腹部外傷

 腹部を打撲したために腹腔内臓器が損傷されたもので、臓器から出血したり、
腸に穴があいたりした場合は、緊急手術となることがあります。原因としては転落
などの怪我によるものが最も多く、特に交通事故の際のハンドル外傷が有名です。

症状
1:肝臓・脾臓・腎臓などの実質臓器が損傷された場合は、腹痛と共に貧血症状が
現れ、大量出血ともなれば腹部膨満が起き、やがてショック状態(頻脈、血圧低下、
顔面蒼白、冷や汗、意識混濁)となります。
2:小腸や大腸などの管腔臓器が損傷され、腸管の壁に穴があいた場合(穿孔)は、
腸の内容がお腹の中に漏れてしまうために、腹膜炎を起こしてしまいます。その場
合は腹部全体が板のように硬くなり、体位を変えようとすると痛みが一層ひどくな
るという特徴があります。お腹を押して指を離したときに強い痛みを覚えるという
ブルンベルグ徴候が認められることもあります。

診断
 腹腔内出血の場合は、血液検査で貧血がみられ、超音波やCTによる検査で、臓
器損傷の程度や腹腔内の血液貯留の状態がわかります。
 管腔臓器穿孔の場合は、血液検査で白血球が増加しており、立位腹部X線写真で
横隔膜下に遊離ガス像がみられることがあります。

治療
 臓器損傷による腹腔内出血の場合は、軽傷で一般状態(血圧、呼吸、意識、脈拍、
尿量など)が落ちついていれば点滴や輸血で様子を見て自然な止血を期待します。
しかし多量出血が続き、一般状態が悪化していくときは手術となります。
 腸などの管腔臓器穿孔の時は開腹手術になり、穿孔部を縫い合わせたり、腸切除
術を行ったりします。