◆ 生命の未来図 / 柳澤 桂子 ◆
Book Image 書名:生命(いのち)の未来図
著者:柳澤 桂子
編集:日本放送協会
発行:日本放送出版協会
定価:560 円(税別)
2002年2月1日
ISBN4-14-189061-8 C9445 \560E
ヒト・ゲノムの解読が我々の「いのち」を見つめる眼差しを一変させた。
生殖医療・クローン技術・代理母・特許による遺伝子情報の占有……
現代生命科学の進歩を振り返り、あるべき「いのち」の論理を考える。 (表紙より)

Contents
  1. 生命科学と私
  2. ゲノム・生命の設計図
  3. ヒト・ゲノム解読の衝撃
  4. 誕生の不思議
  5. 生殖医療のもたらしたもの
  6. 私達はなぜ死ぬのか
  7. 死は誰のものか 〜安楽死と倫理
  8. あすの生命(いのち)

NHK 教育テレビ「人間講座」で、2002年2〜3月期に放映された番組の テキストとして出版されたものです。
講師の柳澤桂子は、生命科学系のサイエンスライター。 彼女自身、原因不明の病気に 20 年ほども悩まされ、 寝たきりになり死の手前から回復したという経歴を持つ。

一般向けにわかり易く、順番に説明が重ねられて行きます。
第1回は生命の誕生と生物の進化についての説明、 第2回は DNA・染色体の構造と機能について、発見の歴史をからめた説明。 第3回はヒトゲノムが解読されたことと、それに伴って現れてきた 遺伝子特許や遺伝子診断の問題。

第4回は人間が誕生する仕組みとその複雑さ巧妙さを説明。 第5回は、生殖医療として行われるようになってきた、人工受精、体外受精、 代理母、クローン人間の説明とその問題について。 世界初のクローン羊「ドリー」が実は実験のミスで産まれたもので、 2度とできないというのは意外と知られていない重要な事実。 ドリーがミスだったとすると、他の動物も、人間のクローンへのチャレンジも ほとんど不可能であるという予測がつきます。

第6・7回は、死の意味と、いかに死ぬべきかという話題です。 特に「安楽死」の問題において、著者ならではの強い主張が見られます。 点滴で栄養を注入し生きていることはできるが、痛みがひどく のたうちまわる状態が続き、手の打ちようがない、看病する家族が参ってくる。 そんな状況で彼女は生きるのを止めようと決心しかけたそうです。 そういう時でも、現在の医療では「死なせる」ことは選択できない、無力である。 「完全に自分が耐えられなくなった時には死ねるというのは、 希望の光になるのではないでしょうか。一番恐ろしいのは、 どんな状況になっても死ねないことではないでしょうか。」 と彼女は訴えます。 アメリカ・オレゴン州やオランダでは安楽死法が成立しましたが、 さらにそれによって、どういう場合ならいいのかという、判定の難しい事例が 起きています。

最終回の第9回では環境ホルモンの話題に触れ、科学技術・生命科学の進歩が 必ずしも人間の幸せに結びつかないということを言及し、 現代では科学があまりに早く進歩しているが、「できる」からといって 何でもして良い訳ではない、倫理に反することはしないという勇気が必要だ。 と述べています。

2002/11/04 T.Minewaki
2003/04/29 modified T.Minewaki

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