自転車・購入編

高校生の頃だったか, 父親に自転車をねだったことがある. 徒歩通学だったので, 自転車が必要だったわけではない. ちょっと遠くへ遊びに行くために, 他人のものではない自転車がほしかったのである (父親の 21段変速だか, 24段変速だかのスポーツ車はあり, ちょいちょい拝借して遊びには行っていた).

その時, どんな自転車が良いか聞かれた私は, ちょっと考えて言った.

ギアは付いていてもいなくてもいいから, 車体が軽くて回転も軽いやつ

父親はにやりと笑って, 「そいつは高くつくなぁ」と言った. そしてそれきり, なぜかその話はどこかにいってしまった (笑).

その後, 私は自動車を乗り回すようになり, 自転車からはまったく縁遠い生活をしていた. しかし, 自動車趣味から足を洗いかけている今, 休日に自動車に乗らないためには, 自転車が必要なのである. 何しろウチのまわり, 見える範囲にはセブンイレブンが一軒きりしかないのである. 昼飯を食べに行くにも, ちょっとお茶するにも, もうちょっと選択肢があってもいいじゃないですか.

なぜか最後の方が説得口調になっているが (笑), そんなわけで自転車を買うことにした. そこで問題になるのが「何を買うか」である.

実はウチにはすでに BD-1 が一台あって, これは妻のものである. 野暮に註をつけると, BD-1 とはドイツ人が設計した, 台湾製の, ちょっと値段は高いがいい折りたたみ自転車である. 特に, 前の車輪を走行状態にするときの動きなんかは, 思わず「グイ〜〜ン, ガシャ〜〜ン」と擬音をつけたくなるほどだ (巨大ロボ世代だから). これをロゴに載せたとしても, 折りたたみ自転車だったらもう一台は載りそうである. そうすれば, ロゴに二台積んでいって, 行った先で夫婦で自転車を楽しめそうである. ちなみにビートに BD-1 を積むのは無理だ (試してみた).

「ロゴに二台」がかなり魅力的だったので, やっぱり折りたたみの自転車にすることにした. まず考えたのが「BD-1 をもう一台」である. 他の候補との比較の過程でつくづく思ったのだが, この自転車は合理的, かつ現代的な設計で, 走ってよし, たたんでよし, 飾ってよしと, 三拍子そろっている (これは個人的な評価であり, 別の意見はありうる). 値段も機能を考えれば, 十分お買い得だろう. つまり, BD-1 という自転車は, 「これを買っておけばまず間違いは無い」という自転車だと思う. 問題があるとすれば, 取扱店が限られること (妻は 30キロぐらい離れた守谷の店で買った) と前車輪をたたんだときに固定する機構がちょっとアヤシイこと, それにデフォルトで使われるパーツのグレードがちょっとだけ寂しい (が, 交換は可能) ことぐらいだろうか. あと一つ, ちょっとメカメカしたデザインも, 好みが別れるかも知れない.

表向きの理由は取扱店の問題で, そして本当の理由は「妻のと同じじゃ面白くない」と言う理由で, BD-1 は却下した. 次に考えたのが Bike Friday の Pocket Crusoe あたりである. Bike Friday はオレゴンの会社 (のブランド) で, 折りたたみのロードバイク, マウンテンバイク, リカンベント (仰向けに寝転がって乗る自転車) などを, オーダーメイドで作っている会社である. オーダーと言ってもパーツが選べるぐらいで, フレームは (プチサイズ以外は) モデルごとに決まっているようだから, セミオーダーぐらいだろうか. 私の大学の先輩が, ここのリカンベントを持っていたので, 名前にはなじみがあった.

Bike Friday の特徴は, (セミ) オーダーなこと, そして, 分解すれば (サムソナイトの) トランクに収納できることである. 他の折りたたみ自転車も分解すればトランクに入れられるかもしれないが, メーカーがそう主張し, かつオプションでトランクを用意しているところは, ここぐらいだと思う. 弱点は --- えーっと, 乗ってないので良くわかりません (汗). あえて言うと, サスペンションがついていないこと (特にハンドル側), 取扱店が BD-1 以上に限られていることだろうか. 英語が得意, かつ, アメリカ人が間違ったパーツをつけて送ってきたときに対応する気力と根性と時間があるなら, インターネットで直接オーダーできるそうだ. 私の場合, 英語は何とかなるかもしれないが, アメリカ人のミスは多分許せない (笑) から, 向いてないんじゃないかと思う.

そんなこんな, いろいろ考えた結果, 選んだのはこの自転車.

ブリヂストン/モールトン グラッシーグリーンブリヂストン/モールトン BSM179

これは, ブリヂストンサイクル (株) がイギリスの偏屈博士…じゃなかった, 自転車博士と共同開発した, 分割可能な自転車である. あえて「折りたたみ」と言わないのは, そう言うと偏屈博士が怒るからに他ならない (笑). 確かに, メインのフレームが差し込み式になっていて2つに分割できるだけだから, 正しい語法としては折りたたみではない. でも, 何も怒らなくたって….
ちなみに, モールトンというのが, その偏屈博士の苗字である. ブリヂストン/モールトンで, 略称は BSM というのだそうだ (型番もそうなっている).

この自転車は, そんなわけで分割しかできない (クイックリリースがついているから, 車輪を外すのは簡単ではあるし, もちろん「分解」は可能だ). しかし, 分割すればちゃんと自動車のトランクに収まるから, 私にはそれで十分役に立つようだ. 車体はほぼアルミでできていてまぁまぁ軽く, パーツはシマノの, 松・竹・梅で言うところの竹の上ぐらいがついてくるから, 回転の軽さも期待できそうである. 何よりこれは, 日本全国, あなたの街のブリヂストンのお店で注文すれば, ちゃんと買えるのである. いい話だと思いませんか?

BD-1 や Byke Friday の弱点をあげつらっているのだから, BSM の弱点も挙げておかないと不公平だろう. 先に挙げた, それほど小さく分割できるわけではない, と言うのが一つ. 他に, やっぱり分割部の強度に疑問が残るのと, 前後サスペンションに使われているゴムの経年変化が読めないこと, そして, 値段の割には見た目がしょぼいこと (笑) だろうか. ゴムの経年変化については, それでも偏屈博士の過去の作品 (製品) よりは, 影響が出にくい設計になっているように思う. そういえば, 最近このサイトにしばしば登場する 酔猫庵氏 のところには, そのビンテージ物モールトンがあるそうだ. ちょっとうらやましい気もするが, 私は根性なしなので, 誰にも直せない (かもしれない) 自転車を持つ趣味は無い.

見た目のしょぼさは, 人によっては利点かもしれない. なにしろ, にっぽん国の治安は今や「ロクなモンではない」レベルまで落ち込んでいる. ぱっと見, 高そうに見えない自転車のほうが, 盗まれる確率が少しは低いかもしれない. まぁ, あまり期待はできないし, そもそもシマノのパーツにはたいていグレードがわかる名前が書いてあるので, 見る人が見れば全部わかってしまうのである.

ともあれ,ウチに BSM がやってくることになった.

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