Nelson's blood


 ホレイショ・ネルソン。英国の提督。血液型O型(うそ。今のところ不明)。
 血液型占いの本を読むとO型ではないかと思いたくなるほどタフなネルソン提督。右目は失明し、右手も切除されていたが、両方とも戦傷が元である。当時は、そのどちらか一方だけでも壊疸(えそ)や敗血病で命を落としかねなかった。それで足りずに不倫やらなにやら……(関係ないか)。それでも年貢の納め時はやってくるわけで、トラファルガル沖の海戦で狙撃され、戦勝の報告を受けながらも、死亡した。
 ネルソンの棺はアブキール湾の海戦でフランス艦隊の旗艦であったオリアン(L'Orient)号から倒れたマストで作ったものが準備されていた(因みに日本の葬祭業界では「棺」は使用前の空もの、「柩」は使用中のものを指すそうである)。これは自分の棺を見たものは長生きするという言い伝えにあやかって作られたものであった。ネルソンの柩は遺体の腐敗を防ぐためにラムで満たされ、英国に送られる。
 ワインやブランデーを熟成させるうちに樽から蒸発するアルコールは「天使の取り分」と呼ばれる。とはいえ、すべてが蒸発することはないので、天使の祝福のもと、芳醇な酒が生まれるのである。ところが、英国に着く前に、柩はすっかり干上がっていたという。神は恐れても怨霊は恐れない英国人の水兵たちが、この柩に穴をあけ、中のラムを飲んでしまったのである。
 こうして、ラムの別名がNelson's bloodと呼ばれるようになった。


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