このミス'92 海外 4位
結婚に失敗したロバートは精神的に不安定な状態であった。幸せそうに暮らすジェニーをたまたま見かけ、その姿に安らぎを見いだした彼は隠れて彼女を見に来るようになった。彼はとうとう彼女に発見されてしまうが意外なことに彼女は彼を受け入れる。さらに彼女はロバートに好意を持ったため婚約者であったグレッグは怒り、ロバートを執拗に付け狙う。
みんなおかしいです。変。だいだい、家の周りをうろついていた不信な人物に「お茶でもいかか?」なんて言いません。しかも、好きになるとか「もう会えない」っていわれてるのに付け回して引越先の家まで探り出すとか。そしてロバートの元奥さんって人も最悪。もちろんグレッグもかなり最悪。もう状況はロバートの都合の悪いほうへ、悪いほうへと転がり落ちていくって感じ。「そうはならないって!」って思うのにそうなっちゃうんだよねえ。最後のシーンも強烈。このシーンのためにこの題名が付いたんだと思う。吉野朔実さんのおすすめでした。吉野さんっぽいかも。
『ポアロのクリスマス』 アガサ・クリスティ (3月中旬)
村一番の富豪であるリー氏はクリスマスに息子たちとたった一人の孫娘を集めた。そこに復讐を企む老人の旧友の息子も加わる。りー氏は気持ちのひん曲がった老人だったが体が悪くなったという理由で、疎遠になっていた二男、三男、そして亡くなった娘の子までも呼び集めた。しかし、老人は和解しようとしたわけではなく更なる不和を兄弟たちに蒔くことで喜びを得ようとしていた。そしてその夜、老人は何者かに殺される。
うーん。そんなにお勧めではないなあ。悪くはないけどすごく良いわけではない。後半までずーっと状況のみで誰が犯人なのかわからない!って思ってたら急に解決編に突入。それがそう悪い感じではなかった。さすがアガサ・クリスティー。
『五番目のサリー』 ダニエル・キイス (3月上旬)
サリーは記憶障害に悩まされていた。自分の知らない人が声をかけてきたりクローゼットに見たこともない洋服が掛けてあったり。知らぬ間に起こした自殺未遂をきっかけに精神科に通うことになったサリーを人格の一つである記録係の「デリー」の視点から描く。
久しぶりに一人称で読みやすかった。設定はとても特殊だった(そう考えるとSF?ネビュラ賞取ってたかな?)。彼女はとても美人らしい。みんなが彼女に夢中なの不思議だ。そして苛酷な生い立ち。こっちは面白い。これほど苛酷なら5人に分割しちゃってもしかたないかって感じだ。でも最後は「その後どうなったの〜」って解決されてないところとかがある。全体的に読ませる感じがあるのでまあまあの作品だと思います。
『幻惑の死と使途』 森 博嗣 (2月下旬)
有里幻匠というマジシャンがステージの最中に殺される。さらに葬儀の最中に遺体が忽然と消えてしまう。目撃者があまりに多く殺人が不可能と思われる状況での犯行。
なんだかつまんなかったー。だんだんネタとかが「ああそうなんだー」って冷めた感じで盛り上がりに欠ける。うーん。しかも萌絵ちゃんとかも一層変だし。ただちょっと気に入ったのは萌絵ちゃんが友達とチェスをするんだけど、喫茶店で板を使わずに頭の中だけで勝負するという件。ちょっと頭良すぎだけどかっこいいので許す。
『ローフィールド館の惨劇』 ルース・ルンデル (2月中旬)
ユーニス・パーチマンはカヴァデイル一家4人を惨殺した。ユーニスは実に有能な召使だったが文盲だったためにこの惨劇が起こった。物語は彼女がヴァデイル家に雇われてから惨殺に至るまでを描く。
冒頭でいきなり「この人達はこの人に殺されます。」と宣言されます。一家はアッパーミドル階級の家庭。いい人達なのだかそれが災いして死への道を進む。はじめは「あー、なんでそっちにいっちゃうかなあ!」って思うけど後半はそれほど殺人に至る必然性が見られないので今一歩。ミステリーでは話題作だったみたい。最初から犯人と殺人の動機が明確にさせておく書き方は珍しい。なんか、もっと怖い感じにしてほしかったなあ。ちょっとしたことが積み重なって悲劇に向かうっていうのがよかったなあ。期待し過ぎか。『黒い家』とちょっと似てるけど『黒い家』の方が迫力があって良いと思う。
『バルタザールの遍歴』 佐藤 亜紀 (2月中旬)
