少性紫斑病
  C 狭心症、   
  D 慢性蕁麻疹

                                  診察室へ