§.階級

革命に伴い、経験豊富な海軍士官(貴族階級がほぼ独占)は激減した。1791年5月1日の時点で170名いた戦列艦艦長が42名まで減っていたのである。この空隙は退役士官、商船船長、水先案内人や海尉からの昇進で埋められ、それ以下の階級も同様に昇進が加速され、未熟な人材で埋められた。

大将(Amiral)
字義は「提督」。

中将(Vice-amiral d'escadre)
字義は「戦隊副提督」。

少将(Vice-amiral)
字義は「副提督」。

准将(Contre-amiral)
1791年に創設された階級で、字義は「艦隊の後衛を指揮する提督」。それ以前はChef d'escadre(字義は「戦隊司令官」)で、戦列艦艦長から選抜されて昇進した。

戦列艦艦長(capitaine de vaisseau)
陸軍では大佐にあたる階級。フリゲート艦艦長として18カ月以上の海上経験と何らかの作戦成功が必要とされた。

フリゲート艦艦長(capitaine de fregate)
陸軍では中佐にあたる階級。海尉として24カ月以上の経験が必要とされた。

コルベット艦艦長(capitaine de corvette)
陸軍では少佐にあたる階級。これを経由せずにフリゲート艦艦長に昇進することもできた。

海尉(Lieutenant)
陸軍では大尉にあたる。次級海尉として24カ月以上の経験が必要とされた。

次級海尉(Enseigne )
陸軍では中尉に当たる。士官候補生から昇進するか、商船船長として5年の経験を持ち、試験に合格することが必要とされた。

士官候補生(Aspirant)
1786年まではGardes de la MarineとGardes du Pavillonが次級海尉となる人材の育成にあたっていたが、これらGardesへの入隊は貴族の子弟に限られていた。

1786年に士官候補生が創設され、ヴァンヌとアレーに設立された海軍兵学校がその教育にあたった。これら兵学校は貴族の子弟以外にも門戸を開き、特に富裕層の子弟が入学した。

兵学校は1791年に一旦閉鎖され、1795年にブレスト、ツーロン、ロシュフォールで再開された。

下士官
下士官には運用科、砲術科、操舵科の各下士官の他、船匠、充填工、縫帆手などの専門職下士官があった。各科下士官は兵曹長(Premier maitre)、兵曹(Second maitre)、水兵長(Quartier-maitre)に分けられた。航海科のみ兵曹と水兵長の間に伍長(Contre-maitre)が置かれた。

運用科下士官(maitre de manoeble)
航海長(maitre d'equipage)は下士官の最先任であり、航海長、航海兵曹、航海士、掌帆長、甲板手、艇長などで構成される運用科下士官(maitre de manoeble)の最先任でもあった。これら運用科下士官は艢楼手として6カ月以上の経験または商船で2回の長期航海の経験が必要であった。

砲術科下士官(maitre de canonnage)
砲術科下士官は掌砲長以下、掌砲兵曹、掌砲兵長、先任衛兵長(capitaine d'armes)で構成される。掌砲長は砲術学校の卒業生である上で、軍艦での砲手として12カ月または水兵として24カ月の経験が必要であった。掌砲長は各砲の砲手班の編成とその訓練に責任を負っていた。砲術科下士官には海兵隊員があたることが多く、この場合は本来の俸給に加えて手当が支払われた。特に先任衛兵長は海兵隊軍曹があたることが通例となっていた。先任衛兵長はマスケット銃、拳銃など小火器類とカトラス、斬り込み斧、斬り込み槍などの管理に当たり、戦闘に際してはこれら小火器と刀槍を乗組員に配布する役を負った。

操舵科下士官(maitre de timonerie)
操舵科下士官は操舵長、操舵兵曹、操舵手で構成される。24カ月の航海経験と、そのうち6カ月以上の操舵経験が必要とされた。操舵に当たるほか、舵と羅針盤の整備、航海日誌の記入、信号旗と照明の整備に責任を負った。

水兵
フランス海軍の水兵は船を動かすために徴用された民間人である。1808年の徴兵制導入まで、軍人ではない。

水兵は1〜4等水兵、1、2等非熟練水兵、1、2等少年水兵で構成される。水兵は勤続年数、少年水兵は年齢と勤続年数によって分けられた。

革命前の水夫は漁業権、十分の一税の免除、子弟の無料での教育、年金生活者のための基金などの優遇があり、革命後はこれに勤続年限や負傷の有無などに応じた恩給が加わった。

戦時での勤続年数は平時の2倍に数えられた一方で、私掠船勤務12カ月は平時の18カ月分に換算された。

海員登録制度(classes)
18才以上で海上経験1年以上のフランス人はすべて海員登録(role des gens de mer)に記載されていた。登録を逃れた場合はその両親が処罰された。

海員委員会はカルト(quart)、その下部組織のシンジカト(syndicat)からなり、登録された海員を4階級に分けて管理した。1級は独身者、2級は子供のいない妻を亡くした者、3級は子供のいない既婚者、4級は子供のいる既婚者である。各シンジカトは海軍に必要とされた人数を1級の海員から引き抜き、1級が全員いなくなると次の級から引き抜き始めた。選抜された海員は8日以内に港湾当局に出頭した。海員をかくまった商船船長は最下級水夫として出港することになった。

古参水兵(loup de mer)
字義は「海の狼」。艢楼手の他、船匠、充填工、武器鍛治、縫帆手の助手として、これら専門職への昇進に備えている水兵。

艢楼手(gabier)
熟練して帆の調整や艢上作業に当たる水兵。

非熟練水兵(matelot d'eau douce)
字義は「真水の水兵」。

1等少年水兵(Mousses 1er class)
13才以上かつ海上経験18カ月以上の少年水兵。少年水兵には士官室待遇の教師が付き、教育にあたった。

成績優秀な者には本国近海での勤務が割り当てられ、そのなかでも特に優秀とされた者は士官候補生の最下級に編入された。

2等少年水兵(Mousses 2e class)
上記を満たさない少年水兵。

4号室・フランス海軍資料室赤色葡萄酒艦隊