双子の兄弟の精神が一つの肉体で共存しているドイツ人貴族の半生を描いた作品。
バルタザールとメルヒオールは双子で同じ体を共有している。そのため彼らは自分達のことを「私達」と呼び周囲を困惑させる。
なかなかの出来です。ナチ時代のヨーロッパの生活をリアルに描きながら波乱に満ちた双子の半生を綴っています。語り手はメルヒオールでたまにバルタザールが口を出すと行った形式。とにかく波乱に満ちています。半分読んで「まだなにかあるの!?」と思わされるくらいすごい出来事が次々に起こっていきます。友人の一番のお勧めでしたが、超アタリでした。お勧めです。
『私が殺した少女』 原 僚 (2月上旬)
このミス'89 国内 1位
ある探偵が電話で呼び出されていった先で誘拐犯と間違われる。これを発端にこの犯人はこの探偵を事件に巻き込んでいく。また、警察は探偵の以前の相棒が犯罪を犯しているために共犯の疑いをかけてくる。犯人は一体何の目的で彼を巻き込んでいるのか。
ハードボイルド。まあまあかな。いつだったかの年間一位だったらしい。最後に短編みたいな後書きが付いてるけど、そこまで一気に読んでしまうとなんだか収まりが悪い感じがした。ストーリーの構成は定石通りって感じがした。結末は『マダムタッソーはお待ちかね』と同じくらい唐突だけど真犯人に至るまでの犯人像に違和感をちゃんと持たせているからそれほど気にならない。
『黒い家』 貴志 裕介 (1月下旬)
このミス'99 国内 2位
生命保険会社の支払の査定をしている男のひとが主人公。ある日、顧客の家に呼び出され子供の首吊り死体の第一発見者となる。その父親の行動に不信を抱いた彼は独自に調査を進めるが・・・。
保険会社の話だけど、そんなに難しくないです。分かりやすい。挿話が煩くない程度にあって良し。心理学と絡めて心理描写とかが伏線のようにあってなかなか。初めは淡々としていてどこが怖いのか分からなかったけど後半で、なぜこの作品が「ホラー小説大賞」受賞作なのかが納得させられます。あの文章の勢いはなかなかのものです。
『封印再度 Who inside』 森 博嗣 (1月中旬)
始めは『姑獲鳥(うぶめ)の夏』とちょっと似たような感じだったので意味もなく怖かった。「天地の瓢(こひょう)」(壷)と「無我の匣(はこ)」という家宝をもつ日本画家の家で起こった事件。「無我の匣」には鍵が掛かっており、その鍵は「天地の瓢」の中にある。しかし、壷の口は鍵より小さい。割らずに取り出して箱を開けられるのか、というのが一つの命題。萌絵ちゃんがその家宝の謎を解こうとしてるうちに事件がいろいろな起こる。
うーん。これを解くのは難しい。ヒントが無いし(あるのかもしれないけどそんなんじゃわかんない)。私は「そんな〜」って感じだったな。子供がマズイ。まったくもう。
それとは別に萌絵ちゃんと犀川先生の関係が進展。萌絵ちゃんってちょっとやり過ぎだったかもしれないけど、犀川先生も犀川先生だから仕方ないか。ま、いっていことよ。諏訪野って萌絵ちゃんの執事(!!)なんだけどいい感じです。(^^)
『姑獲鳥(うぶめ)の夏』 京極 夏彦 (1月上旬)
このミス'95 7位
ちょっとこわい。関口という男が語り手。妊娠20か月を過ぎても子供が生まれずその夫は行方不明になったという話。時代は終戦直後くらい。主要人物が何人かいてどいつもこいつも癖のある人間ばかり。最初は「京極堂」と呼ばれる人物(これは本屋の屋号)と関口くんの蘊蓄で始まる。これがなんだか長くてよくわからない。一応本文に関係してるから頑張って読むんだけど京極堂は意地悪なのでさっぱり良くわからない。江野木津という探偵が出てくるが、この美形は探偵だというのに謎解きをしない。なんでかなー。美形なのに全然出てこないし。やっぱり変だし。文章もちょっとその時代を反映していて良ろしいです。情景とかは浮かびにくいけど文章はうまい。途中で読むのを中断すると怖い。何が怖いのかよくわからないけど怖い。読み終えてしまうとそう怖くはないけど途中で「怖いよ〜」って思うのは久しぶり。怖いもの見たさ的に読み進んでいたと思う。結果は「なにそれ〜!そんなのあり〜!??」って感じで関口君が一番おかしい。京極堂より江野木津よりも全然おかしい。変。もー、そんなのアリ?
