失われた英知を求めて (ファンヒータの研究)

「今日の必ずトクする一言」には Webmaster 氏渾身のファンヒーター研究があった. 現在 Web で読むことができないのは不幸なことだが, 同名の本の最終巻 (だけ) を買えば 2,000円で pdf 化されたすべての英知を得ることができるのだから, かえって幸せなのかもしれない.

しかし, Webmaster 氏の守備範囲はなぜかトヨトミにまでは及んでいないようである. 独自のメカを持つ特徴的なマシンで, 評論のネタとしてはうってつけと思うのだが, 福岡では売っていないのであろうか. いや, おそらくはファンヒータの一般的な議論になじまないのであえて避けておられるのであろうが, 英知を完全な輪とするためには, この部分は欠かせないと, 読者としては思う. そこで, いささか力不足ではあるが, 不詳私めがこの部分を埋めてみたい.


さて.

つちや家には現在ファンヒータがシャープ (90年) , 三菱 (大, 95年), 三菱 (小, 95年) の 3台あり, 今回のトヨトミで 4台目である. ほかのものとトヨトミとの最大の違いがバーナーで, 仕様的に言うとほかの 3台が「気化式」, トヨトミは「ポット式」である. この違いはつまり, こういうことらしい.

コールマン ピーク1とトランギア アルコールストーブコールマンとトランギア
トランギア構造トランギア構造 (半分推測). アルコールなので炎は青い (笑)

写真左はコールマンのピーク1ストーブ, 右はトランギアのアルコールストーブである. コールマンは燃料 (ホワイトガソリン) を一度バーナー部に通して気化させ, 気化したガスをバーナーで燃やす. バーナー上部を横切る真鋳の棒がガスを気化させる役割をする.
一方トランギアには特別な気化器はなく, 燃料 (アルコール) をそそいで火をつけるだけである. 火は最初器の中央部分 (の液面) だけで燃えているが, それによって本体上部が温められ, 熱が燃料に伝わって気化を促進する. 気化した燃料は本体上部の穴から噴出して燃焼し, 理科の実験やサイホン式のコーヒーメーカに使うアルコールランプの数倍の熱 (気持ち比 ^_^;) を発生するのである.

つまり, 「気化式」の場合は何らかの気化器があるのに対して, ポット式の場合は熱い器の中に燃料を入れて気化させるところが違うらしい. 個人的に道具はシンプルな方が好みなので, トヨトミのファンヒータには魅力を感じる.

註:トランギアは燃料がアルコールなので, 熱量はガソリンストーブに劣る. とろ火も効きにくい (ふたで調整) し, 若干怪しいにおい (アルデヒド?) もあるので, 万人に薦められるものではない. しかし, ガソリンストーブでお茶を沸かすとあっさりと沸きあがって休む暇もないが, これで沸かせばアウトドアライフの句読点となる. そういうヒマをお楽しみいただける方には, 自信を持って薦めたい.

トヨトミ プチキューブトヨトミ プチキューブ LC-K293

ということで, トヨトミの一番小さいモデルを買うことにした. 今まで6畳の自室で使っていた三菱 (小) はとろ火の時に盛大ににおいを発生し, 不快というよりは危険だったので, 「きれいさ No. 1」といううたい文句に惹かれての購入である. もっとも, この場合のきれいさというのは NOx の排出量なので, 必ずしもにおいとは関係ないのだけれども…

デザインはいまどきのファンヒータには珍しく, ルーバー部分が小さい. 大きく本体幅いっぱいまでとったところで, タンクの前の部分は飾りみたいなものだから, これはこれでよいのかもしれない. 購入品は在庫の都合で銀色だが, 見た感じ赤のほうが格好良いような気はする (笑) . いずれにしろレトロデザインでは, ある.

プチキューブ内部プチキューブ内部 (パネルを開けたところ)

パネルの組み方は単純なので, 開けるのも簡単である. ファンモータは1つで, 燃焼用シロッコファンと対流用軸流ファンが同軸になっているようである. 気になるのは対流ファンが燃焼筒の出口に面していることである. というのは, 別の機種 (F32) ではファンと燃焼筒の間に遮熱板?が入っているのだが, 潤滑グリースは大丈夫なのだろうか. 伝統あるメーカーなので, 7,8年くらいはもってほしいのだが…

ともあれ, パネルを閉めて火をつけてみる. 三菱にはクイック点火というボタンがあり, これを押しておくとバーナーが電気で予熱されるので速く点火できるという. 今回のトヨトミにはクイック点火はない代わりに消臭点火モードがあって, オン (デフォルト) にするとバーナーの予熱時間が長くなり, 点火に時間がかかる代わりに点火時のにおいが減るという. 試してみた (気温表示 13度) 結果では, 正直言ってにおいの面では大差ない (笑) . 点火時のにおいは, 三菱やシャープよりも多い.

いったん火がついてしまえばとろ火になってもにおいは少ないし, ファン音も小さいようだ. 「今日トク」では「(ポット式は) とろ火に難あり」とあったので少し気にしていたのだが, 特に問題は無いようである. もっとも, とろ火時は時々炎の途切れる音が聞こえるので, やはりそう簡単なことではないらしい.

火を消すために運転スイッチを切る. と, ファンが全開で回りだす. 三菱とシャープは運転スイッチが切られると一度ファンをとめて未燃焼ガスを筐体内に閉じ込めようとするが, トヨトミはそうではないらしい. おかげで消火時のにおいも多く, 消火時の消臭機能が動作していることを示す表示が, ちょっとむなしい (笑). このあたり, メーカーの思想の違いを感じるところではあるが, トヨトミの場合はもしかしたら石油ストーブ以来の「伝統」かもしれない.

ともあれ, とろ火時のにおいが減って個人的にはハッピーである. そしてこの文章でファンヒータ評論の失われた部分が少しでも埋まるのであれば, 筆者として幸いである. なにせ, 書いてみるまでファンヒータ評論がこんなに大変なものとは思わなかった. これならタイヤのインプレッションでも書いていたほうが, よほど簡単だと思う (笑).

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