THE HORNBLOWER COMPANION
The Red Wine Fleet Version

第6巻「燃える戦列艦」



§.ホーンブロワーの衣装箱

 ホーンブロワーは相変わらず貧乏艦長である。
 戦列艦サザランド号に移ってさらに貧乏に拍車がかかったのは、水兵の未払い給料の一部を立て替えたせいである。その上、強制徴募隊を派遣する費用も負担している。同時に戦列艦艦長として恥ずかしくない身なりを整えるために、それ以外は極めてお寒い状況になってしまっている。肝心のホーンブロワーの軍服でさえ、完全ではない。靴のバックルは模造金で誤魔化すことになり、これをホーンブロワーがあまりにも意識したために、かえって他人の視線を集めてしまう結果に陥っている。さらに悪いことに、出航前にホイストでの負けを払ったために個人用食料さえ満足なものを購入できず、ロイズ愛国者基金から送られた剣さえ、質に入れることになる。
 

§.オリヴェンサ軽騎兵連隊、ヴィリェナ大佐(スペイン)

  「こんにちは、艦長」と彼は笑みを浮かべていった。「小官はホセ・ゴンザレス・デ・ヴィリェナ・イ・ダンヴィラ大佐、スペイン国王陛下のオリヴェンサ軽騎兵連隊です」(A Ship of the Line)
 軽騎兵(原文ではHussarsと書かれている、狭義の軽騎兵)のオリヴェンサ連隊は実在した。しかし1805年1月に乗馬猟兵(カサドーレス・ア・キャバロ、一応は広義の軽騎兵)に転換されている。そのために国王陛下の74門艦サザランド号がホーンブロワー勅任艦長の指揮下にリオン湾に現れた1810年には、「オリヴェンサ軽騎兵連隊」は厳密には存在していない。あったのは、「オリヴェンサ連隊」であり、兵科も乗馬猟兵であった。
 1803年の時点では軽騎兵隊の制服は全て共通である。上着は緋色の地、空色の襟と袖口。ペリースは地が空色で襟と袖口が緋色(上着と色違い)で、縁取りは黒い毛皮である。半ズボンは空色で、サッシュベルトは緋色と空色である。
 1805年以後のオリヴェンサ連隊は乗馬猟兵として、緑色の地に緋色の袖口と襟のコート、緋色のチョッキを着て、緑色のズボンをはいていた。そのため、ヴィリェナ大佐のキテレツな軍服はスペイン陸軍でもいささか目を見張るものであったかも知れない。


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