お金のためなら犠牲も・・・

■ペンネーム「エスプレッソ」さんからの投稿です。

 まだ私が初心だった頃、友達から健康食品を買いました。高かったのですが、まずまず効果があったので使っていました。
 
 そのうちに友達からその健康食品を扱っている人たちとの食事会のお誘いがありました。
 行ってみたらホテルでバイキング。そこで話している間はあまり何も感じていませんでした・・・
 その健康食品の素晴らしさを皆さんが話しているだけで、私は聞いてるだけでした。
 
 夜になり、ホテルのバーで説明を受けました。代理店として開業だとか、マージンだとか・・・この時点でようやく悟った私。
 お酒を飲みながらでしたが、「仕組みは理解しました」とだけ返事してました。・・・この時に既に泊まることになっていたので、ヤバイなあ・・・と思っていました。しかしすぐに寝てしまったので何事もなかったです。
 
 翌日、朝食を食べたら呼び出され、親しいお友達に健康食品を売るための秘訣を教わりました。お姉さんが言うには
「まず、友達と食事をしてください。一度だけだと変なので、二、三回食事をしてからこの健康食品を勧めてください。中学校から知っている人の名前をここに書き出してください
 とのこと。
 書きたくないといって断ったらあきらめてくれましたが・・・
 
 昼食時に、お話がありました。健康食品を扱っている会社員の人やMLMのトップの方は、洗脳か?と思える言葉をバンバン使ってましたね。MLMの下位の人は、結構人が良くて優しい人が多かったです・・・
 しかし、よく考えてみると商品の原価っていくら?って感じでした。
 会社員の給料が出てるでしょ。あなた方のサポートをしますと力強く叫んでおられました。おまけに売ったらマージンがあるでしょ。ここのホテル代とか食事代もその健康食品を売った利益からでてるんでしょ・・・
 原価は・・・?そう考えたら買う気が失せました。
 
 早く帰りたい・・・と思ったのですが、最後の難関が待ってました。素敵なおじ様とさしで勝負です。どうやらこの方は幹部のようです。そりゃ、私はタダ飯三食頂いてしまったし、ただで帰ることは困難です。ついに来たか・・・
 
おじ様 「君は商品を信頼してないね。だから親しい人に勧められないんだよ」
私 「いや、商品が良いって事はわかってますよ」
おじ様 「だったら、どうして勧めないんだい?」
私 「良いものなんだから、普通に売ったらよいじゃないですか? 私、なんだったらデパートとか薬局に売り込みに行きますよ」
おじ様 「いや・・・親しい人を助けてあげたくないの?」
私 「親しい人は、私を見ていたら自然に買ってくれますよ。
世のため人の為に、もっとアピールして普通に売ったら良いと思います。せっかく良い商品なんだから、広めましょうよ、ね」
おじ様 「いや・・・この会社を建てた人が、欲の無い人なんだよ・・・だからね、そんなにアピールしなくて良いんだよ」
私 「・・・勿体無いですね」
おじ様 「・・・まあね。だけど、良いものだからね。どうして君は勧めるのをためらうのかなあ?」
私 「・・・う〜ん、色々と忙しいし・・・」
おじ様 「人ってね、信頼が大切なんだよ。わかる?」
私 「・・・ええ」
おじ様 「だから、迷った時には相談することが大切なんだよ。もっとオープンにしようよ。OPEN THE WINDOWって言うだろう? 窓はたくさん開けておくことが大事なんだよ。色々な事を取り入れるんだ。
 お友達とか、身近な人とかね。話さないと、何も始まらないんだよ」
私 「そうですね・・・」
 
 ちょっと考えてみました。この時、おじ様の顔は満面の笑みでした。
 
私 「だったら、信頼している両親に相談してみます」
 
 おじ様、青ざめました。
 
おじ様 「・・・そうだね・・・両親か・・・」
私 「はい、きっと相談に乗ってくれますし」
おじ様 「・・・両親と仲が良いのは良い事だね・・・」
 
 そんな感じでおじ様は諦めたようでした。
 しかし、この後おじ様は
「お金のためなら色々な物を犠牲にすることもあるんだよ」
 という発言をしてくれて、その時のお顔は、素材は素敵なお顔なのに、凄まじい顔に見えました・・・
 私がわざと話を逸らしたのを感付いていたんでしょうね。
 何とか生還しました。でも、かなりやばかったです。

