◆ ダーウィンの悪夢 ◆

Movie Image 監督:フーベルト・ザウパー Hubert Sauper
ドキュメンタリー 2004 作品
日本公開 2006/12
URL: http://www.darwin-movie.jp/

(* 内容についての記述があるので、映画を観てから読むことを勧めます。)
渋谷シネマライズで上映中。観てきたので、感想。

タイトルの「ダーウィン」ってところから自然科学的な内容を 想像したのですが、それはほんの一部で、主題は社会的・政策的・ 経済的な側面に焦点を当てたドキュメンタリーでした。

ナイルパーチという魚がアフリカのヴィクトリア湖に放され、 それが生態系を崩しつつ繁殖して一大漁業産業が起きた。 その事自体は(とりあえず当面は)悪いことではないと思う。 国外輸出も進む。
産業に関わる者はある程度の富を得るが、関われないものは何も得られず、 貧しい。徹底的に貧しい。そんな人々の表情をカメラは大写しで追う。 富が回らない、分配されない、還元されない、というところが 一番の問題じゃないかと思う。 それはなぜなんだ、という思いがぐるぐると頭で回り続ける。

貧しい者は生きるために何でもする。売春が女性の手近な方法だ。 漁師はワニに噛まれる危険を冒して湖に潜る。 魚加工場から排出される、頭と骨だけになった残りを人々は拾って食う。 それが集積される場所では、ぬかるみの上に放置され蛆が湧いているものを 干して、油で揚げて内地へと売る。そんな仕事でもあるだけましだと 彼女らは言う。この情景がこの映画で最もインパクトを受けた場面。

ヨーロッパから大型貨物機がやってきて魚を積んで飛んでいく。 グローバリゼーション経済の一部となっていることは確かだが、 グローバリゼーションが悪いのか? 輸出業が無かったら、 人々はそこで捕れた魚を皆で分け合い、平和に暮らしていただろうか?

衝撃的な映像がいくつも提示されるが、異なる視点・取材先であるために それらをまとめてどうだという結論の言える映画ではない。 見る人によってどういうストーリーを組み上げるかは違ってくるだろうと思う。

2007/02/12 T.Minewaki

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