英国陸軍工兵隊(Royal Engineer)

　英国陸軍工兵隊は教育の行き届いた士官のみで構成された。特に海外での従軍中には高給を取り、大規模な攻城戦や架橋、調査など、通常の士官では消化できない任務に当たった。
　高級士官の多くはは高齢であったため、下級士官が過酷な任務に当たった。半島戦争（イベリア半島における英国軍およびスペイン・ポルトガルのゲリラ軍とフランス軍の戦争）に参加した１０２人の工兵士官のうち２５人が戦死している。
　しかし、この半島戦争における活躍をのぞくと、ナポレオン戦争における貢献は皆無と言って良い。これは次掲の英国陸軍技工隊の訓練不足と士気の低さ、軍規の乱れにもよるとされる。
　英国陸軍工兵隊は海軍士官のそれに似た青い軍服を着用した。しかし、よくフランス陸軍と誤認されたために、１８１１年に同型の赤い地に青い襟と折り返しの軍服に変更されている。

英国陸軍技工隊(Royal Millitary Artificiers)

　城塞の建築や修理など、英国陸軍工兵隊の下で作業に当たった工兵隊である。１２個中隊が存在し、８個中隊が本国、２個中隊がジブラルタル、西インド諸島とノバ・スコチアにそれぞれ１個中隊が配置されていた。１個中隊は退役下士官出身の少尉(sub-lieutenant)と英国砲兵隊出身の曹長(staff sergeant)が率いた。
　歩兵式の青い軍服（砲兵のそれに酷似したもので、襟と袖口が黒）を着用した。

英国陸軍土木・地雷工兵隊(Royal Sappers and Miners)

　バダホース攻囲戦後、ウェリントン将軍は良質な工兵隊の提供を要求した。これに対応するために英国陸軍土木・地雷工兵隊が１８１２年４月に設立された。これにより、２８００名の兵員を英国陸軍工兵隊の士官が直接、指揮することになった。
　まず、チャタムで訓練された３００人が１８１３年にイベリア半島へ派遣されている。１８１５年には各師団管区に１個工兵「旅団」が配置されていた。１個工兵「旅団」は英国陸軍土木・地雷工兵隊１個中隊と、これが用いる分と歩兵５００名分の工具を輸送する馬車輸送隊から成っていた。
　赤い地に青い襟と袖口の歩兵型の軍服を着用した。

英国陸軍幕僚隊(Royal Staff Corps)

　英国陸軍幕僚隊は歩兵と同じ訓練と装備を受け、陣地の防衛や設営に当たった。さらに、英国陸軍幕僚隊の士官は英国陸軍工兵隊と同じ任務にも当たった。これは前述の通り、従来の工兵隊が陸軍総司令官より軍需品部長の影響下にあったためである。
　１７９８年の発足当初は司令部と４個中隊から成っていたが、１８０９年に大隊規模に拡大されている。赤地に黒い襟と袖口、白の縁取りの歩兵型の軍服を着用した。

騎兵憲兵隊(Staff Corps of Calvary)
 

　騎兵憲兵隊は１８１３年に憲兵隊の補足として設立され、軍務局におかれた。サー・ジョージ・スカベル(Sir George Scovell)の指揮下に４個中隊が編成され、宿営地などの警戒や落伍者の処置、軍による越権行為からの非占領地民の保護などに当たった。騎兵憲兵隊の将兵は騎兵隊からの人員で構成されたが、通常の俸給に加えて、手当が支給されていた。前襟付きの、軽竜騎兵のものと色違い（赤と青が逆になったデザイン）の軍服を着用した。

英国陸軍段列隊(Royal Waggon Train)
 

　英国陸軍段列隊は１７９９年にオランダでの輸送任務のために編成された。発足当初は５個中隊であったが、半島戦争中に２個中隊を加えるなど、１８１４年までに１４個中隊が編成された。１個中隊は軍曹３名、伍長３名、ラッパ手１名、技工３名、兵卒６２名から成った。
　士官は騎兵隊の下士官で構成されていたが、士気の低さなどから半島戦争でのあだ名は「ニューゲート・ブルーズ（ニューゲート監獄の青服連中：１８１１年までは青い軍服だったため）」であった。
　１８１１年以後は馭兵隊と色違いの赤い軍服を着用した。