現在では少将〜元帥にあたる階級。Frag-rankともいう。軍服は襟、ポケットのひさし、袖の折り返しの他、ボタンホールの周りにも金モールの縁取りがつけられ、肩章には星章がつけられた(少将が1つ、中将が2つ、大将が3つ。元帥は称号)。
- 元帥:Admiral of the Fleet
- 大将:Admiral
- 中将:Vice Admiral
- 少将:Rear Admiral
勅任艦長(Post-Captain)
勅任の階級で、本人が提督に昇進するか、正式な軍法会議で剥奪されない限り保たれる、終身の地位である。「正規艦長」「海佐艦長」「大佐艦長」「大佐」とも訳される。現代では大佐にあたる。任命後3年以上の勅任艦長が両肩、3年未満の勅任艦長は右肩のみに肩章をつけた。正装の場合、襟の縁、ポケットのひさし、袖の折り返し等に金の縁取りが付いた。
戦隊司令官(Commodore)
勅任艦長の役職。数隻の艦艇からなる戦隊(squadron)を指揮する。現在では准将(代将)にあたる。艦長1名随伴の戦隊指令官に任命され、大きな失敗もなく任務を全うできれば、提督の地位は約束されていたようである。
旗艦艦長(Frag Captain)
勅任艦長の役職。提督または戦隊司令官の乗艦の艦長である。「お膝もと」という意味で、特殊な地位には違いないが、将官級へのステップというわけでもない。 むしろ旗艦勤務の士官のほうが昇進の機会が多く、特殊な地位かもしれない。
士官候補生が任官して、海尉になる。勅任されない士官の総称でもある。読み方はレフテナントまたはリューテナント。「至誠堂グループ」はこれを「将校」と訳す。肩章はつけず、軍服には白い縁取りがなされていた。二角帽も金の縁取りは付かず、黒のままである。しかし、経済的に余裕のあるものは相当に飾り立てていたようである。白またはクリーム色の半ズボンは長ズボンに置き換えられる場合があった。この場合は正装ではないので、紺の場合もあったようである。
海尉艦長(Commander,
Master and Commander)
海尉の役職。提督が勲功のあった海尉を任命する。勅任艦長へのステップである。指揮艦は主に等外艦で、現代では中佐や少佐にあたる。海尉艦長も慣習で「キャプテン」と呼ばれるので非常に複雑なことになる。軍服は勅任艦長のものの左肩のみに肩章をつけた。しかし海尉の軍服に肩章をつけただけの者も多かったようである。「将校艦長」、「准海佐」などとも訳す。副長(First Lieutenant)
海尉の役職。その艦で最も先任の海尉が務める。1等海尉、ともいう。それ以外の海尉は先任順に2等海尉、3等海尉と続く。「至誠堂グループ」は副長を「1席将校」、それ以下を「2席将校」、「3席将校」としている。
准士官(warrant officer)
縁取りのない、青のフロックを着用した。正装は白の半ズボンだが、航海用としては青、白、またはクリーム色の長ズボンの着用が認められた。航海長、掌帆長、掌砲長、士官候補生など。
准士官の役職。海尉に次ぐ地位。航海士、先任操舵手、操舵手などの上官。位置の観測、水路の測量、操帆等の航海業務の責任者。船倉の積荷・バラストの点検も行い、薪、清水、酒類の管理も行った。また、先任兵曹長として士官室待遇を受けた。
掌帆長(Boatswain, Bosun)
航海長に次ぐ准士官の役職。掌帆兵曹、掌帆手の上官。水兵出身で下士官としての経歴1年以上をもつものから選抜・任命された。軍艦旗、ボート、帆、索具、錨の管理を行う。
掌砲長(Gunner)
掌帆長と同格の准士官の役職。掌砲兵曹、砲手長の上官。水兵出身で下士官としての経歴1年以上をもつもので砲術試験に合格したものが任命された。
