京都自治体問題研究所の月刊ニュース
『くらしと自治・京都』の内容紹介

HOME 研究所案内 研究会 『くらしと自治・京都』 出版物
まちづくり情報センター リンク集 資料 ご意見・ご感想 目次

1996−1998年 1999−2000年 2001−2002年 2003−2004年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
215−236 237−259 260−278 279−287 288−296 297−308 309−320 321−332 333−344 345−356

福田内閣と地方自治の行方

  若井 雅明(自治労連副中央執行委員長)

 福田内閣が発足して1か月を超えた。「韓信の股くぐり」とさえ揶揄される低姿勢で、逆転国会を乗り切ろうとしていたが、本来の会期末までに改正被災者生活再建支援法がやっと1本成立しただけだ。まさに機能不全、政治的空白としか言いようのない事態が進行している。そもそも参議院の与野党逆転の状況は、「構造改革」路線に対する国民の不信任であったことは論を待たない。
 福田内閣の低姿勢は、民意に対する畏怖の念から来ているものだろうか。9月25日に締結した自民党・公明党との政権合意は「構造改革路線を堅持し」と謳い、いささかも変更する意思のないこと、国民の批判が強いから、部分修正するだけと述べている。
 その一方で、失敗に終わったとはいえ民主党との大連立政権を画策し、民意を介さない政治的裏取引で政権維持を図ろうとしている。しかもこの「茶番劇」によって、政策的一致による事実上のパーシャル「連合」の危険性さえ浮上してきた。とりわけ改憲を視野に憲法調査会の店開き、自衛隊の海外派兵の恒久法化、社会保障制度を口実とした消費税増税など、自民党との対決姿勢から同じ土俵で同じ方向を志向する恐れが多分に出てきた。
 とすれば、地方自治をめぐっても従前の路線を引き継ぐこと、更にはこうした危険な政治状況を踏まえて見る必要がある。

 「構造改革」路線は、「官から民」「国から地方」「規制緩和」をキーワードに、新自由主義的「改革」を推進するため、地方も含め「小さな政府」をめざしていたが、その路線は必然的に継承される。同時に、地方からの叛乱に対する対処療法も合わせて処方されると見る必要がある。
 地方自治をめぐっての流れでいえば、市町村合併や道州制に象徴される広域化、民営化・民間委託化に象徴される行政の市場化・営利企業化、NPMに象徴される企業主義的運営化、IT化が進行し、さらに財政的に地方を締め上げる「三位一体の改革」であろう。
 とりわけ地方の不満は、国の借金の付回しを「三位一体の改革」と称して03年から06年にかけて、トータルで地方交付税など合わせて約5兆円もの財政を削減したことだ。それが自治体間の格差を拡大し、地方を疲弊させた。地方切り捨て批判の大合唱が参議院選挙の民意となって現れた。従って、当面の焦点は地方財政のあり方をめぐってのせめぎあいになることは必定だ。
 政府・与党は、「構造改革」の流れを継続しつつ、地方の不満を押えることに腐心しているが、内容や方向性が政府内部あるいは与党と一致しているわけではない。
 財務省は、地方の不満をもっぱら法人2税の偏在性になすりつけ、地域的再配分、すなわち地方間で配分調整せよと「水平的配分」を求めている。これに対して、東京都など都市部の自治体からの不満は強い。
 総務省は、国に法人2税を返し、その相当額として地方消費税2%を回せと「垂直的配分」を求めている。景気に左右される法人2税より、安定的な地方消費税がベターということらしい。

 自民党は、参議院選挙での地方の反乱を受け、「地域活性化特命委員会」「財政改革研究会」で地方財政制度の見直し議論に着手したが、地域活性化特命委員長の野田元自治大臣は、5千億円前後の地方税収を都市部から地方に移転させる方向で調整に入っている。いずれも、「三位一体の改革」で削減された削減額に見合うものではなく、小手先の弥縫策に過ぎない。
 一方、地方六団体とりわけ全国知事会は、第2期分権改革に向けて、地方分権推進特別委員会で「地方への財源と権限の一体的移譲」を求めて、政府宛の要請内容をまとめた。
 政府・与党の根本的問題は、「三位一体の改革」の名目で、国の借金の付回しを地方へ押し付け、そのことが地方を疲弊させ、地域から活力を奪ったことの反省がさらさらないところにある。
 総務省の「地方財政の現状」によっても、@大幅な財源不足と高い公債依存度、A多額の借入金残高、B個別地方団体の財政硬直化を指摘しており、地方財政の危機の要因は@90年代に対米公約に沿って政府主導で進めた莫大な金額の公共事業の地方債の償還、A国の借金を地方へ付回した「三位一体の改革」にあることは明白だ。
 一方で、総務省は、地方分権を唱えつつも、国の関与を「強化」する方向で腐心している。その典型が「財政健全化法」と言える。確かに地方団体の財政状況を第三セクターまで含めて、住民に公表することは、住民自治と民主主義にとって有意なことである。一方、法律の目的からすると別の意図、すなわち国の関与を強化する方向が見え隠れする。すなわち「財政の健全化に関する比率の公表の制度」を設け、「財政の早期健全化及び財政の再生」を「図るための計画を策定するための制度を定める」ことを謳っていることからも明らかだ。

 政府・与党がすべきことは、参議院選挙での民意に謙虚に耳を傾け、住民や地方団体の要請に直ちに応えることであろう。小手先の弥縫策で、誤魔化そうとしないことだ。
 参議院選挙で行使した一票が、政治を動かし、変えることを国民は感動を持って体験している。そう遠くない時期に衆議院選挙が行われる。政府・与党は、誤魔化しはもう通用しないことを肝に銘ずるべきだ


HOME 研究所案内 研究会 『くらしと自治・京都』 出版物
まちづくり情報センター リンク集 資料 ご意見・ご感想 目次