§.艦艇



戦列艦(ship of the line, man-o'-war)
 
 戦列艦はナポレオン戦争当時、最大の木造軍艦である。2層〜3層の砲列甲板に加えて艦首楼、艦尾甲板に50〜130門の大砲を据え、最大級の砲撃力と防御力を誇っていた。
 戦列艦の主任務は戦列、すなわち単縦陣を組んで敵戦列と交戦することである。そのほか、船団護衛や沿岸封鎖、兵員輸送なども行う。また、敵艦に封鎖された港内においても、ただ存在し、戦力を誇示することによって敵艦隊の戦力を分散させることができた。なお、兵員輸送を行う場合、武装の1部または全部を降ろしてこれに当たる場合があった。


フリゲート艦(frigate)

 フリゲート艦は1〜2層の砲列甲板を持った、戦列艦に比べて軽快な軍艦である。英国海軍の等級では5〜6等艦がこれに当たる。ナポレオン戦争当時では最小で22門、最大で44門のカノン砲を備え、最大級のものは4等艦に類別されることもあった。
 18世紀末から19世紀初頭のフリゲート艦は艦隊においては、艦隊周辺の哨戒や信号の転送に用いられた。独航任務においては偵察、連絡、船団護衛、通商破壊、そして植民地における旗艦任務などがあった。
 戦列艦は確かにフリゲート艦を火力で圧倒できるものの、速力と操作性で及ばず、フリゲート艦の脅威になることはなかった。このような場合、敵戦列艦を味方戦列艦に引き合わせることがフリゲート艦に科せられた任務である。
等外艦
 1〜6等に所属しない小型艦は等外艦に類別された。小型フリゲートとも言えるスループから臼砲艦まで、様々な種類のものがあった。


スループ艦(sloop, sloop of war)

 フリゲート艦より小型の軍艦。「砲艦」とも訳す。装帆はシップのほか、ブリッグなどがあり、それぞれシップ・スループ、ブリッグ・スループと呼ばれた。備砲は20門未満で、主に海尉艦長が指揮した。シップ型のスループ艦はフリゲートとほぼ同じ任務についていたようである。ブリッグは短い甲板には多すぎる大砲を載せていたために、トップヘビー気味である上、居住性も悪かった。


武装スクーナー(armed schooner)

 英国海軍では18世紀から2本マストのトプスル・スクーナーを海尉の指揮下で運用した。主に沿岸部や西インド諸島の島々を結ぶ連絡用に用いられていた。航洋船に位置づけられなかったために、ブリッグと違って食料と飲料水を3週間分も積まなかった。このため艦内容積が比較的広く、上陸の機会も多かったために、人気のある職場であった。一方、アメリカでは私掠船として活躍し、大陸海軍も重用していた。


臼砲艦(爆弾ケッチ、bomb vessel, bomb ketch)

 2本マストのケッチ装帆と臼砲を備えた砲艦で、臼砲は1〜2門を装備した。海尉が指揮した。2門装備の場合は縦列する場合と並列する場合があったようである。この当時、炸裂弾は陸軍では用いられていたが、これを用いた海軍艦艇はこの臼砲艦だけであった。主に沿岸砲撃に用いられた。


武装カッター(armed cutter, King's Cutter)

  1本マストの小型艦。英国海軍の港湾や沿岸の警備艇として、また税関の用船として、密貿易船や私掠船、フランス海軍の警備艇などと死闘を演じた。3ポンド砲、大きくても6ポンド砲を8門程度、装備していた。英国海軍の所属艦は海尉が指揮していたが、乗組員は地元の漁師などから集められ、一種独特の雰囲気を有していたようである。

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