■エスプレッソさんから、2回目の投稿です。ありがとうございました。
 
■・・・これは典型的な、自称「ネットワークビジネス」「マルチレベルマーケティング(MLM)」、通称「マルチ商法」、法律上の正式名称「連鎖販売取引」、ですね。連鎖販売取引の定義については、「仕事のセミナー?健康セミナー?」のコメントに記したことがありますので、そちらを参考にして下さい。
 
 親しいお友達に健康食品を売るための秘訣とやら、完全に特商法違反ですね・・・(ため息)。
 連鎖販売取引にかけられた規制の内容についても「仕事のセミナー?健康セミナー?」を見ていただくとして、
 
「連鎖販売取引への勧誘であることを隠して呼び出す行為」は、特商法で禁止されています。
 
 いちいちそんなこと法律で決めなくっても、商売をするのに嘘を言ったりごまかしたりしないのは常識で、もしもそんなアコギなことをする店があったら、「あの店はろくでもない」といった噂が立って客足が遠のくことは必至でしょう。
 ただ、無店舗販売ではそういった淘汰がおこりにくく、結果としてトラブルが多くなります。実際に、消費者センターに寄せられる苦情の半分以上が、特商法で規制されている「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘勧誘」「連鎖販売取引」「特定継続的役務提供」「業務提供誘引販売取引」に当てはまる契約で、それらの多くは無店舗販売の形態をとっています。
 
 業者の良心にまかせているだけでは、トラブルが増えることはあっても減ることは無い。これら6業種について、特商法が厳しい規制の網をかぶせる理由はそこにあるのです。
 
 連鎖販売取引では、「夢の実現」「いい商品を伝えたい」といったお題目のもとに、専門知識に乏しい素人が、友人知人親戚家族といった近しい人々に対して強引に営業活動を展開することが多いために、トラブルが起こりやすいし、トラブルの根も深くなります。
 
「こういうことをしたら、他人は迷惑だと思うから、止めといてね」
「こういうことをしたら、他人を騙すことになるから、止めといてね」
「こういうことをしたら、契約をとった後に「話が違う!」って紛争になるから、止めといてね」
 
 特商法が定めていることは、まさに上のようなあたりまえのことなんです。
 尤も、人に迷惑をかけないように、特商法を違反しないように連鎖販売取引を行うと、間違いなく儲からないでしょうけどね・・・。
 
■それにしても・・・、矛盾がいっぱいの体験でしたね・・・。
 
「商品を勧めて親しい人を助けてあげよう」と良い人ぶっておきながら、「世のため人の為に広く普通に売れば」という意見は必死で否定したり、
「この会社を建てた人が、欲の無い人」と言うわりに、特商法を違反してまで健康食品を売ろうとしていたり、
「信頼は大切だ」「身近な人に(いい商品を)伝えなければ」と言っておきながら、「信頼している両親に相談します」と聞いて青ざめてみたり、
 
 もう、いちいちツッコミとその理由を書くのも面倒くさい(←ぉぃ)ので、専門サイト様に丸投げします。
 
 【参考サイト】
苦情の坩堝
ネットワークビジネスリスク研究所
アンチマルチ商法活動拠点
 
 心理学や社会学なんかも絡んできて、知れば知るほど奥が深いですよ。私もまだまだ勉強中です。
 
■当サイトに寄せられた、マルチ商法ネタの記事の一覧は、「体験談総目次 マルチ商法」にあります。ご参考にどうぞ。

(2005.11.4)
(参考)
この他の、エスプレッソさんの投稿は以下の通りです。
レンタルビデオ店でくじ引き
最強インフルエンザ