トンデモSOHO斡旋会社

 なんというか。ツッコミ続けるのに疲れ果ててしまった電話でした。いやはや。
 
男 「在宅でのお仕事に興味はないですか? 私どもは「Wェブ・Sステム」といいます。初心者の方でも簡単にパソコンを使ってお仕事ができるんですよ。」
私 「求人ですか?」
男 「ええ、そうです!」
私 「ってことは、「Wェブ・Sステム」さんの在宅スタッフを募集しているってことですか?」
男 「いいえ」
私 「? じゃ、一体何を募集なさっているんですか?」
男 「在宅で仕事をしてくださる方を募集しているんですよ。」
私 「だーかーらー、「Wェブ・Sステム」さんが自分の会社の在宅スタッフを探しているんじゃないんですか?」
男 「そうじゃないんです。わが社は、「HTS」というSOHO登録会社にワーカーさんを斡旋している会社なんです。
 ああ、でも安心してください。斡旋料も登録料も契約料も、お金は一切必要ありません!
 
 おお、言いきったな
 
私 「? なんで他の会社の仕事を請け負っているんですか? 「HTS」とやらが自分で募集すればいいじゃないですか」
男 「えーっと。実は、ここだけの話、ワーカーさんを斡旋すると、「HTS」からマージンが我々に入るんですよ。
 沢山の企業さんが、「HTS」に仕事の依頼を出すわけですよ。「HTS」はその仕事をワーカーの皆さんに発注する、とこうなっております」
私 「いや、だから、「Wェブ・Sステム」さんの役割がイマイチよくわからないんですが」
男 「私どもの役割・・・ですか? ワーカーさんのサポートと育成です」
私 「サポート? 育成?」
男 「ええと、初心者の方でもできる簡単な入力のお仕事なんですが、やっぱり沢山の収入があるほうがいいですよね。
 そんな、向上心のある方に、こちらとしても沢山のお仕事を割り振りたいと思うのです。
 正直、パソコンとかインターネットとか、個人で勉強するのはよくわからないじゃないですか。
 でも、簡単なソフトで誰にでもすぐスキルを磨くことができるんですよ。わが社はそのお手伝いをする、というわけです」
私 「そのソフトを買え、とおっしゃる?」
男 「パソコン教室に通うよりもずっと安く、それでいて判り易いですよ!」
 
 なーんだ、やっぱりソフト販売やんか
 
男 「勿論、勉強しながらもお仕事はできます。試験に受からないと仕事が貰えないような悪徳業者とは違いますからね。
 ホームページ作成は1ページ3000円ですが、初心者の方でも、ホームページのプログラムを見ながらただ入力するだけというお仕事がありますよ」
私 「ホームページのプログラム?」
男 「ええと、ホームページの元になっているモノです。と言っても、記号や英単語が並んでいるだけなので、見ながら入力する分には何も難しくないですよ」
私 「見ながら?(笑いを堪えるのに必死) その元原稿って手書きなんですか?
男 「原稿形態は発注する企業さんによってまちまちですが、手書きって所はあまり無いですね。ワーカーさんに見易いようにワープロ打ちされてるものが殆どですよ」
私 「(爆笑しそう)ええと、ウェブページの元になる、っていったらHTMLとかJAVASCRIPTとかそんなんですよね。そのページソースがデジタルデータであるんだったら、新たに入力する意味がないじゃないですか」
 
 このツボはHTMLが解らない人にはちょっと難しいかもしれない。
 例えるなら「ワープロで作成された文書のプリントアウト」を見ながら、ワープロ(しかも同じ機種)で同じ文書を作成する、という状況であろうか。このうえも無くナンセンスである。
 
男 「??はあ? えっと、もしかして、とおみさんってパソコンをやってらっしゃるんですか?」
私 「(パソコンをやる、ってのもスゴイ表現だ)はい、使ってますが」
男 「じゃあ、インターネットもしているんですね?」
私 「(インターネットをする、ってのも以下略)はい」
男 「それじゃ、「悪辣マニア」ってホームページ、御存知ですか?」
 
 それはもしや「悪徳商法?マニアックス」?
 
男 「勝手に人の会社を悪徳だと決め付けて、有ること無いこと誹謗中傷しているホームページらしいんですが、本当に当社としても困っているんですよ。
 実際にうちのソフトを買いもしないで、高価だから悪徳業者だ、などと悪口を言っている人がいらっしゃるようで・・・」
私 「高いんですか、そのソフト
男 「あ、いや、それは、・・・そこらへんにあるようなチャチなソフトじゃありませんから・・・。
 でも、ITに詳しい方なら大抵「へえ、ずいぶんと値引きしているんだね」とおっしゃいますよ。
 初心者の方には、確かに高価に思えるかもしれませんね。まあ、シロウトさんが知らないのを責めてみても仕方ないんですが」
 
 おいおい、そりゃないだろう?
 
