§.艦艇

フランス海軍では英国海軍の艦艇の同級艦より多くの乗組員を乗せることができた(基本的に砲1門あたり乗組員10名以上とされた)。また、フランス海軍艦は英国海軍の艦艇の同級艦より大型であった。このため、航洋性で英国海軍の艦艇より優れていた。さらに、英国海軍より設計技術が洗練されていたため、高速性でも英国海軍の同級艦に勝っていた。加えて、搭載した大砲も、英国海軍の同級艦のものより大型のものであった。

戦列艦(vaissau)
フランス海軍の主力となる戦列艦は英国と同じく74門艦で、その特徴は英国のものよりやや大型で、タンブルホームとシーアが英国のものより強いことである。また、艦首の丸みも強かった。これらは横風により風下に流されることを防ぐ意味もあった。

また、訓練に対する姿勢の違いから、フランス海軍の軍艦は全体的に英国海軍のものより大砲の発射速度が遅かった(平均的に英:仏=3:2)。これを補うため、18世紀末のフランスでは英国の74門艦に対抗して80門艦や84門艦が考案され、就航している。

フランス海軍で84門艦より大型の戦列艦は砲100門以上を備えた三層艦となる。これは英国の1等艦にあたる戦列艦である。

ちなみに、英国海軍の2等艦(砲98門)は砲撃速度の速さを前提として、フランスやスペイン海軍の三層艦に対抗する英国オリジナルの艦種のため、もちろんフランス海軍には存在しない。

なお、この当時のフランスはまだメートル法を採用しておらず、重さの単位はポンドである。ただし、英国とフランスでは基準となる「1ポンド」の重さが違っていたため(英ポンド=0.4536 kg、仏ポンド=0.4895 kg)、実際に発射される砲弾の重量は英国の大砲より重くなった。


フリゲート艦(frigate)
英国海軍の5等艦にあたるフランス海軍の艦種で、28〜44門の長砲を備える3艢全装帆船である。船首尾楼を備え、その露天甲板にも榴弾砲を装備した。排水量は600〜1200トンに達している。

24ポンド砲を主砲とする大型フリゲート艦(38〜44門搭載)は18世紀末の大陸(アメリカ合衆国)海軍で初めて採用され、同盟関係にあったフランス海軍にも即座に導入された。艦体は従来の木造船の構造では限界を超えて細長い縦横比であったものの、これは従来の肋骨様に竜骨に直交する肋材に加え、45°で竜骨につながるトラス状の補強材を採用したことによって実現した。


砲艦(corvette)
英国海軍の6等艦およびスループにあたるフランス海軍の艦種で、最大32門、最小6門の長砲を備える3艢シップ装帆の軍艦。1815年の時点ではほとんどが排水量が500〜600トンで、18〜24門を搭載している。基本的に平甲板型であるが、24門以上の長砲を備えるものは船首楼と船尾楼があった。

約110〜130名が乗り組み、小型フリゲートとして使用され、単独行動での通商破壊の他、艦隊では偵察や命令中継に使われている。


ルグレ(lugre)
英語でいうラガー。沿岸や港湾の警備に用いられた。一般的な沿岸警備艇は12ポンド・カノン砲4門と32ポンド・カロネード砲1門を備え、水兵60名のほか、陸軍のから派遣された小銃兵(fusiliers)を乗せることがあった。


私掠船
私掠許可証(lettres de marque)を取得した船長が指揮する武装した民間船。漁船や艦載艇から砲艦、フリゲート艦に至る、様々な艦艇が私掠船として用いられた。

4号室・フランス海軍資料室赤色葡萄酒艦隊