本は物凄く分厚くて持って読んだりすると手が疲れるくらい。京極夏彦の本は「弁当箱」といわれているらしい。尤もであるー。
『私的詞的ジャック』 森 博嗣 (11月下旬)
女性が密室で次々と殺されていく話。まあまあかな。相変らず動機が弱い。めちゃくちゃ弱すぎ。そんなんで人殺すかなーって感じです。
まあ、相変らず人間が書けてないのでそれほどお進めではないです。犀川先生もなんだかなーって感じ。いまいちどんな人なのか掴めませんね。トリックとかも分かりにくくてどうでしょうね。
今回ははっとする一言とか多かったなあ。知り合いが殺されたって言うのに犀川先生が「べつに〜」みたいな返事でむかついた。そんな考え方ってある???ちょーむかつきます。そんな人いないです。いたら殴っちゃいそう。
それから
登場人物に国枝さんていう助手がいて(女性)(これがさっぱりはっきりな人で、物凄く合理的過ぎる人。)、「犀川先生になにか教えてもらいましたか?」と萌絵ちゃんに聞かれたとき、「別に何も。ここは学校じゃないんだから。」っていうの。学校でしょー?とちょっとむかつくが、確かに、学校って何にも教えてくれない。お金は払ってるのに、何なのよー!とか、給料貰ってるんでしょー!とか言いたくなる。(言ってたけど。)萌絵ちゃんも「ここ学校じゃないのかな。」って言ってた。よく言う「ここは学校じゃないんだから」の「学校」ってどこの学校なんだろう。授業とかでも、小学校はクラスの5割、中学は3割。高校は1割が授業を理解すれば次に進んでいいらしい。それってやっぱり親切じゃないと思う。「学校じゃない」=「丁寧に教えない」なんだろうけど、学校ってぜんぜん丁寧だと思わない。親切でもないし。最初から学校は何でも教えてくれる所ではなかった筈。そう考えるとそもそも「学校」っていうものの定義が間違ってくる。今じゃあ「学校崩壊」だかって、小学校とか酷いことになってるし。先生とかに求め過ぎだし、先生方も教育者像から遠ざかってきてるし。そういう意味では会社の方が親切。そうじゃなきゃ仕事進まないし。でも、たまーに女ばっかりーってとこだとこういった合理的な思想が通じないんだよねー。なんでだろ。ばかみたいって溜息ついちゃうよ。
あと、おもしろかったのが、女の人の方が環境に合わせて成長するって話。男の人は何かと変化が鈍いとかなんとか。結構これは納得できたなあ。
『フロスト日和』 R・D・ウイングフィールド (11月中)
このミス'98 海外 1位
汚いおやじが主人公。めちゃくちゃイイカゲンで、「この人やだ!」って感じの人。でも、警部。何処に魅力が?ってとこが、敢て魅力なのでしょう。
いきなり吸い込まれる読みやすさ。しかし本は厚い。フロストシリーズ2作目。汚い表現とかがやたらうまい。しかもしつこい。どんどん事件が起こってるけど大丈夫か?フロスト!ってかんじです。気がついたときには6件くらい事件が起こってた。婦女子連続暴行事件、浮浪者殺害事件、金持ちの家の女の子が行方不明だったり、銀行強盗あり・・・。かなり最悪。これを持ち前のいい加減さで成り行き的に解決していく。そんなんで解決してるから、この人こんなに酷くても警部なんだろうなあ。
『笑わない数学者 Mathematical Goodby』 森 博嗣 (11月上旬)