私 「・・・初心者をターゲットにしているんじゃなかったんですか? それはずいぶんと無理があるような」
男 「(無視して)それに! わが社の売りはソフトだけじゃありません。
 「HTS」への登録は、1年間だけなんですが、その後に3つのコースを御用意しております。
 まず1つ目のコースは、2年目以降も「HTS」に継続して登録していただくというものです。
 1年間実務をこなされたことによって、確実にスキルアップなさっていることでしょうから、より単価の高い仕事を任されることになります」
 
 こんなに手間隙かけて育成・スキル管理するぐらいなら、ある程度腕の保証された人間を外注スタッフとして雇う方が、なんぼかトクだと思うんだけど。
 (実際に仕事を斡旋しているのかどうかはともかく、それを上回る利益が「登録制」にからんで生まれてくるのは確かなようで)
 
男 「次に2つ目は、「HTS」とは別の他の同じような登録会社に代えてお仕事をしていただく、というものです。
 やろうと思えば、「HTS」と掛け持ちで、より沢山の仕事をお受けになることが可能です」
 
 これはコワそうだなあ。また別なソフトや教材を買えと言われるわけ?
 
男 「最後の3つ目ですが、これが一番評判が良いんですけどね。
 登録会社を使わずにインターネットで仕事を探す、というハイレベルなコースです。サービスで、当社がワーカーさんのホームページを作ってサポートいたします」
 
 なんだって?
 
男 「個人で作るホームページなんかじゃ、企業の方は仕事を任せようなんて気にならないですもんね。
 プロが作った信頼感あふれるホームページでこそ、お仕事の依頼が貴方の元に殺到するんですよ」
 
 ・・・あ〜頭イテ
 
私 「あの〜、「1年間実務をこなして確実にスキルアップした」ワーカーが対象なんですよね。なんで、自分でウェブページ作らないんですか?
 そんなことも出来ないような人間に、仕事を依頼しようと思う会社があったらオドロキですが」
男 「えっ、あっ、まあ、いやその、でも経験上のお話でね、仕事をこなされていても、実際にホームページを作れない人って意外といるんですよ
私 「1年間もウェブページ作成の仕事してる人が? お金貰って仕事してるんでしょ?
男 「理屈はともかく、現にとても好評なんですよ」
 
 それはあんたの会社の「育成方法(高価なソフト)」が、何か間違っているとしか思えない。
 
男 「・・・・いかがです?」
私 「いかがです?って?」
男 「やってみたいと思いませんか?」
私 「思いません(キッパリ)」
男 「・・・そうですか・・・残念だなあ」
私 「・・・(電話をガチャ切りする気力もない)」
男 「・・・あの、それじゃ、1つだけお聞きしたいんですけれど。そのー、うちの会社は本当に悪徳会社じゃないんですよ。でも、客観的に今の話を聞いて、どう思われました?」
 
 大胆なことを聞いてくる人だ。
 
男 「パソコンに詳しい人なら、本当に納得されるんですよ。よく知らない人に限って「悪徳だ」とか「詐欺だ」とおっしゃるんですよ。
 とおみさんは、どうやらパソコンに詳しくていらっしゃるようですし、率直な意見が聞きたいのですが」
私 「・・・えーと。ちょっとまとめてみますね。
 まず、そのなんたらというソフトを買わないと、仕事の斡旋は受けられないんですよね?」
男 「はい」
私 「で、そのソフトは結構な値段がする、と」
男 「はい、しかし・・・」
私 「しかし、内容は立派なモノだ」
男 「ええ、そうなんです」
私 「でも、初心者にはその良さがわからない」
男 「ええ、残念ながら・・・でも!ちょっとでも体験すればそうじゃないことがわかってくださる筈なんです!」
私 「それで、色々誤解を受けて困っている」
男 「ええ! 全くその通りです!」
私 「・・・ソフトを買うのが必須条件ということは、そちらの会社は、基本的に初心者をターゲットにしている、と考えて良いんですよね?」
男 「まあ、そうですね」
私 「でも、初心者には誤解を受けるような必須条件を掲げていると」
男 「はあ」
私 「んじゃ、例えば入門編とかお試し編とかいった安価なソフトをまず用意したらいいんじゃないですか?
 ちょっと体験するだけで、誤解は解けるんですよね? 
 一段階踏むだけでいいんですよ。本当に良いソフトだったら、継続して皆さん買ってくれる筈ですし」
男 「・・・! そうですよね! そうだ、本当に私もそう思います!!」
 
 いや、そう力強く同意されても・・・
 
私 「で。誤解を受けて困ってらっしゃって、しかも誤解されている原因がはっきりわかっていて、それに対して何も対処していないっていうのは、悪徳や詐欺以前に会社として問題があると思います
男 「・・・そう、言われると、そうかもしれないですね・・・」
 
 うわ弱気!
 
男 「でも! うちは悪徳会社じゃないんですよ!」
 
 やっぱ強気?
 
私 「あー、おっしゃりたいことは良くわかりましたんで、どうぞ他あたってください。
 では、失礼します」
男 「はい、長々とすみませんでした」

 えらく「悪徳会社か否か」にこだわってらっしゃったテレアポ氏でしたが、そういうレベルの問題ではないような気がします・・・。
 大体、この電話の内容ってば、まじめに在宅で仕事をしている人にとっては噴飯モノだと思うんだけれど。
 アルバイト感覚で安易に在宅の仕事を考えると、「悪徳業者」云々以前に大変な苦労を背負い込むことになります。興味の有る人は以下のサイトを覗いてみることをおススメします。
 
参考リンク
■在宅ワークはじめのいっぽ

(2001.11.5)