§.階級:水兵



●水兵(seaman)

 志願して水兵になる者もいたが、多くは強制徴募で海軍に入隊した。志願の場合も、懲役や絞首台、世間のいざこざなどを逃れて入隊する場合も多かったようである。強制徴募は各地方自治体から1定数が海軍に許可された。このため、知事の許可証がなければ徴募できなかった。また、商船から直接、水夫を集めることもあり、特にテムズ川の遡上には人手が少なくてすむため、その河口は絶好の「漁場」であった。水兵として海軍に入隊する場合、「錨索孔から乗り込む」と表現した。
 水兵は1800年1〜2月の時点で97.304名が英国海軍に登録されていた。水兵は各艦の副長(1st lieutenant)の権限で等級づけ、昇進、降格ができた。
 水兵の給料は1653年から全く変わらず、その処遇は非常に悪いものであった。これが原因となってスピッドヘッドで水兵の反乱が起き、1797年には俸給が引き上げられ始めた。とはいえ、その支給は遅れがちだったので、結局はあまり変わらなかったのかも知れない。水兵の俸給は太陰暦(つまり、1ヶ月は28日)で計算された。
 水兵用の服は各艦の主計長が既成服を準備していた。しかし、水兵の方は自分で身体にあったものを作っていた場合もあったようである。

上等水兵(Able Seaman)

 経験豊かで、測深、縮帆、操舵が要求される。1797年までの俸給は1ヶ月24シリング、1806年で33シリング6ペンス。
1等水兵(Ordinary Seaman)
 ある程度の経験を積み、索具の名と機能を知っていることが要求される。1797年までの俸給は1ヶ月19シリング、それ以後は25シリング6ペンス。
2等水兵(Landsman)
 いわゆる陸上者(おかもの)。18歳以上の、海員としての経験が全くない者が類別される。1797年までの俸給は1ヶ月24シリング、それ以後は22シリング6ペンス。
 2等水兵であっても、前職が特定の職業であった場合、直外員として当直と鞭の雨を避け、しかも1等水兵の俸給を得ることがあった。肉屋、パン屋、仕立屋、そして従僕は員数に空きがあれば、その幸運に浴することができたのである。その一方で、織工やその他の労働者、錫鉱夫などは水兵として一から始めなければならなかった。
2等少年水兵、パウダーモンキー(volunteer 2nd class, Powder Monkey)
 水兵の最下級。2等少年水兵は15〜17才で、15才未満は3等少年水兵である。ちなみに「1等少年水兵(volunteer 1st class)」は員数外の士官候補生を指す。労働者階級の子弟が主。10歳前後の少年で、戦闘時には砲弾や薬包を運搬し、平時にはボーイその他雑用に追い回される。家畜以下の扱いをうけたようである。
水兵待遇の職人
船匠助手(carpenter's mate)
縫帆手(sailmaker)
索具手(ropemaker)
武器係(armourer)
樽係(cooper)
主計長助手(steward)
司厨長助手(cook's mate)
書記(clerk)
喇叭手(trumpeter)
艦長従僕(captain's servant)
士官室従僕(wardroom servant)
従僕(servant)
女性(women)

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