そけいヘルニア

 ヘルニアとは、腹壁の弱いところから腸などのお腹の臓器が、腹膜(胃腸その他の
臓器を覆っている膜)を被ったまま飛び出した状態をいいます。昔は脱腸などとも呼
ばれていたものです。股の付け根(そけい部)は解剖学的に腹壁がもろいため、
人の場合は加齢とともに筋肉や組織が弱まり、ヘルニアが起こるのです。小児のそ
けいヘルニアでは成因は少し違います。胎児期にお腹の中にある睾丸が、そけい管
という腹壁のトンネルを通って陰嚢に下降します。このときに腹膜の一部がトンネ
ル付近に残ってしまった場合、その中に腸などが出てくることでヘルニアを起こす
のです。

症状
 立ったときのそけい部の膨らみが特徴で、痛みなどもなく、横になると引っ込み
ます。しかし出たままで引っ込まなくなり、痛みがひどくなったときは、嵌頓を起
こしていることがあります。これは脱出した腸が締め付けられてお腹の中に戻らな
くなっている状態です。ほおっておくと腸閉塞の状態(腹部膨満、吐き気、嘔吐、
おならや大便が出ないなど)になり、これが長く続くと血行障害が起こり、腸が腐
ってしまうこともあります。

治療
 手術療法をおこないます。嵌頓していない場合は都合の良い時を見はからって手
術をするとよいでしょう。嵌頓はいつ起こるかわかりませんので、ほおっておくの
はあまり感心しません。待機手術であれば全身状態もよく調べられて安全に手術で
きます。子供のヘルニアの場合は1日入院で退院できるところが多いです。大人の
場合も1週間ほどの入院ですみます。嵌頓した場合は、まず手で元に戻すのを試み
ますが、うまくいかないときは緊急手術になります。血行障害がひどくて腸が腐っ
ている場合は腸切除も必要になり、危険性も高くなり入院も長引いてしまいます。