さい川&萌絵ちゃんシリーズ3作目。入りが結構読みやすい。今までの読み辛さをかなり克服。いきなり謎から始まるところも良し。ずっと謎が解けそうで解けない。数学のクイズとかあって違うとこでも楽しめます。答えのない問題があるので、分かった人はぜひ教えてください。
「ビリヤードのボールを5つ選んで真珠のネックレスのように繋げる。隣り合うボールを選んで(一つでも、二つでも、5つでも良い。)その合計で1から21の数字を作る。この条件を満たすボールの数字と並び方は?」というもの。全然わかんないよー。他には「10、10、4、4を加減乗除を使って24をつくれ。」など。後者は割合解きやすいです。
『すべてがFになる Completed Insider』 森 博嗣 (10月中旬)
ミステリー。情報系の研究所での密室殺人。天才博士、真賀田女史の部屋でウエディングドレスを着た手足のない遺体が発見される。
真賀田女史の部屋は密室。全ての管理はコンピュータでされているのにも関わらず、その部屋への出入りがあったという形跡を確認できない。ビデオにさえその瞬間が収まっているのにどうやってその密室に出入りしたかが焦点。
犀川助教授と萌絵ちゃんのシリーズ1作目。
死体の出て来方が衝撃的。ぎょえーって感じです。プログラム関係の用語が説明もなしにぽんぽんでてくるので結構楽しいです。ポアロみたいに重要なことを最後まで隠すとかじゃなくて、鍵になる情報はちゃんと明確にされています。ある程度の予想は可能。そこがまた良し。
『冷たい密室と博士たち Doctors Isorated Room』
森 博嗣 (10月下旬)
犀川助教授と萌絵ちゃんのシリーズ2作目。ミステリー。極地研という低温での物体の状態を専門に扱う研究室で起こった密室殺人。犀川先生と萌絵ちゃんシリーズ2作目。始めのうち、ずーっと低温の実験の話とかばっかりで、やっと3分の1進んだところでやっと人が死にます。作品に愛着を持ってないとちょっと辛いかも。その辺りまで分からなくても大丈夫。半分位からやっとミステリーらしく成ってきます。残り3分の1がおもしろいです。今までの苦労を取り戻すかのよう。実際にはこれが処女作。『すべてがFになる』は本来3作目だったらしい。たしかに、インパクトを考えるとそうなるだろうね。
『長い長い殺人』 宮部 みゆき (10月下旬)
ミステリー。10の財布の一人称の語り口で話が進む。とても客観的でなかなかの構成。財布達が主人公なだけあって程よく分からないところが○。よくそれだけのシチュエーションで書けるなあって感心します。お進め。わたしは「デカチョー」と男の子が好き。
『アクロイド殺し』 アガサクリスティー (10月中旬)
村一番の金持ちおやじが殺されちゃう話。このトリックの在り方について激論されたらしい。これって、有りか無しかって。「この書き方は卑怯!」と思うかどうかってところですね。
ポアロの引退後のおはなし。ヘイスティング君が好きなのに出ていないので残念。一応、そのかわりに出てる人がいるけど・・・。話題作なだけあって結構おもしろいです。相変らずポアロは隠し事ばかりしていて、真相は最後までほとんど分からない。
『夢にも思わない』 宮部 みゆき (8月中旬)