「さくらのいる日々」

外犬から内犬へ出世

さくらは外犬として飼われる予定であった。そのために立派な犬小屋も用意し、つないでおくのはかわいそうと、きれいな芝生の犠牲も覚悟していたはずであった。

ところが、今、居間のソファはさくらに占領され、たまに家族がソファでくつろいでいると、「私のところよ、どいてくれない?」と言わんばかりに顔をソファに押し付け、しっぽを振って、横目で人の顔を見ながら意志表示をするほどの出世ぶり、しかしこれはもう彼女の子供のころから始まっていたのである。

最初は、夜だけ足を拭いてもらって家族との団欒に参加し、みんなが寝る時に必ず犬小屋に戻らなければならないルールをしぶしぶ承知していた彼女であったが、息子たちがだんだん成長し、親より遅くまで起きているようになると、「さくらのこと、お願いね」と頼んで寝、翌朝起きると、なんと居間のソファの上に「すいません、私、ここに寝ていました……」と目を精いっぱいに細くし、体もできる限り小さくして、かしこまるさくらを発見、その格好と表情に思わず笑ってしまい、怒ることもできなくなった日が続いたのである。

息子たちは、とてもかわいそうで夜外に出せないとのこと、さくらの「すいません…………」という表現に、私もつい「まあ、いいか……」という感じになってきてしまったのである。

時々、庭の草をむしっている私をさくらが上から眺めている。何で犬が私を見下ろしているんだ、とは言ってみるものの、もう外で遊ぶことさえも大儀そうな老犬になってしまっているのだ。

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