§.騎兵


 英国陸軍の騎兵隊は重騎兵(竜騎兵Dragoon)と軽騎兵(軽竜騎兵Light Dragoon, 軽騎兵Hussar)に分けられる。もともとは単にHorse(騎兵、騎兵隊)と呼ばれる単一の兵科であったが、18世紀に重騎兵と軽騎兵に分化し、1788年にも大幅な再編成が行われている。1894年当時、近衛騎兵連隊(Life Guards)2個、ロイヤル・ホース・ガーズ(Royal Horse Guards)1個連隊、近衛竜騎兵連隊(Dragoon Guards)6個、竜騎兵連隊(Dragoons)7個、軽竜騎兵連隊(Light Dragoons)(および軽騎兵連隊(Hussars))33個が存在した。

近衛竜騎兵連隊(Dragoon Guards)

 1788年に旧来の騎兵隊のうち特に伝統あるものを再編したもの。厳密な意味では重騎兵(胸甲を備え、集団突撃を専門とする)と軽騎兵(索敵、偵察、散兵線の構成を専門とする)の中間に位置する「中騎兵」であるが、英国陸軍で純然とした「騎兵(Horse)」ととして用いられたのは、近衛騎兵旅団をのぞくと、これだけである。


竜騎兵連隊(Dragoons)

 これも分類では中騎兵であるが、英国陸軍では「乗馬歩兵」として用いられた。18世紀末までは1個連隊あたり6個中隊、それ以後は9個中隊が所属した。稀に10個中隊が所属する場合があった。竜騎兵大隊はアルファベット、中隊は数字の名がつけられるため、「A大隊第1中隊」のように呼ばれる。
連隊司令部:大佐(colonel)1、中佐(lieutenant colonel)1、少佐(major)1、副官職中尉(adjutant)1、主計官1、軍医1、軍医助手2、獣医1
各中隊:大尉(captain)1、中尉(lieutenant)1、少尉(cornet)1、軍曹(sergeant)3、伍長(corporal of horse)3、ラッパ手1、軍馬掛下士官1、兵卒47(private)


軽竜騎兵(Light Dragoons)

 軽騎兵として策敵、偵察、散兵線の構成を専門としていると考えられたが、実際にはその訓練があまり行き届いていなかった。1800年の時点では1個連隊あたり10個中隊が所属した。2個中隊が兵站部大隊を構成し、他の8個中隊が4個大隊を組織した。各大隊は番号、中隊がアルファベットで呼ばれたため、「第1大隊B中隊」のように呼ばれる。1813年にはさらに2個中隊(1個大隊)が増設された(中隊の詳細はおおむね竜騎兵と同じと思われる)。


軽騎兵(hussar)

 軽竜騎兵連隊の1部が改称したもののようである。軍服に違いがあるほか、特に相違点はないようである。また、軽竜騎兵連隊のうち、エリート部隊を特に軽騎兵(hussar)と呼んでいた場合もあるようである。


旅団(brigade)

 2個以上の騎兵連隊で構成する。


連隊(regiment)

 1個以上の大隊と司令部からなる。大佐が指揮する。


騎兵大隊(squadron)

 2個中隊からなる。


騎兵中隊(troop)

大尉が指揮する。


騎兵小隊(division)

 騎兵中隊の4分の1。「師団」もdivisionとなるが、騎兵の戦術単位は連隊と中隊である。


騎兵分隊(Sub-division)

 小隊の2分の1。


横列(rank)

 2人の兵士が横に並ぶこと。また、その2人組。2列縦隊、縦列(file) 2人の兵士が縦に並ぶことも指す。ただし、縦列を組んで行進する場合は横に並ぶようになる。


縦列(single file)

 先頭のrankの2人が別々に行進するもの。



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