五能線・艫作(不老不死温泉/露天風呂の旅)




露天風呂の旅/週刊誌

私の旅行経験の中で最大の失敗が、この青森県の黄金崎不老不死温泉への旅である。この温泉は、約10年以上も前、ある週刊誌に「日本海の波打ぎわで、沈む夕陽を眺めながら露天風呂に浸る男のロマン」というふうに紹介されていた。ちょっとあやしい日本語である。
しかし私は、このムチャクチャなコピーに引きつけられたのであった。そして私が、この不老不死温泉を訪れたのは、途中の青函航路では雪に見舞われた11月下旬の寒い日で、この寒さが悲劇の引き金であった。

「入りたいのならどうぞ。・ ・ えっ、着替えは湯船の近くで適当に。・ ・ でも、本当に入るのですか?」と言う旅館のおばさんの声を後にして旅館から100mぐらい離れた露天風呂へ。囲いもない場所で服を脱ぐと、気温5度・風速10mの風が異様に冷たい。そして湯船に入ってみると、ものすごいぬるま湯なのだった。それでも湯が冷たいという欠点さえガマンしてしまえば、露天風呂から眺める日本海と夕陽は想像どおりの絶景である。

ところが、夕陽を満喫したあとも風呂から出ることができない。ぬるま湯なので体が温まらず風呂から出ようとすると風速10mの寒風が濡れた体を直撃するのだ。とにかく体感温度ではマイナス10度ぐらいに感じられる寒さであった。
このときばかりは旅館までの100mが、ものすごく遠い距離に思えた。

どうやら、おばさんは、私の勢いに圧倒され入浴を断ることができなかったようである。しかし、夏場なら快適な露天風呂に違いない。