Heart Warming Ekiden Story YELLOW GANGS

はじめに


並べての長距離ランナーと写真愛好家達のオマージュとして・・・

これは、三十路を過ぎたオッサンの最後のあがきである。
社会に入ってから、自分ではがむしゃらにがんばってきたつもりなのだが、気がついてみると、もう、三十路を越えていたのが実感である。
とある代理店に勤め、昼夜問わず仕事をしてきた私であるが、ここに来て焦っているのである。今はもう退職されていないが、私のお世話になった元職場の先輩の言葉が頭の中をよぎる。

「三十路越えたら、時間が経つのが早いぞお!」

まさにそのとおりだった。もう、朝起きたと思ったら、会社で仕事をして、夜になって帰宅して寝る。そんな生活の繰り返しだった。それ以外、何があっただろうか?今まで自分はがんばってきたつもりになっていた。まてよ。本当にそうだろうか?

私は大切なものを忘れていないだろうか?ただ、闇雲にCRTモニターの前でしかめっ面をしてキーボードを叩いているに過ぎなかったか?廻りを顧みず、自分一人でやってきたような気がしていなかったか?本当は色んな人の支えあって自分が成り立っていたのに、何だか恩を仇で返しているような日々の生活・・・。

これではいかん!と思い、遅ればせながらの自己回帰を試みた。自分の原点をもう一度振り返ろう。もう一度、輝いていたであろう青春の日々を・・・!と言うわけで、青春と呼べるかどうかわからない私の体験を、切り刻んで、ほいほいと料理したのがこの「Yellow Gangs」なのである。

「Yellow Gangs」はアンタッチャブルのようなギャングが出てくるような物語ではない。もちろん、このような名称のプロ野球球団はいないし、Jリーグのチーム名でもない。「Yellow Gangs」とは京都にある一府立高校陸上部駅伝チームの俗名なのである。

駅伝とは長距離リレーの事。
元々は飛脚からきたと言われる。
江戸時代の参勤交代の制度がもたらした日本の街道。関所や宿場町、宿本陣などが整備され、日本の交通の原点となった。その街道文化の中で早急に伝えなければならない情報を素早く届ける「飛脚」と呼ばれるシステムが存在した。手紙・金銭・貨物を入れた柄の付いた木箱を宿駅ごとに常駐している韋駄天(いてん)たちによってリレーしていくのである。それが「駅伝」の原点だ。
「柄のついた木箱」がいつ「たすき」になったのかは定かではない。しかし、この情報伝達の手段だった「飛脚」が、心と心をつなぐ「駅伝」というスポーツに昇華したのである。

三十路を越え、出産後、体育教師に復帰した物集女桜子(もさくらこ)。かつてはトライアスロンの選手として世界ランキング14位に輝いたこともある「鉄の女」(アイアン・レディ)である。しかし、彼女の心の中ではぽっかり穴が空いていた。一度名誉を手に入れた彼女は、結婚、出産を期に、ごく普通の生活に戻りつつあった。しかし、今までの体験と過去の無念がそれを許すはずはなかった。
かつて女子駅伝に出場したかった彼女はその夢を別の形で実現しようと勤務している高校に駅伝チームを作る。出来合いのメンバーで構成された一府立高校の弱小チーム「イエローギャングス」が繰り広げる青春記、これがこの物語なのある。
登場人物は決してスーパーマンではない。ごく普通の高校生。学業とスポーツの両立に悩み、友情、恋愛、家庭事情といったありがちな問題を抱えながらも大会出場を目標にトレーニングを重ねる。一人一人の思いがたすきに托され、心と心がつながれていく物語なのである。
対抗するは各都道府県代表の名門校。素朴な「臆病な強盗達」には勝機はあるのか?様々な思いを托しながら、七人のランナー達は師走の都大路を駆け抜けるのであった・・・。

と、いうのがこの「Yellow Gangs」のおおまかなコンセプトおよび概要である。

こんなちょっと青臭い「青春」のヒトコマであるが、どうか「さえない三十路男の戯言」と笑い飛ばしていだだければ幸いである。

執筆は、かつて高校駅伝京都大会を2回経験した私、コサック藤澤。挿絵は主婦業と仕事でお忙しいにも関わらず、私のお願いを快くご承諾いただいた愛媛のスーパーデザイナー絵舞喜さんにお願いして、コラボレーション形式でお送りします。

何分、付け焼き刃の素人芸ですが、末長くご愛読のほどを・・・。

※この物語は著者の体験を一部取り入れたフィクションであり、
実在の人物、団体等とは無関係です。

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