士官となる人物の最初の一歩がこの候補生である。准士官辞令は受けるものの、准士官と下士官の中間の扱いである。下士官の多くは水兵からたたきげた人であるため、彼らと候補生の間には複雑な感情があった。任官試験を経て、海尉に任官する。読み書きができることが必須条件で、これは文盲率が高かった当時ならではの条件といえる。「至誠堂グループ」はこれを「見習将校」と訳す。軍服は候補生用のコートである。シングルの前あわせで、白い襟あてがつく。
軍医(Surgeon)
専門職。主に外科医。数人の助手を持つ。戦闘後に軍医が作る死傷者リストは「肉屋の勘定書き」、そして軍医自身は「骨挽き」と呼ばれた。医療業務の他、汚水処理、通風、ハンモックや衣服の洗濯など、衛生面の管理も担当していた。
主計長(Purser)
准士官待遇の専門職。書記としての経験1年以上を有するものが艦長の推薦を得て任命される。主計員の上官。
船匠(Carpenter)
准士官待遇の専門職。乗艦の修理、整備などを行う。数人の見習い・助手を持つ。
下士官(petty officer)
経験を積んだ水兵が昇進する。
航海長の部下。
先任操舵手(Quarter Master)
操舵の他、時鐘の管理も行った下士官。
掌帆兵曹(Boatswain's mate)
掌帆長を補佐した下士官。
掌砲兵曹(Gunner's mate)
掌砲長を補佐した下士官。砲4門を統括した。
砲手長(Gun captain)
砲の責任者。各砲1人。照準等にあたった。砲は各個照準であったため、砲手長の責任は大きかった。
艦長付き艇長(Coxswain)
ギグ(gig)の艇長。戦闘時に艦長の脇に控える者と、配置につく者がいる。下士官待遇の艦長の私的な部下である場合と艦内の水兵から選ばれる場合があった。
衛兵伍長(Master-at-arms)
防火責任者で艦上の警官。全水兵の憎まれ役。
司厨長(Cook)
グリニッジの年金受領者の中から選任される下士官待遇の専門職。乗組員の食事を担当したため、その不満を1身に浴びた。
志願して水兵になる者もいたが、多くは強制徴募で海軍に入隊した。志願の場合も、懲役や絞首台、世間のいざこざなどを逃れて入隊する場合も多かったようである。強制徴募は各地方自治体から1定数が海軍に許可された。このため、知事の許可証がなければ徴募できなかった。また、商船から直接、水夫を集めることもあり、特にテムズ川の遡上には人手が少なくてすむため、その河口は絶好の「漁場」であった。水兵として海軍に入隊する場合、「錨索孔から乗り込む」と表現した。水兵用の服は各艦の主計長が既成服を準備していた。しかし、水兵の方は自分で身体にあったものを作っていた場合もあったようである。
上等水兵(Able Seaman)
「A級水兵」と訳す人がいるが、おそらくこれであると思われる。ここまで昇進すると相当の経験者である。操舵手(Helmsman)と檣楼手(Topman)は熟練した水兵の役職。
1等水兵(Ordinary Seaman)
「B級水兵」と訳す人がいるが、おそらくこの1等水兵であると思われる。
縫帆兵(Sailmaker)
水兵で唯一、当直のない役職であるために「怠け者(Idoler)」と呼ばれた。しかし、その名に反して帆の整備や制作、水兵服の製造も行う多忙の職務であった。このために給料は一般の下士官より高かった。
2等水兵(Landsman)
いわゆる陸上者(おかもの)。強制徴募され、または刑の執行を逃れるために応募した未経験者はまず、この2等水兵になる。
パウダー・モンキー(Powder Monkey)
少年水兵。労働者階級の子弟が主。10歳前後の少年で、戦闘時には砲弾や薬包を運搬し、平時にはボーイその他雑用に追い回される。家畜以下の扱いをうけたようである。
牧師(Chaplain)
正規の牧師の資格を持つ者。水先案内協会で航海術教師の資格を得て、士官候補生の教育を担当するSchool-masterをかねる者も多かった。隣人愛を説くべき牧師が何故、との向きもあろうが、英国国教会の宗教的指導者が英国国王であることをお忘れなく。