良性卵巣腫瘍(嚢腫) 卵巣は正常では親指の先の大きさで、体の中にふたつあり、子宮の横に左右対称 に位置しています(右下腹部と左下腹部)。この卵巣にできる良性腫瘍は2種類あ り、水の入った風船のように内部が液状のものと、腫瘍成分で詰まっているものが ありますが、80%は前者のタイプで卵巣嚢腫と総称されています。嚢腫の中身は、 粘液、漿液、血液などですが、ときには歯や骨、脂肪、髪の毛などの皮様嚢腫もあ ります。 症状 小さい腫瘍であれば無症状ですが、大きくなると下腹部痛や下腹部膨満感などが 起こることがあります。お腹もふくれてきますが、徐々に大きくなってくるために、 太っただけと思っている患者さんもいます。ただし例外的に茎捻転といって腫瘍の 根元が何らかのはずみで捻れて、腫瘍への血流障害が起こってしまうことがありま す。その場合は、突然に持続性の強い腹痛がみられ、ときにはショック状態を起こ してしまい、緊急を要します。 診断 女性の下腹部に腫瘤が触れれば、卵巣腫瘍も鑑別診断のひとつとなります。腹部 超音波検査やCTスキャンなどにより確定診断可能です。 治療 一定の大きさの腫瘍(野球のボール大以上)が見つかった場合は、時期を見て手 術をするのが原則です。年令が若く妊娠の可能性を残したいときは、腫瘍部分だけ を摘出して他は残す方法がとられることがあります。中高年以上であれば卵巣ごと 摘出することが多くなります。茎捻転を起こしたときは、緊急手術となります。