加速度計

秋月通商加速度計キット

秋月電子通商は, 自動車マニアにはあまり縁のない場所かもしれませんが, 電子工作マニアにはおなじみの,秋葉原の名店であります.
ここで売っている商品の内容を,マニアでないヒトに説明するのはかなり大変なので, お店の内容については省略しますが,とにかく, ここの商品の中に「加速度計キット」と言うもというものがあります. 秋月の加速度計キットには二種類あって, 片方は液晶表示板の付いた自立型の測定器, もう一つがWindows PC に RS232C でつないで使うものです.
どちらのキットも加速度センサには ANALOG DEVICES 社の ADXL202 というチップを使用しています.というか,加速度センサの世界 ^_^; ではこのチップの一族がかなり広く使われているそうで, 例えばゲームボーイのコロコロカービィはこれで傾きを検出しているそうです.

「加速度が,リアルタイムで測定できます」と聞けば, クルママニアだったら「じゃぁこれで運転のログが取れますね」 と考えるのは自然の流れらしく, Web 検索をしてみるといくつか実施例が見られます. 鉄な方の場合は電車の運転のログを取るらしい.ただ, 律儀なマニアの方に「済みません加速度のログ取りたいんで, センサーとノートパソコン持ち込ませてください」と申し入れられて, 「お客さんソレはカンベンしてください」と断った鉄道会社もあるそうです. 客がノートパソコンで今日のプレゼンの原稿チェックをしているのを, 「済みません他のお客様の迷惑になりますからおやめ下さい」 と言う鉄道会社はあまりないと思うのですが, どういうものなのでしょうか...
律儀な鉄ちゃんはともかく,加速度の測定は一度やってみたかったので, 秋月の通販を利用してキットを手配しました.

秋月のキットには Windows 3.1 用と Windows 95(以降)用の,計測ソフトが付いてきます.最初はこれを使わず,手持ちの HP のポケコン (200LX) 用にドライバ/ロガーを書いて使おうと思っていました.これだと HDD のような可動部の全くない測定環境が作れます.
色々調べてみると,秋月のキットとはいうものの,ボードとしては Crossbow という会社の評価ボードとコンパチらしく,そもそも付いてくる Windows 用のソフトの操作画面にしっかりと Crossbow と書いてあります.
秋月キットの RS232C の通信手順自体は Web 上あまり書いてないのですが,Crossbow 社製評価ボードの手順はありました.これを QuickBasic (笑)でプログラムして... とやったのですが,なぜか Com ポートが開けず.Borland で無償公開している TurboPASCAL を使ってみたのですがこれもダメ. スケジュールの都合もあって自作プログラムをあきらめ,計測用に ThinkPAD の中古品を買いました.
ビートはシガーライターはオプションで私のには付いていなかったのですが, 配線はあるのでソケットを取り付け.インバータを買い,ThinkPAD を PPバンドで助手席に縛り付けて完成.回転ものはやっぱり怖いので,測定データは Flash Memory Card に保存,走行中は HDD を止めておきます.

測定値を読む

測定自体は簡単なんですが, クルママニアにとってはログファイルの値の解釈が問題になるようです (そういう意見を,知り合いのマニアに聞きました).

加速度センサー ADXL202 という石は,加速度の値を PWM 変調して X と Y それぞれ 1 ビットづつで出力します. PWM 変調のデューティ( 1 のところと 0 のところの比)は, 測定された加速度の値に正比例して変化します.0g の時はデューティ 50% です.
秋月のキットの場合はこの出力を PIC(マイコン)で拾って,RS232C で出力します.従って,PIC が余計なことをしていなければ ^_^; ログにはこの「加速度に正比例」の値が残るはずです.
ここでログ取ってみると,センサーが水平の時にはだいたい 0.5 位の値が出ています.これを 0g と考えて,それとセンサーを垂直にしたときの値 (だいたい 0.375 と 0.625)を +1g と -1g と考えれば,測定値のおおよその較正が出来ます.

このあたりのことはキットに付いてくるデータシートの「感度」とか 「ゼロgバイアスレベル」のあたりに書いてあることと, 本質的には同じことを言っています.また,チップの出来にはばらつきがあり, クルマへの装着の時の水平度にもばらつきがあるので, 実際には出てきたログデータから「ここは間違いなく 0g(停止中など)」という場所を探しだして 0g の時の出力値を求め, 別に測定した 1g の時の出力値と合わせて較正するのが良いと思います.

こうして測定値を整理すると,次の図のようになりました. これは筑波東コース(TC1000)を走ったときのデータで,このラップのタイムは 48秒543 でした.「遅いじゃん」といわれても,いかんせんノーマルエンジン, ノーマル吸排気系のビートですんで ^_^;;;

加速度の図(X-Y)

上の図で,(1) がホームストレート,(2) が 1-2 コーナー,(3) がヘアピン,(4) が左複合,(5) が最終コーナーです. 青い線が左右方向の加速度でプラス側が右ターン(加速度はクルマの左へ), マイナス側が左ターン(加速度は右へ)です. 筑波東コースは左ターンは一カ所しかないので, これの数を数えると何周したかとか何周目かとかがわかります.
赤紫の線は前後方向の加速度で, プラス側が加速,マイナス側が減速です. ビートがどのくらい加速しないかが良くわかります(泣).

加速度は 1g (重力)で正規化した値にしてあります. クルマのロール分もあるので真の値はちょっと小さいはずですが, 最大旋回加速度が 1g くらい,最大減速加速度が 0.8g あたりのようです.タイヤは GRID II の純正サイズ(前155/65R13,後165/60R14)ですが, だいぶ減っているので「効きゴム」になっているはずです ^o^.

摩擦円の考え方を意識して,トータル加速度をプロットしてみたのが下の図です. 黄色い線は横方向の加速度と縦方向の加速度をそれぞれ2乗して加え, 平方根を取ったものです.

加速度の図(摩擦円)

描いては見たものの,結局 1g あたりに納まってしまっていてあんまり面白くないです ^_^;

次の図は,同じ日の筑波東コースの走行ですが,最初の方の走行枠で,つまり上の2枚の図よりはタイムが遅かったときのものです.これで 49秒965.

遅いときのログ

上の方の図と比べると

  1. 1コーナー手前の減速が大きい
  2. 1コーナーと2コーナーを別々に曲がっている
  3. 最終コーナー手前の減速が大きい

ということがわかります.


今回はオチの代わりに生データを付けます.カラム A-Cが 49秒965 で周回したときのデータ,カラム D-F が 48秒543 の時のデータです.

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