書 名:猫たちの隠された生活 / The Tribe Of Tiger
著 者:エリザベス・M・トーマス / Elizabeth M. Thomas
出版社:草思社 1996/3/27 第1刷発行
価 格:1,900 円
ISBN 4-7942-0682-8
猫は孤独を好むか。猫はテレビが好きか。
猫は飼い主を何者と見ているか。
人類学者が猫の真実に迫った無類に面白い猫の本。
ベストセラー『犬たちの隠された生活』の続編。 [帯より]
まず、表紙の猫がとってもいい顔をしている。 これだけで猫好きの人をひきつける魅力を発散している。
内容は、主観的な猫可愛がりの話ではなく、生物学的な視点で観察した 猫属 (Tribe of Tiger) の特徴についての興味深い記述の数々。 ライオン、虎、ピューマ、家猫、などなどさまざまな動物が登場する。
アフリカで、北米で、自然の形は変わり、そこに住むライオン、
ピューマ、そして人間 (ジュワ・ブッシュマン) の生活を
変えてしまった。
その変化が、外からの人間の仕業である狩猟・農耕・牧畜・開発によって
もたらされたことは、いうまでもない。
安定した自然の平衡状態は失われ、受け継がれた従来の暮らしは
通用しなくなった。動物達はとまどい、あらたな生き方を模索している。
そこに衝突は生まれ、悲劇的な話題がいくつもある。
声高に自然保護を主張はしないが、失われた自然の調和を惜しむ記述が、
あちこちに散りばめられている。少なくとも数十年前のブッシュマンの
生活には、それがあった。人間も動物も、その地を、水を、動物を
分け合い、ともに生きていた。お互いの流儀を知り、それを守っている限りは、
そこにトラブルはなかった。
動物園にいる猫属は悲惨な状況にある。もともと人との接触を避ける
性質なのに、人前にさらされ、暮らしの張りがなく、退屈で、まさに
檻の中。
サーカスで芸をしている方がずっとやりがいのある人生 (いや、猫生) を
送れる。
人間管理下にある (希少) 動物の人工繁殖計画は、それが何であれ
(例えばイルカでも)、すぐに近親交配の壁にぶつかってしまう。
動物園の管理にはキャパシティの限界があるので、
新しい子が生まれた場合、年寄りは処分される。
「猫属の行動の全ての基本は狩りである」
「猫は子供に似ているから人に好かれる」という意見はその通りと思う。
「呼ぶと、犬は寄ってくるが、猫は返事をする」という記述も感心する。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp