究極と至高(2)

(1)を書いてしばらく放っておいたら、読者の方に「続きが気になるのですが、次はまた3ヶ月後なんですか」と怒られました。

その点については本当に申し訳なく思っています。すみません。なにせ、シロートが金儲け関係なく書いているので、どうしてもプロが書く、あるいはお金儲けのために書くようなわけにはいきません。それに、この件に関しては、普段よりもかなり慎重に調べています。(1)にはあえて書かなかったのですが、ランドナーを発注したのは去年の3月、納車されたのは7月でして、それから約9ヶ月、じっくりと乗り比べた結果を書いています。世間はインスタント時代ですし、ブログの世間はますますインスタントなのはよくわかっているのですが、どうかご容赦を。

ではまず、BSMの良いところから。

世間的に、小径車の良いところとして「加速が良い」「空気抵抗が小さい」と言われます。BSMも、確かに加速、例えば信号グランプリで最初の50メートルぐらいまでの加速は、かなり良いと思います。空気抵抗の方はあまり感じませんが、これは、大径車と比べて違いはスポークまわりだけで、前方投影面積はあまり違わないからじゃないかと思います。むしろ、横風をくらったときの影響が、大径車より若干少ないような気がします…が、それはスポークに当たる風の音が、BSMの方が小さいせい(つまり、音にだまされている)かもしれません。

BSM特有の良いところとしては、私は「操縦性がシャープなこと」を挙げたいと思います。ブリヂストンが言うには、BSMには安定性を確保するための工夫が色々盛り込まれているということですが、結果としてハンドリングはかなりクイックです。例えばBD-1と比較してもそれほど違いはないように感じますし、モールトンAPBは(20インチタイヤのせいかもしれませんが)BSMよりずっとマイルド。ランドナーは「ま、曲がらない」みたいなハンドリングなので、比較になりません。

ブリヂストンは「安定性は高い方がよい」という文脈でBSMのハンドリングを自慢しているので、ここで私が「安定性が低い」ことを「良い」と言うのは、違和感があると思います。しかし、自動車でもそうなのですが、安定性の高い自転車(あるいは自動車)でゆっくり走るのは、あまり面白くない、というか、つまらないことだと思います。そして、不幸にしてBSMはそれほど「速い」自転車ではないので、あえてこれを「良い」方に分類している、というわけです。

…そうです。BSMは、いや、少なくとも私のBSMは、速くないんです。

ブリヂストンが言うには、「高圧タイヤと(それなりに)高級なハブ、それに路面に追従するサスペンションで、ロードレーサーなみの性能を確保」みたいなことになってますが、それはハッキリ言うと「無理」です。確かにタイヤは高圧ですが、アスファルト路面というものは表面が意外にデコボコしているので、小径タイヤはやっぱりそれにパワーを食われます(逆に、路面のペイントの上ではあまりパワーを食われません)。(私のは初期型なので)ハブはアルテグラですが、小径タイヤは同じ速度だと余計に回転しなければいけませんし、その分回転抵抗が大きくなります。BSMのサスペンションは良く路面をとらえますが、ペダリングの時にやっぱり多少ストロークしますし、その時にペダリングのパワーを食ってしまいます。

ランドナーのタイヤは、ミシュランの、650Aのツーリング用です。空気は6キロまで入れて良いことになっていますが、それだとポンポン跳ねて走りづらいので、普段は4キロ以下で使っています。ハブはディオーレ、サスは無しで、要するに普及品で作った、「普通のサイクリング車」です。これで平均時速22-23キロぐらいで走るのは何ともないのですが、BSMで同じことをするのは結構大変、同じくらいの労力で走ろうとすると、速度の方が平均で20キロを割ってしまいます。少し感覚的な言い方になりますが、BSMは走りに伸びがなく、滑走しているとすぐにスピードが落ちてしまう。そういう感じです。

もちろん、ウチのBSMだけの問題かもしれませんし、現行型はカプレオなので、多少状況が違っているかもしれません。だから、これはあくまでもウチの個体についての意見なのですが「確かに小径車の究極ではあるかもしれない。しかし、大径車と互角に走れるかと言えば、そうは思えない」という結論になります。

モールトンの美点としてもう一つ「車に積める」というのがありますが、これはクイックリリースが発明された時点で、だいぶアドバンテージを失ってしまいました。

もうそろそろモールトンファンに殺されそうな気がしてきたので、この辺で少し方向転換をしたいと思うのですが、私はBSMが好きですし、BSMがフィットする状況というものがあると思っています。つまり、時速15-17キロくらいで街中をぶらぶらと走る。その程度なら走行抵抗は大したことがないし、クイックな操縦性もライダーに「操る喜び」を感じさせてくれるでしょう。そのくらいの速度だったら、普段気が付かない町の「顔」を再発見したり、めずらしいお店を見つけたり、家の庭先の花を眺めたりすることができるでしょう。BSMには、そういう楽しみが似合うと思うのです。そういう楽しみのための乗り物としてだったら、BSMは間違いなく究極だし、ロードレーサーにもランドナーにも勝っていると、私は思います。

ただし。
グレーチングと歩道の段差、それにガラス瓶のかけらには十分ご注意下さい。

サーキットサイクルマラソン ゴールイン
サイクルモード エコクラシック
4時間サーキットサイクルマラソン 男性ソロの部
12周完走

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