フラック軍装について



 士官の軍服は春夏秋冬を問わず、炎熱の赤道無風帯から霧と流氷のバレンツ海まで、フラック軍装である。
 階級は肩章の有無等で示された。任命後3年以上の海佐艦長が両肩、3年未満の海佐艦長は右肩のみ、海尉艦長は左肩のみに肩章をつけた。肩章の無い者は海尉と准士官である。また、士官候補生の軍服だけはデザインが違っていた。海尉と士官候補生には軍帽(三角帽、または馬型帽)があり、准士官はこれがなかった。この時代は現代と違って、無帽であることのほうが異様な光景であったため、准士官は士官とは違う形の帽子を使っていた。
 士官は軍服を自費で調達していたため、大まかな決まりはあったものの、その布地や裁ち方はばらばらであった。そのうえ、「大まかな決まり」は度々小改正がなされ、規定に従うべき士官達も、好みの時代の規定に従っていたようである。また、その着こなしかたも様々であった。
 例えば、士官のフラックの前襟(ラペル)やカフスの折り返しは18世紀末までは白、それ以後は青。そして軍帽も18世紀末までは三角帽、それ以後は馬型帽となっている。また、士官候補生の服は白の襟当てをつけるようになったのが19世紀に入ってからのことで、それ以前はこれがなかったようである。また、士官のフラックの折り返し部分が青に改正されたことは士官たちには不満で、「青けりゃいいンだろ?」ということで、白ではなく、薄い水色にしてアクセントをつける者も多かったようである。ちなみに、ネルソン提督はこの規定をちゃんと守って、地の色と同じ青の折り返しの軍服を着ていた。有能なだけに、服で他と差をつける必要がなかったのであろう。


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