サドルをめぐる遍歴

ブリヂストン・モールトン BSM179 に標準で付いてくるサドルは、メーカー曰く「オリジナルCrMoレール」だそうである。しかしタイヤならともかく、ブリヂストンがサドルを自社生産している訳がない。当然 OEM なのだろうが、 OEM = Original Equipment Manufacturing であるから、間違いなくオリジナルではある。

オリジナルであるとかないとか。そういうことはどうでも良くて、問題になるのは性能である。サドルの性能の評価軸はいろいろあるが、筆者の場合「パッド入りのパンツをはかない状態で 40 キロ走っても、股や足が痛くならない」ということである。パッド入りのパンツ(レーシングパンツ、またはインナーパンツ)は確かに効くけれど、通勤に履くわけには行かない。まして、牛丼屋に昼飯を食べに行く時については、言うまでもない。

そこで BSM のオリジナルサドルである。このサドルの良いところは、細身で足の動きに干渉しないことと、クッションがたっぷり入っていることである。悪いところは上面がエビ反りになっていることであって、もし全体が水平になるようにセッティングすると座面の一番幅広な部分は前下がりになり、体の重さが会陰部にかかることになる。全体を前下がりにすると会陰部へのあたり方は少し緩和されるが、サドルの幅広の部分はさらに前下がりになるから、会陰部にかかる体重は増加する。一番幅広の部分を水平にすると、会陰部にかかる体重は減るがあたりは強くなる。結局のところ、どうやってもあたるものはあたるのである。

BSM オリジナル 上面 BSM オリジナル 側面
BSM オリジナル。エビ反り。

そこで対策であるが、わかりやすいのはサドルを替えることだろう。アメリカの通販業者の REI のサイトを見ると、「サドルを買うのもいいけれど、その前にサドルの高さとかセッティング、あるいは自転車の乗り方そのものを見直した方が良いんでない?」というような、実にアメリカ人的な Tip が掲載されている。が、残念なことに、これに気が付いたのは新しいサドルをずいぶん買い込んでしまった後だった(笑)。もちろんマニアとしては、身銭を切っていろいろ試しておかないといけないのであるから、後悔しているわけではない。

さて。

最初に試したのはスペシャライズドの BG2 スポーツで、つくば市内の自転車屋の F で勧められた物である。このサドルは、穴が開いている上に溝が掘ってある。また、かなり幅広デザインになっているので、体重は会陰ではなく、骨盤の、下にとがっている部分で受けることになる。従って、確かに会陰は痛くない。会陰は痛くないが、骨盤の、シートにあたる部分が痛い(笑)。ものすごい違和感があったので、ほとんど一瞬でお蔵入りしてしまった。一応試乗の上で買っているので、F を攻めることは出来ない。もっとも、試乗車はマウンテンバイクだったから、あまり試乗の意味がなかったのかもしれない。

SPECIALLIZED BG2 SPORT 上面 SPECIALLIZED BG2 SPORT 側面
SPECIALIZED BG2 SPORT。骨盤が痛い。

次に試したのがフィジークのロンディネである。これは守谷の O で勧められた。このサドルは上面に浅く溝が掘ってある他は、特に会陰部の痛みに対策したようには見えない。パッドは多めに入っているようである。重要な特徴はサドルの幅広の部分の強度を意図的に落として、サドル自体が良くしなるようになっていることらしい。買った直後に試したときは足の動きへの干渉が強く、また、柔らかすぎて?血行を阻害しているような感じがあったので、少し使ってからお蔵入り、というか、別の自転車で使用していた。もっともその時はサドルの高さを高くしすぎて(初心者に良くある間違いらしい)いたので、そのせいかもしれない。最近になってもっと低いサドル位置で試したところ、非常に良い感じだった。少なくとも、20キロくらいの走行であれば、これが良いと思う。

Fi'zi:k RONDINE 上面 Fi'zi:k RONDINE 側面
Fi'zi:k RONDINE。お気に入り。

その次がサイクルベースあさひの VL1043 で、これは VELO の OEM らしい。このサドルも穴あき+溝付きだが、細身なところが BG2 スポーツとは異なる(というか、BG2 スポーツの方がめずらしい形だと思う)。座った感じ、あたりは悪くないのだけれども、表面が滑って何となく使いにくい。ということで、これもあっけなくお蔵入り。

VL1043 上面 VL1043 側面
CBA VL1043。よく滑る。

最後、というか、今のところの最後が、セライタリアの XO である。少なくとも、そう書いてあるサドルである。というのは、サドルには Selle ITALIA(R) とか XO とか MADE IN ITALY とか書いてあるのだが、商品タグ(台紙)は輸入元の汎用のものが使われていて、一言で言えば「とっても怪しい」からである。もっとも、偽物を作って意味のある値段とも思えないから、たぶん本物なのであろう。座った感じは「か…堅い」。パッド付きパンツをはいてスポーツとして乗るならちょうど良い堅さかもしれないが、パッドなしではやめておいた方が良いと思う。というか、無理です (T_T)。お蔵入り決定。

Selle ITALIA XO 上面 Selle ITALIA XO 側面
Selle ITALIA XO。堅い。

ということで、結局元の BSM オリジナルサドルを若干前下がり(正確には、サドル前半部がほぼ水平で、後半部が前下がり)に設定することで落ち着いている。サドルの前下がり設定も「初心者がよくやる間違い」としている本が多いが、結局ソレしか許容できるポイントが無いのだから仕方ない。

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