スコールグループは霊の存在を証明したか


 前章のような内容になるとまるで夢物語のようで、さすがにトリックでしかあり得ないという気になってくる。しかし彼らの成果をトリックだとするなら、厳密な写真実験をまず突き崩さなければならない。

 こんな風に想像して欲しい。フィルムはあなたが買ってくる。あなたはそのフィルムを持ってスコールグループの実験に同席させてもらい、実験の間中それを握り締めている。実験が終了したら上の階に上がり、現像機の取り扱い説明を受けよう。そしてあなた自身の手によって現像されたフィルムに日本語の詩が写っていたとしたら。いったいこの手順のどこにトリックの余地があるのだろう? あった! フィルムが自分の手を離れて一瞬見えなくなる瞬間があった。この現像機に細工がしてあるに違いない。しかし脇にいたモンタギューは、この現像機は今までに何度も検査され、機械を作ったポラロイドの人も、どこにもすり替えるべきフィルムを入れる場所はないと保証している、と言った。そこに他のメンバーがドライバを手渡し「あなたも気の済むまで調べていただいてOKですよ」と続ける。さらにモンタギューは、現像の前にフィルムにしるしをつけてすり替えがないかどうかを確認した人たちもいる、と付け加えた。

 しかしながらこのような経験をしたと訴えているのはあなたではない。仮に関係者全員が詐欺に共謀しているとしたらどうだろう。この問いに対するモンタギュー・キーンの返事を、彼の許可を得た上で掲載させていただく。

「この仮説によればスコールグループの元々の6人はすべて詐欺に荷担していることになるが、我々の調査が始まってすぐにやめてしまった二人は、メンバーとして過ごした2年間に経験した現象について、真正のものであることを未だに熱心に力強く保証し続けている。スコールレポートをまとめあげた我々3人も詐欺の仲間となり、調査の始めに2回出席し、現象の真実性に完全に満足したと表現した亡き同僚ラルフ・ノィエス氏も仲間でなければならない。その他の、調査を共にした人々の中でも特に、ハンス・シェアー博士、ウォルター&カリン・シュニットゲル夫婦、イングリッド・スラック女史は最低限、詐欺の仲間とみなさなければならないだろう。加えて、実験に三度出席し、自分が見聞きし体験したことは通常の手立てでは説明できない、と公言したプロのマジシャンを含む、かなり大勢の人が詐欺の仲間に含まれる。
 (中略)
 この規模の集団詐欺の告発は、一般的には自分の信念と対立する証拠を病的なまでに受け入れることができない人々のための、最後の逃げ場とみなされる。これはもちろん非科学的な態度だが、科学者たちに非常によく見られる。」


 私も彼らが皆詐欺に荷担しているというアイデアは、反対のための反対にしか過ぎないと思う。やはり超常的な現象が実際に起きたと認めざるを得ない。それではスピリットチームの正体はいったい何なのだろう。始めはフォイ夫妻に現れ、ベネット夫妻に移動し、宙から聞こえ、最後には機械からその声を現したこの人格たち。まず候補に上がるのは、スコールグループの潜在意識が産み出す超常的なパワーをその正体だとする意見だ。この仮説は「超PSI仮説」と呼ばれ、霊現象と思われる現象のほとんどすべてを説明することができる便利な仮説だ。この仮説が否定されるのは、関係者の誰の潜在意識からも現れるはずのない、ひたすらマニアックな事柄についてスピリットチームが述べたときである。


 1996年の11月、スピリットチームはひとつの詩を二回に分けてフィルムに写し出し(図参照、クリックするともっと大きく見れます)、その詩を送った存在がヒントとして「ルツ(Ruth)」という単語を伝えるよう言っていると知らせてきた。フィルムにあったWWという文字から、モンタギューはこの詩がワーズワースによる「ルツ」という題の詩であることがすぐに発見した。しかし出版されているものと比べると細部に違いがあり、また出版では3人称のhe,his,himで書かれているところがフィルムではすべて1人称のI,me,myになっている。モンタギューは今まで出版された版のどれかに同じものがあるのではないかと思い、大英図書館で調べ続けた。そして、この詩の初版が1800年に3人称で出版され、1802年に一人称に書きかえられた事実を知ったのだ。その後1805年にまた3人称に戻されたため、一人称で出版されたルツは1802年版しかない。ところがフィルムの詩には1805年版にしか含まれていない2行と、どの版にも見られない一行が入っている。

 いったいこのフィルムは何なのだろう。これと同じ内容の版が世界のどこかにあるのか。これだけ調べても同じ版がないということは、未出版の版でもあったのか? さらに何ヶ月かワーズワースについて調べ続けたモンタギューは、ウィリアム・ワーズワース自身は非常に悪筆であったため、出版原稿は姉のドロシーが清書していたのを知った。彼は早速ワーズワースの子孫を探し出すと事情を話し、ドロシーの原稿を見ることができないかと尋ねたが、それはすでにクリスティーのオークションで売られた後だった。モンタギューはそんなことにはくじけず、アメリカで現在その草稿を保管しているところと掛け合い、最終的にドロシーが1802年に出版社用に清書した原稿のコピーを手に入れたのだ。こうして手に入ったコピーと、実験で得られたフィルムの内容は全く同じもので、筆跡も酷似していた。

 今回モンタギューが数ヶ月の調査で得た知識は、ワーズワースの専門家でも持っているかどうかわからないほどの知識だ。このルツの詩が、関係者の誰かの潜在意識から生まれるようなことがあり得るのだろうか。その知識はいったいどうやってその人の潜在意識に埋め込まれたのだろう。


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